貫く光の槍
「敵機、健在! 防がれました!」
「何ィ!?」
指揮官の目が見開かれた。
モニターに映るファランクス三機は、大型のシールドを構え───
「ま、まったく損傷していない……だと?」
白い装甲が陽光に輝き、まるで砂漠の幻のように不気味な存在感を放っていた。
指揮官は拳を握り、叫ぶ。
「ひ、ひるむな! 第一、第二小隊、攻撃開始!」
指揮官の命令に、随伴するコマンドスーツたちは一斉に動き出した。
タイタン五機が地響きを立てて前進し、側面からはジャガノートが素早い動きで回り込む。
だが、ファランクスは動じない。
互いに連携しながら荷電粒子砲を構えた。
キュォオオーン───ッ
高圧縮されたE粒子が充填され、その砲身に青白い輝きを宿す。
鹵獲したイノセント・オリジンから引き出した粒子供給技術が、牙を剥こうとしていた。
ドゥン───!
ファランクスの一機が荷電粒子砲を放つ。
青白い光の奔流がタイタン一機の装甲を直撃! 重厚な機体は一瞬にして溶け崩れた。
ズドォオン!
爆発が砂漠を揺らし、黒煙が立ち上る。
オペレーターが叫んだ。
「タイタン4、大破! 敵の火力、異常です!」
「何ッ!? い、一撃!?」
ファランクスは次々と荷電粒子砲を放ち、まるで舞うように戦場を支配する。
二機目のタイタンが砲撃を受け、リアクターが爆発。
残骸が砂漠へと散らばった。
指揮官は歯噛みし、通信に怒鳴る。
「くそ! 各機散開、包囲して敵の動きを封じろ! 機銃で援護するぞ!」
ジャガノートは滑るように走りながらガトリングガンを回転させ、弾幕をファランクスに浴びせかける。
ガガガガガ!
さらに別方向から、タイタンの重砲が一斉に放たれた。
だが、ファランクスの反応が早い!
ファランクスたちは円陣を組み、見事な連携で大楯を構える。
大楯が弾丸を弾き返し、側面からの攻撃も別の盾が無効化してしまう。
『クソ、攻撃が通らないぞ!』
『焦るな! 撃ち続けろ!』
『うわぁああ!?』
ドゴォオンッ!
三機目のタイタンが荷電粒子砲に貫かれ、大爆発。
戦場に火花と爆煙が広がる。
ジャガノートは敏捷な動きで攻撃を躱しつつ、反撃を試みるが───
『速い……ッ!?』
ファランクスの連携は隙がない。
攻撃が着弾するより、ファランクスが盾を構える方が早く、攻撃が届かない!
『バケモノか、コイツら!』
悪夢のような攻撃が、ザラタンのモニターに映しだされていた。
ブリッジでは、クルーたちが騒めき、指揮官は冷や汗を流す。
「たった三機に……精鋭部隊が押されているだと!?」
~~~
「……ふむ」
一方のエリシオン側、ストラウスのコックピット。
マティアスはコマンドロボが送信する映像を凝視していた。
ファランクスの圧倒的な戦闘力に、わずかに眉を寄せる。
『隊長、あの白いの、ヤバすぎっすよ!?』
『ノヴァの新型か……あの火力、イノセントじゃ太刀打ちできねぇぞ』
『でも、シグマとノヴァがぶつかってる今、迂回するチャンスじゃない? 隊長、どうします!?』
ケインは叫び、ガルドはうなり、ミラが震える声で尋ねてくる。
マティアスの視線は、モニターに映るザラタンとファランクスの戦いに固定されていた。
ノヴァの新型は圧倒的に強い。おそらくシグマの機体では歯が立たないだろう。
しかし、ここで判断を誤れば、次に荷電粒子砲を食らうのはこちら。さて、どうするべきか?
だが、その瞬間、マティアスの鋭い目が、敵の微妙な動きを捉えた。
「何……?」
ファランクスの一機が、一瞬だけこちらを向くような動作。
センサーの範囲ギリギリ、だが確かにこちらを認識した動き……!
『敵に気付かれた。ノヴァの部隊がこちらを捕捉している』
マティアスの声は冷たく、まるで氷の刃のようだ。
ミラが息を飲む。
『うそ、こんな距離で!?』
『隊長、逃げましょう、迂回するなら今しか!』
『……いや、逃走は不可能だ。おそらく、機体性能はイノセントを上回る。追いつかれる』
マティアスの指がコンソールを叩き、素早く作戦を再構築してく。
脳裏に、作戦参謀ギンの言葉がよぎる───。
『いいかい? ノヴァの新型機は、鹵獲したイノセント・オリジンの技術を基に強化されているハズだ。そしてそれは、遠からずオレたちの前に現れる。その時は、頼んだよ』
「やれやれ……頼まれたのだ、勝つしかあるまい」
プラズマリアクターの粒子供給を受け、荷電粒子砲を運用可能な機体、ファランクス。
その性能は、シグマのタイタンやジャガノートを軽々と凌駕していた。
マティアスは小さく息を吐き、通信に呼びかけた。
『作戦を変更する。敵部隊の動きを観察し、シグマとの戦闘で消耗させる。その後、優位な状態で交戦する。全機、現在の位置を維持。E粒子の重点をしておけ』
ガルドが操縦桿を握り直し、渋々応じる。
『了解……けど、隊長、ヤツらがシグマを片付けたら、俺たちが次だぞ。マジで勝てるのか?』
「勝つさ。必ず勝機はある」
マティアスの唇が、わずかに笑みの形に歪む。
ストラウスのバックパックから2体目のコマンドロボが射出され、ファランクスの姿を録画し始める。
マティアスの視線は、ファランクスの動きを一瞬たりとも逃さない。
「ファラン、クス……?」
コマンドロボから送られてくる映像を見つめ、機体の肩に書かれた名前をつぶやくマティアス。
~~~
さて、一方。
シグマ帝国の迎撃部隊───ザラタンのブリッジは混乱に包まれていた。
指揮官はモニターを睨み、額に汗が光る。
ファランクス三機の荷電粒子砲がタイタンを次々と撃破し、戦場は黒煙と爆炎に覆われている。オペレーターが叫ぶ。
「タイタン2撃破! 残りは二機とジャガノートのみ! ザラタンにも被害が!」
「ふざけるな! たかが三機にこのザラタンが! 撃ちまくれ、たかが三機だぞ!」
指揮官は拳を叩きつけ、怒鳴る。
眼下の戦場では、ジャガノートが機動性を活かし、ファランクスの荷電粒子砲を躱しながら走っていた。
砂塵を蹴り上げ、ガトリングガンを乱射しながら蛇行し、一気に間合いを詰める。
ジャガノートのパイロットは叫んだ。
「至近距離ならシールドは間に合わん! 食らえ!」
ソニックブレードを振り上げるジャガノート。
だが、その瞬間、ファランクスの一機が腰の片手剣を抜いていた。
白い装甲が陽光に輝き、流れるような動きで剣を振るった。
───シュン!
「ぐう……ッ!?」
青白い粒子刃が空気を切り裂き、ジャガノートの右腕が一瞬で切り落とされた。
火花が散り、巨体が揺らぐ。。
「な、なんだ、この速さ!?」
驚愕するパイロット。
しかしファランクスは止まらず、二の太刀を放つ。
次の瞬間、ジャガノートの胴体は両断され、一秒の間を開けて爆散した。
ドゴォオン!
爆炎が砂漠を揺らし、残骸が地面へと散らばる。
ブリッジのオペレーターが絶叫する。
「ジャガノート、撃破! 敵の戦闘能力、異常です!」
その攻防の間にも、残るタイタン二機も荷電粒子砲の前に、次々と爆散。
キュオオーン……ドゥン!
青白い光がタイタンのリアクターを撃ち抜き、戦場に黒煙が広がる。
ザラタンは機銃で応戦しているが、鉄壁のシールドはビクともしない……!
「反撃しろ! レールガンを───」
指揮官の命令が響くが、ファランクスは容赦ない。
三機が連携し、荷電粒子砲をザラタンに集中させる。
キュオオーン……ドゥン!
一発がザラタンの装甲に直撃し、装甲が軋む。
巨体がぐらりと揺れ、ブリッジに衝撃が走った。
オペレーターが叫ぶ。
「右ブロックに被害! リアクターの出力低下!」
「くそっ、このままでは……!」
ファランクスは止まらず、次々と荷電粒子砲を放つ。
ドゥン! ドゥン!
二発目、三発目がザラタンの頭部と側面を直撃。
レールガンが破壊され、機銃が火花を散らしながら沈黙する。
ブリッジのモニターに亀裂が走り、指揮官は蒼白になりながら叫んだ。
「全機、撤退! 撤――」
その言葉を最後まで発する前に、青い光の奔流がザラタンのリアクターを貫く。
───ズドォオン!
凄まじい爆発が砂漠を揺らし、機動要塞の巨体は炎と黒煙に包まれた。




