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出動! 戦闘空母エピメテウス

今回の話は、時系列的には10章のあたり。

烈火たちが本国で休息しているときの作戦の話。

 エリシオンの空は今日も晴れ渡り、柔らかな陽光が本国の港を照らしていた。

 プロメテウス隊は度重なる戦闘で消耗し、傷ついた機体と心を癒やすため、つかの間の帰還を果たしていた。

 だが、戦争は止まらない。

 プロメテウスが休息する間、エリシオンの尖兵として、プロメテウス級二番艦『エピメテウス』の黒い艦体が静かに出撃していた。


 エピメテウスの艦橋は冷たく静かで、モニターに映るのはシグマ帝国の奴隷農場だ。

 広大な農地が眼下に広がり、焦げた土と汗の匂いが漂う。

 そこを見張るのは、土色の重厚なコマンドスーツ『タイタン』。

 ガトリングガンがゴロゴロと回転し、対人用の機銃がキラリと陽光を跳ね返す監視員たちは、まるで動く鉄の塔のようだった。


 かつて帝国の侵略に抗った者たちは、懲罰として農奴に貶され、銃口の向く中、過酷な労働を課せられていた。

 怨嗟の声? もちろん聞こえない。

 そんな奴は殺された。


〜〜〜


 格納庫では、3機のイノセントが待機していた。

 未来的な蒼と白の装甲が照明に映え、リアクターが低く唸る。

 ノエル・コットン、シホ・フォンテーヌ、ユナ・ヴォルタの3名は、それぞれの機体の前に立ち、作戦会議に耳を傾けていた。

 後ろには突入部隊の兵士たちが並び、コンバットスーツとリニアライフルで身を固めている。


 ノエルはゆるふわな栗毛を揺らし、おっとりした声で説明を始めた。

 部隊で一番豊満な胸がパイロットスーツを押し上げ、柔らかな笑顔が格納庫に温もりを添える。


「えっと、今回の作戦ですけど……目的は3つあります。まず、シグマ帝国の兵器を破壊して、戦力を削ること。それから、拉致された人たちを救出すること、そして奴隷農場の記録を入手するの。これを世界に公開して、シグマの悪事を暴くんです」


 シホ・フォンテーヌは黒髪ぱっつんの前髪をメガネの奥で揺らし、控えめに頷いた。

 彼女の巨乳がパイロットスーツに隠れきれず、頬がほのかに赤らむ。


「了解しました。記録の入手は私に任せてください。データ解析なら得意ですから」


 シホの声は小さく、しかし確かな自信が込められていた。

 一方、ユナ・ヴォルタは赤毛のサイドポニーテールを振って、フフンと鼻を鳴らす。

 幼い顔立ちに似合わぬ発達した女の体型がパイロットスーツに強調される。

 ユナは腕を組んでノエルを見上げた。


「任せて! ユナが全部ふっ飛ばしてあげる!!」

「もう、ユナちゃんったら。ちゃんと作戦聞いてね? 油断したら危ないんだから」


 ノエルが苦笑しながらたしなめると、ユナは「ちぇっ」と舌を出した。

 格納庫に軽い笑い声が響き、緊張が少し溶ける。

 ノエルは最後に深く息を吸い、ゆるふわな笑顔を引き締めた。


「みんな、準備はいい? シグマのやつらに、私たちの力を見せてあげますよ〜!」

「「了解!」」

「「ウォオオオオ!!」」


 ノエルの言葉に、兵士たちは銃を掲げ、雄たけびで答える。


~~~


 エピメテウスの格納庫は金属の響きに満ちていた。

 カチカチと工具が跳ねる音、ガコンと装甲が調整される音が響き合い、メカニックたちが忙しく動き回る。


「3番機、粒子供給70%!」

「2番機のリアクター、臨界点に到達しました!」

「使い終わったケーブルはこっちだ。置いとくと引っかかるぞ」


 3機のイノセントの装甲に、太いケーブルが接続されていた。

 ケーブルの表面を青白い光が走り、微かな振動が広がる。

 そのケーブルの反対側は、格納庫の奥に静かに佇む4機目のイノセントへと繋がっていた。


 イノセント・オリジン。

 この機体はエピメテウス内で唯一、プラズマリアクターを搭載した特別な存在だ。

 試験機として作られた最初のイノセント。

 かつて烈火が乗り込み、戦った機体でもある。


 キュオォオオン───ッ

 蒼白い装甲が薄暗い照明に鈍く輝き、プラズマリアクターが低く唸る。


 プラズマリアクターは希少で、ノエル、シホ、ユナの機体には搭載されていない。

 そのため、この4機目が3機にE粒子を供給する心臓の役割を果たしていた。


「チャージ、順調! E粒子、80パーセントまで上昇!」


 メカニックの一人が叫び、コンソールがチカチカと明滅する。

 ノエルはゆるふわな栗毛を揺らし、コックピットへと滑りこむ。

 そして、確認するように頷いた。


「うん、順調みたいですね~。みんな、準備は大丈夫?」


 シホはメガネの奥で目を細め、モニターの数値をチェックする。

 控えめな声が格納庫に響いた。


『私の機体、異常なしです。E粒子の循環も安定してます』


 ユナは赤毛のサイドポニーテールを振って、生意気そうに笑う。


『ふん、こんなんで十分よ! さっさとぶっ潰してやろー!』


 イノセントの関節から淡い光が漏れ始めた。

 ズゥゥン……

 機体が微かに震え、E粒子が装甲の内部を巡る様子が透けて見える。

 蒼白い機体がまるで生き物のように息づき、戦場へ飛び立つ準備を整えていく。


『出撃したら予定通りタイタンを優先して撃破。その後は解放部隊と合流して、人員救助と情報収集に移行します』

『了解!』


『出撃ハッチ、開きます!』


 グォオオオン……!

 オペレーターの声と共に、エピメテウスのハッチが重低音を上げて開いた。

 外の空気が一気に流れ込み、農場の焦げた土の匂いが格納庫に漂う。

 遥か下方ではタイタンが無防備に立ち、対人機銃で農場を威圧していた。


 エピメテウスはステルスフィールドを搭載しており、また、高高度にいるため、施設の対空設備では発見されない。

 ……もっとも、ただの農場に大した対空設備などないのだが。


『みんな、行きますよ!』


 ノエルの声が響き、3機のイノセントが一斉に動き出した。

 勢いよく床を蹴り、蒼白い装甲が光を帯びながら降下を開始する。


 ビュオオオオ───ッ!

 風が機体を包み、E粒子の淡い光が尾を引く。

 ノエルの機体が先頭を切り、シホとユナがその後を追う。

 農場の上空で、土色のタイタンに立ち向かっていく3つの蒼い影。


『作戦通りですよ。タイタンを叩いて、拉致された人たちを助ける!』

『『了解!』』


 ノエルのおっとりした声に力がこもり、シホが静かに頷き、ユナがニヤリと笑う。

 その反応を確認し、ノエルは荷電粒子ランチャーを構えた。


『砲撃、開始!』


 ドゥ───ッ!

 ノエルのイノセントが荷電粒子ランチャーを放つと、蒼い閃光が農場を切り裂いた。

 ビリビリと空気が震え、タイタンの一機が直撃を受けて爆散!

 土色の装甲が炎と煙に飲み込まれ、破片がバチバチと地面に降り注ぐ。


『一機目、撃破!』


 ノエルが叫び、栗毛を揺らしながら次の標的を捉える。

 シグマの兵士たちの通信がザリザリと乱れ、驚愕の声が飛び交った。


『何!? どこからだ!?』

『新型機だと!? 迎撃しろ、早く!』

『上空から敵性反応だ! 襲撃を受けている!』


 その隙を突き、ユナのイノセントがジェットパックを噴射して突貫する。

 シュゥゥン!

 ユナ機は風を切り、赤毛の少女がニヤリと笑った。


「遅いんだよ! まとめてぶっ潰してやる!」


 ダララララッ!!

 ユナが粒子サブマシンガンを乱射し、青白い光の雨がタイタンを襲う。

 続けて実弾のサブマシンガンが火を噴き、2機目のタイタンが膝をついて土へと倒れ込んだ。

 農場のタイタンは対人仕様であり、装甲が薄く、武装も対コマンドスーツを想定したものが少ないのだ。


『ヒュー! 楽勝じゃん! 次はどいつ!?』


ユナの生意気な声が響く中、農場は混乱の渦に飲み込まれていた。

 奴隷たちが鎖をガチャガチャと鳴らし、パニックで叫び声を上げる。


「な、何だぁ!?」

「襲撃!? ナンデ!?」

「た、助けてくれぇ!」


 シホのイノセントはリパルサーリフトでふわりと着地し、慎重に彼らを踏みつぶさないよう動く。


「みんな、落ち着いて! 助けに来たよ!」


 シホがメガネをクイッと直し、両手を振り上げる。

 右の粒子バルカンが唸りを上げ、左のシールドエッジがE粒子ブレードに切り替わる。

 一体のタイタンがガトリングガンを構えた時には、すでにシホ機は眼前にいた。

 斬───ッ!

 E粒子ブレードが装甲を紙のように裂き、タイタンは崩れ落ちる。

 もう一機のタイタンが機銃を撃つが、シホは即座にシールドに戻すと弾き返した。

 直後、反撃の粒子バルカンがタイタンを蜂の巣に変える。


『クリア! 突入します!』


 シホは機体を収容所に隣接させるとコックピットから降り、農場の土を踏む。

 カシャン。

 バックパックからコマンドロボが切り離され、ドーベルマンのような機体がシホに追従する。

 機銃を備えたその姿がキラリと光り、シホを護衛するように歩く。


『了解! 気を付けるんですよ~!』


 ノエルが叫び、残されたイノセントの後ろに陣取る。

 ブゥウウン……。

 バックパックが展開し、通信妨害装置が起動。

 ガトリングガンを構えつつ、ノエルは通信をつなぐ。

 

『ユナちゃんも援護お願い! 通信距離減るから、離れすぎないようにね!』

『もう、言われなくてもやってやるよ!』


 ユナがE粒子ブレードを抜くと、青白い刀身が輝いた。

 そのままジェットパックで跳び上がり、残るタイタンに斬りかかっていく。


~~~


 一方、農場の管制室では緊急事態にパニックが広がっていた。

 監視カメラに映るタイタンは次々に崩れ落ち、ばら撒かれた弾丸が監視員を赤い塵に変えていく。

 シグマの監視員がコンソールを叩き、奴隷を気絶させる電撃装置を起動しようとする。


「早くしろ! 奴隷を抑えろ!」

「電波が……届かねぇ! 妨害されてるぞ!」

「救援は!? 誰か応答しろ!」


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