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巨大コマンドスーツ、ティエジアの力

 ミミルはメイルに支えられ、最初にコンテナに飛び込む。

 続々とリリエルのコンテナに殺到する鉱夫たち。


 その様子を見ながら、シャオも走った。

 目指すはリリエルの隣に立つ愛機、ルナ・ザ・ウルフファング!

 自動操縦でここまで移動し、シャオを待っていたのだ。

 ルナはシャオを認識するとコックピットハッチを開き、巨大な手を差し出した。


「そらよ!」


 シャオの脚が巨大な掌を踏みしめ、跳躍。

 そのまま滑るようにコックピットに乗り込んだ。


「動けよ、ルナ……!」


 ビービービー!

 施設のサイレンが甲高く鳴り、防衛部隊のシェンチアンが動き出す。

 東武連邦にとって、ここはレアメタル採掘の重要拠点であり、多くの防衛兵器が配備されているのだ。

 戦いはまだ終わらない。

 むしろ、ここからが本番であった。


〜〜〜


 ヴェトル鉱山の採掘拠点、兵員宿舎の一室。

 東武連邦のパイロット、バゥ・ロウの部屋は、奴隷鉱夫の粗末な収容所とは対照的に、しっかりした防音と空調が整っている。

 筋骨隆々の巨漢、バゥ・ロウは、厳つい顔を枕に埋め、深い眠りに落ちていた。

 だが、突然の爆音と甲高いサイレンが静寂を切り裂き、バゥはベッドから跳ね起きた。


「何だ!?」


 直後、ドアが乱暴に開き、汗だくの警備兵が飛び込んでくる。


「バゥ隊長! 敵襲です! エリシオンのコマンドスーツが施設を攻撃! 奴隷たちが脱走を───!」


 バゥの目が鋭く光る。

 バゥは即座にツナギを引っ掴み、通信機に怒鳴った。


「防衛隊、全機出撃! ティエジアを起動しろ! 敵を一機残らず叩き潰す!」


〜〜〜


 カメラは烈火へと移る。

 ブレイズ・ザ・ビーストの赤い装甲が、施設外周の最後のシェンチアンを粒子バルカンで蜂の巣に変えていた。

 白い装甲が爆炎に飲まれ、砂漠の夜に火花が散る。

 撃墜を確認し、烈火はコックピットで息を整え、通信に叫ぶ。


『急げ! 何だかヤベえ気配がする!』


 烈火のネクスター能力……過酷な境遇によって異常に発達した直感……が、背筋を冷たく走る。

 リリエルに鉱夫たちが乗り込むのがモニターに映る。

 その刹那───殺気!


「そこか!」


 突然、彼方からガトリングガンの弾幕が唸りを上げて襲いかかってきた。

 烈火は攻撃を先読みし、ブレイズのマルチプルユニットをシールドに切り替え、桜色のリリエルを庇う。

 バチバチと弾丸がシールドに火花を散らし、砂嵐が視界を揺らす。


「ちっ、でけえのが来たか……!」


 砂嵐の向こうから、重厚な白い巨体が姿を現す。

 ティエジア……鉄の鎧と名付けられた拠点防衛用コマンドスーツ。

 シェンチアンより頭二つ分大きいその機体は、まるで動く要塞のように威圧感を放っていた。

 随伴する数機のシェンチアンがガアサルトライフルを構え、ブレイズとリリエルに銃口を向ける。


「あれは……!」


 兎歌はリリエルの操縦席で敵のデータを瞬時に思い出し、通信で叫んだ。


『烈火、ティエジアだよ! 拠点防衛用の大型コマンドスーツ! 小型防護フィールド付きでめっちゃ硬い! でも、動きは遅いはず!』


 烈火はブレイズの粒子ブレードを構え、ニヤリと笑う。


『あいよ。それならぶった斬るまでだ。兎歌、鉱夫たちを連れて下がれ!』

『わかった!』


 リリエルは背中のコンテナに鉱夫たちを収容し、ゆっくり後退する。

 両手に粒子サブマシンガン。

 ティエジアの随伴シェンチアンへの警戒も怠らない。


『シャオ、ルナはまだ!? 防衛隊が本気で動き出したよ!』


 一方のシャオは、ルナ・ザ・ウルフファングのコックピットで焦っていた。

 アニムスキャナーの接続が上手くいかず、コンソールにエラー音が響く。


「くそっ、動け! 速く速く!」


 日焼けした指がコンソールを乱暴に叩くが、焦りが操作を狂わせる。

 画面には接近する適性反応。

 防衛隊のシェンチアンたちが迫ってきているのだ。


「早く、早く……!」


 ふと、ゴウののんびりした声が頭をよぎった。

『焦らない焦らない。シャオはせっかちだからな。たまには深呼吸でもしてみたらどうだ?』

 シャオは目を閉じ、深呼吸する。

 心を落ち着け、コンソールを丁寧に操作する。


「あぁ、そうだな、ゴウ」


 ドクン───ッ。

 次の瞬間、ルナの目が黄色く光り、プラズマリアクターの駆動音が獣の咆哮のように響いた。


「よし、行くぜ!」


 ルナは獣じみた動きで飛び出し、駆けつけてきた防衛隊のシェンチアン3機に襲いかかった!

 一機目に鉤爪を深々と突き立てると、粒子開放機が青い閃光を放ち、装甲を焼き切る。

 二機目がアサルトライフルを放ち、間合いを取ろうとすると、即座に反対の爪をワイヤーで射出。

 ワイヤーはムチのように絡みつき、ワイヤーが爆発して敵の腕とライフルを粉砕。

 だが、残った腕でコンバットナイフを抜いた二機目が突進し、三機目も挟み撃ちを狙ってくる。


「舐めんな!」


 シャオはルナをしゃがませ、アサルトライフルとナイフを紙一重で回避。

 直後、機体を逆立ちさせ、両足を二機目と三機目のシェンチアンに叩きつけた。

 その瞬間───

 ───ドゥンッ!!

 足の粒子開放器が爆発し、両機のコックピットボールを一瞬で焼き尽くした!


『ぐわぁああ!』

『ぎゃああ!』


 ルナは全身の装甲を開き、排熱の黄色い光を放ちながらユラリと立ち上がる。

 その姿は、砂漠の夜に咆哮する黒い狼のようだ。

 シャオは横目でリリエルがコンテナを背負い後退するのを見届け、通信パネルに叫んだ。


『兎歌、鉱夫たちは任せた! オレはこのままヤツを仕留める!』

『分かった! 無理しないでね!』


 さて、烈火はティエジアと激闘を繰り広げていた。

 ティエジアのガトリングガンを右腕のシールドで受けながら、左腕の粒子ブレードで随伴シェンチアンを一刀両断。


『シャオ、遅えぞ!』

『わりぃ! 今行くぜ!』


 烈火とシャオは一瞬視線を合わせた。

 その後ろ、兎歌はリリエルの四足を動かし、コンテナを背負ってヘルメスへ急ぐ。


『烈火、シャオ、ティエジアのフィールドは硬いけど、再展開にはラグがあるはず!』

『つまり、集中砲火だろ? 分かってる!』


 そこへティエジアのガトリングガンが唸り、砂嵐を切り裂く。

 ブレイズとルナは即座にサイドステップで回避!

 バゥ・ロウはコックピット内で叫んだ。


「エリシオンのクズども! ティエジアの鉄壁は貴様らごときで破れん! 鉱山は我らのものだ!」


 ルナの鉤爪がワイヤーでティエジアに絡みつき、シャオが吠える。


「ふざけんな! オレの民を奴隷にしておいて、よくも!!」


 ルナは息を合わせてティエジアに突進!

 ブレイズはやや間合いを開け、動きを見定める。

 砂嵐の夜は、戦いの火花と解放の叫びで燃え上がっていた。


 ティエジアのガトリングガンが砂漠の夜を切り裂く中、随伴するシェンチアンの数機がリリエルを追って動き出した。

 鉱夫たちを乗せたコンテナを背負うリリエルは、ヘルメスへ向けて後退していく。

 その背に迫るのは、敵の銃口!

 だが───

 烈火のブレイズ・ザ・ビーストが赤い閃光のように割り込んだ。


「おっと、そっちは通行止めだ!」


 ブレイズのE粒子ブレードが唸りを上げ、シェンチアンの一機を上下に真っ二つに切断!

 断面から上半身がずるりと滑り落ち、爆炎が砂を焦がす。

 ブレイズの装甲が微かに赤いオーラを纏い、烈火の闘気が獣の気配を放ち、戦場を支配していた。

 烈火はコックピットでニヤリと笑い、残るシェンチアンにブレードを向ける。


「誰もこの先には行かせねぇよ、鉄クズども!」


 その後ろ、兎歌はリリエルの操縦席で状況を確認し、素早く通信を飛ばした。


『烈火、援護するよ!』


 リリエルは後退しながら背中のコンテナから大型ショットガンを取り出し、ブレイズに向かって投げる。


『これ使って!』

『おうよ!』


 ブレイズは空中でショットガンをキャッチし、即座に引き金を引いた。

 ドゥ───ッ!

 その瞬間、拡散弾が辺り一面に炸裂!

 攻撃の嵐に晒された敵機は防御姿勢を取らざるを得ず、動きが鈍る。

 進軍が止まった。

 ショットガンを肩に担ぎ、通信で叫ぶ。


『ナイスだ、兎歌! 今の内、急いでヘルメスへ!』

『うん!』


 リリエルは四足で駆け、コンテナを背負ったままヘルメスへ急ぐ。

 執念深い一機が追ってくるが、リリエルは粒子サブマシンガンを連射。

 シェンチアンはリアクターを撃ちぬかれ爆散!

 鉱夫たちの怯えた息遣いがコンテナ内で響くが、兎歌の声は冷静だ。


『みんな、大丈夫! もうすぐヘルメスに着くよ!』


 一方、シャオはティエジアとの戦いで苦戦していた。

 ルナ・ザ・ウルフファングは獣じみた動きで、ガトリングガンの弾幕を紙一重で回避。

 即座に鉤爪をワイヤーで射出、ティエジアの白い装甲に絡みつける。

 ───だが、防護フィールドが爪を弾き、装甲には傷一つ付かない。


「くそっ、硬すぎだろ! これならライフル借りてくりゃ良かった!」


 シャオはコックピットで歯を食いしばり、ルナを低く構える。

 ティエジアの動きは鈍重だが、防護フィールドの鉄壁がその弱点を補う。

 ここまでの機体を投入しているとは知らなかったため、対デカブツ用の装備を持ってきていないのが悔やまれる。

 バゥ・ロウの嘲笑が傍受装置に響いた。


『無駄だ! ティエジアの装甲は貴様の爪ごときで破れん!』

「ふざけんな! オレの故郷を返せ!」


 ギュオォオオン───ッ

 シャオは怒りを燃料に、ルナのプラズマリアクターをフル稼働させた。

 黒い機体が黄色い排熱光を放ち、獣の咆哮のような駆動音が砂漠に響く。

 シャオはティエジアのガトリングガンを回避しながら、次の手を練る。

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