決着、巨大兵器ティエジア
「すっげ……一撃で仕留めやがった!」
烈火は荷電粒子兵器の力に息を呑む。
だが、休息は許されない。
直後、別のシェンチアンが闇から飛び出し、アサルトライフルを乱射!
烈火は本能で危険を察知し、E粒子ライフルを抜いて応戦。
青い光と重金属の矢が交差する。
撃ち勝ったのは、烈火のイノセント!
光の矢が一撃でシェンチアンの胴体を融解させ、風穴が開いた。
オレンジの炎を巻き上げながら爆散、夜の森を炎色に染める。
だが、別の方向から、アサルトライフルの弾幕が襲う!
最後のシェンチアンが兎歌のイノセントを狙ってきたのだ。
『わぁあ!?』
兎歌は悲鳴を上げつつも、紙一重で回避。
さらに、咄嗟にE粒子ライフルを放つ!
バシュウ───ッ!
青い光がシェンチアンの胸を貫き、爆散!
だが、死に際の集中砲火が兎歌機の左腕を吹き飛ばした!
辛うじて胴体は避けたが、肩口から火花と黒煙が舞う。
『兎歌! 無事か!?』
『う、うん! 左手がやられただけ! 大丈夫!』
戦場に再び静寂が訪れた。
だが、マティアスは闇の奥を警戒し、E粒子ライフルを構えたまま動かない。
『まだだ……敵が潜んでいる』
3機はライフルを構えたまま、円陣を組んだ。
月光に揺れる木々が不気味にざわめいていた。
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同時刻、交戦区域から北へ1キロ地点、密林地帯にて。
東武連邦の輸送艦『ヘイリン』の指揮室では、モニターの赤い警告灯が無情に点滅していた。
オペレーターが報告する声に、焦燥を滲む。
「アルファ5、6の反応消失! 全滅です!」
「何……?」
若い指揮官は額に手を当て、唇を噛んだ。
精鋭の特殊部隊が、こんな短時間で全滅するとは。
だが、指揮官は冷静さを取り戻し、通信パネルに目を向ける。
「問題ない。最後の一手が残っている。奴に任せる」
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視点は交戦区域へと戻る。
ジャングルの闇の中、烈火は警戒を解かず、ゆっくりと呼吸を続けていた。
イノセントのプラズマリアクターが低く唸る。
本能が叫んでいる───まだ敵がいる、と。
その横、兎歌のイノセントは左腕を失い、烈火機と背中合わせに立っていた。
蒼い装甲が月光に映え、赤い火花が闇に溶ける。
『ねぇ……何か、変な感じがするよ……』
『ああ、俺もだ。気ぃ抜くな、兎歌』
烈火は闇の奥へと目を凝らし、気配を探る。
いつの間にか、レーダーはジャミングでノイズに埋もれていた。
闇の奥には何も映らず、不気味な静けさだけが揺らめいている。
と、マティアスの声が通信に響いた。
『───来るぞ!』
その瞬間、闇を切り裂き、ガトリングガンの轟音が炸裂した。
ダダダダダ!
重い弾幕がマティアス機を襲う。
『くっ!』
マティアス機はリパルサーリフトで機体を滑らせ、咄嗟に回避!
だが、右足に弾丸が命中。
機体がバランスを崩し、地面に膝をつく。
「何だ!?」
烈火が叫んだ直後、暗闇の奥から重厚な影が姿を現した。
ゴゴゴ……。
イノセントを凌駕する巨体。東武連邦の拠点防衛用コマンドスーツ、ティエジアだ。
月明かりの下、全身を包む防護フィールドが青白く輝く。
両腕に構えたガトリングガンと、背に背負う巨大な青龍刀が、死神の鎌のようにそびえていた。
その威圧感に、烈火は牙を剥いた。
『こいつ……シェンチアンじゃねえ!』
『な、何アレ……!』
烈火は吼える。
兎歌の声が震える。
マティアスは右足を負傷した機体を起こしつつ、冷静に応じた。
『落ち着きたまえ。ティエジアは重装甲だが、動きは鈍い。連携で倒すぞ』
『『了解!』』
ティエジアはガトリングガンを構えながら、ゆっくりと前進してくる。
直後、両腕のガトリングガンが火を噴いた。
ダダダダ!
「遅ぇ!」
烈火機はリパルサーリフトで木々の間を滑り、弾幕を回避。
プラズマリアクターが咆哮し、蒼い装甲が赤いオーラを帯びる。
その後ろ、兎歌機はシールドを構え、E粒子ライフルで反撃。
同時に、マティアス機も狙撃態勢に入る。
だが、ティエジアの防護フィールドが青い光を弾き返した!
『効いてないよ!』
『チッ……なんて野郎だ!』
ジャングルの闇の中、ティエジアの巨体がそびえ立ち、青白い防護フィールドが月光を歪める。
巨体を前に、烈火のイノセントは赤いオーラを纏い、低く構えた。
『フゥー……ッ』
烈火はコックピットで深く息を吐き、心を鎮める。
新型機、ティエジア。
圧倒的な巨体と防護フィールドを誇るが、無敵ではないはずだ。
ゴゴゴ……。
ティエジアのガトリングガンが烈火を捉えた。
次の瞬間、雨のような弾幕が迸る!
ダダダダダ!
弾丸がジャングルを切り裂き、木々が砕け散る。
烈火はリパルサーリフトを全開にし、機体を滑らせて回避。
だが、弾の数が多すぎる!
しかし、マティアスの言葉が脳裏をよぎる
───敵の動きを観察しろ。次の行動を予測しろ。
「なら、こうだ!」
烈火機は急反転!
敵の意表を突いた動きに、弾幕がそれた。
その隙を突き、イノセントは間合いを詰める!
「今だ!」
烈火のイノセントはE粒子ブレードを振り上げ───
───斬ッ
右手のガトリングガンを切り裂いた。
火花と金属片が闇に飛び散り、砲身が地面に落ちる。
ティエジアのコックピットで、パイロットは驚愕の声を漏らした。
「何!?」
だが、敵は即座に反応。
破壊されたガトリングガンを捨て、背中の青龍刀を抜いたのだ。
巨大な刃が月光を浴び、鈍く光る。
ズン!
ティエジアは一歩踏み出し、青龍刀を烈火のイノセントに振り下ろした。
対するイノセントはE粒子ブレードを構え、正面から激突。
青い光と鋼がぶつかり合い、火花がジャングルを照らす。
衝撃波で木々の葉が舞い、地面が震えた。
『烈火! 気をつけて!』
通信に響く兎歌の声。
彼女のイノセントは左腕を失いながらも、E粒子ライフルで牽制射撃を放つ。
青い光条は、またもティエジアの防護フィールドに弾かれる。
だが、わずかにフィールドが揺らいだのを、マティアスは見逃さなかった。
『烈火君、防護フィールドも無限ではない。連続攻撃で畳みかけろ!』
『了解! 兎歌、援護頼む!』
烈火の咆哮に、兎歌は震える声で応じる。
『う、うん! やれるよ、烈火!』
烈火のイノセントは鋭い動きで横へ回り込む。
直後、E粒子ブレードを突き出し、リアクターを狙う!
ティエジアは青龍刀を振り回し、烈火の攻撃を防ぐが、その動きは重い。
ティエジアの巨体は防御に優れるが、機動力が低いのだ。
『遅い、そこだ!』
烈火は叫び、E粒子ブレードを切り上げた!
左腕のガトリングガンも両断され、ティエジアは怯む。
「くッ……舐めるなァ!」
ブォン───ッ!
青龍刀が再び振り下ろされる。
同時に烈火のイノセントも、E粒子ライフルを放つ。
刃と弾丸が同時に命中した。
ティエジアの胴体に光が吸い込まれ、フィールドは消失。
烈火のイノセントはシールドを構えるが───
───バギャン!!
凄まじい衝撃にシールドが悲鳴を上げ、ついに砕け散った。
破片がジャングルの闇に飛び散り、ティエジアのセンサーを一瞬覆う。
その刹那、烈火は攻撃態勢に入っていた。。
『今だ!』
「何ィイ!?」
E粒子ブレードが閃き、青い光がティエジアのリアクターを貫いた!
ズドォン!
リアクターは大爆発を起こし、爆炎が夜空を赤く染めた。
ティエジアは轟音とともに砕け散り、ジャングルに燃え盛る残骸を撒き散らす。
戦場に静寂が戻る。
烈火のイノセントは赤いオーラを帯びたまま立ち尽くしていた。
プラズマリアクターの唸りが徐々に収まっていく。
『終わった……の?』
兎歌のイノセントは、左腕を失いながらもそばに立つ。
烈火は荒い呼吸で応えた。
「あぁ……これで、お仕舞いだ」