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砂漠の民を救出せよ!

「おせぇ!」


 烈火は両腕のマルチプルユニットをE粒子ブレードに切り替え、一閃。

 シェンチアンは火花を散らしながら崩れ落ち、砂の中で爆散した。


「これで2機……さぁ、食いついて来いよ……!」


 烈火の声がコックピットに響き、ブレイズの赤い装甲が砂塵を切り裂く。

 ビガービガービガーッ!!

 サイレンが甲高く鳴り響き、施設全体が騒然となる。


 ほぼ同時刻、施設の反対側で新たな爆発が轟いた。

 シャオの侵入だ。

 黒い獣のようなルナ・ザ・ウルフファングが、コマンドロボと共に闇に紛れて施設の裏口を突破。

 鉤爪が警備のシェンチアンを引き裂く。

 悲鳴じみた音とともに装甲が焼き切れ、上半身が爆散───道が開かれた。


『オレの故郷を返せ! 連邦のクソ野郎!!』


 シャオの叫びが通信越しに響く。

 ルナの両手、ワイヤーに繋がれた爪が射出され、駆けつけてきた2機のシェンチアンに突き刺さった。

 直後、鉤爪が粒子開放機を起動させ、荷電粒子の青い閃光がシェンチアンの装甲を焼き切る。


「死ね、死ね、死ねぇ!」


 シャオはルナを収容所の近くに跪かせると、コックピットを降りた。

 並走するコマンドロボを案内人にし、奴隷鉱夫たちの収容エリアへ突き進む。


 一方、烈火は両腕のブレードを低く構え、視界の隅を走るシャオを確認。


「侵入……できたみてぇだな。さぁて、こっちも戦うか……!」


 烈火は、施設の外周に集まるシェンチアンの群れを睨む。

 アサルトライフルを構えた機体と、リニアキャノンを装備した砲撃仕様の機体が、じりじりと包囲してくる。

 烈火は牙を剥くように笑い、ブレイズを突進させた。


「陽動だろ? 派手に暴れてやらぁ。さぁ来いよ、連邦の鉄クズども!」


 ガガガガガッ!!

 ブレイズの粒子バルカンが火を噴き、シェンチアンの一機を蜂の巣に変える。

 一瞬遅れて、リニアキャノンの砲撃がブレイズをかすめるが、烈火は機体を滑らせるように回避。

 その勢いのまま、E粒子ブレードで反撃、敵機の胴体を真っ二つに切り裂いた。


『は、速い……!!』

『うわぁあ!?』


 爆炎が夜空を染め、シェンチアンたちの視線がブレイズに注がれる。

 黒煙の空を背負って立つその姿は、猛獣であり、怪獣に見えた。


 さて、烈火の戦場から少し後方。

 兎歌はリリエルのコックピット内でモニターに視線を走らせていた。

 コマンドロボの映像とシェンチアンの動きをリアルタイムで解析し、二人を支援するタイミングを見計らう。

 細い指がコンソールを軽快に動き、侵入ルートを更新し、セキュリティを破壊する。


『烈火、シャオ、順調だよ! 烈火はもう少し外周で敵を引きつけて。シャオ、収容エリアの扉はコマンドロボのトーチで破壊できるから、すぐ入れるはず!』

『『了解!』』


 シャオは一直線に走った。

 獣のように俊敏な動きで銃撃をかわし、警備兵のヘルメットを掴み、引き倒す。


「邪魔だ!」

「ぐはぁ!!」


 地面にたたきつけられた警備兵は、脊椎と頭蓋骨を損傷し即死!

 もう一人の警備兵はコマンドロボの体当たりによって圧死!


 ついにシャオは、コマンドロボと共に収容エリアの扉にたどり着いた。

 バチバチバチ───ッ

 ロボのレーザーカッターが錠を焼き切り、扉が開く。


「な、なんだ……?」

「誰だ?」

「うぅ、騒がしいなぁ……」


 薄暗い部屋には、砂と汗にまみれた鉱夫たちが鎖に繋がれていた。

 メイルとヨードを含む数十人の砂漠の民が、驚いた目でシャオを見つめる。

 その姿を見て、シャオは一瞬目を伏せた後、大きく息を吸い込んだ。


「オレはエリシオンのシャオ・リューシェン!

「お前らの故郷を奪った連邦をぶっ潰すために来た!

「ほら、急げ!」


 シャオの声が収容エリアの薄暗い部屋に響き、砂と汗にまみれた鉱夫たちの間にざわめきが広がる。

 鎖に繋がれた彼らの瞳に、驚きと希望が揺れた。

 メイルとヨードが互いに顔を見合わせ、信じられない思いでシャオを見つめる。

 そんな中、一人の老婆が震える足で立ち上がった。

 名をミミル、砂漠の民の飯炊きとして連邦に使役されていた女性だ。

 ミミルの皺だらけの手がシャオの腕に伸び、掠れた声が震える。


「シャオ……シャオなのかい? 本当に、あんたが……?」


 シャオは一瞬動きを止め、老婆の顔を見つめた。

 記憶の奥、幼い頃の集落で暖かなスープを振る舞ってくれた女性の面影が重なる。

 シャオは力強く頷き、短く答えた。


「ミミル、婆さん……オレだ。生きてたんだな!」

「……シャオ!」


 ミミルは涙をこぼし、シャオを力いっぱい抱きしめた。

 砂と汗の匂いが混じるその抱擁は、失われた故郷の温もりを一瞬だけ呼び戻す。

 だが、感慨に浸る時間はない。

 遠くから警備兵の荒々しい足音と怒声が響き、収容エリアの鉄扉が軋む。


「敵だ! 奴隷が脱走してるぞ!」

「こっちだ、走れ!」


「チィッ!」


 シャオはミミルの肩を掴み、鋭く叫ぶ。


「婆さん、しみったれた話は後だ! 走れ、みんな! 外に脱出ポイントがある!」

「来たぞ!」


 砂漠の民の誰かが叫んだ。

 コマンドロボが即座に反応し、ドーベルマンのような機体が収容エリアの通路に躍り出る。


 ドウンッ!

 ショットガンとライフルの咆哮が響き、駆けつけてきた警備兵が血飛沫と共に倒れた。

 同時に、コマンドロボの装甲がライフル弾を弾き、火花を散らした。


「うぉ!? まだ来るぞ!」


 鉱夫の一人、メイルが素早く倒れた警備兵のライフルを奪い、躊躇なく引き金を引く。

 二人目の警備兵は、驚いている間に撃たれて死亡した。

 続々と警備兵が来る中、別の鉱夫、ヨードは拳銃を拾い、近くの収容部屋の鍵を撃ち抜いた。

 鉄の扉が次々と開き、鎖から解放された鉱夫たちが叫び声を上げて飛び出す。


「連邦のクソ野郎ども! やってやる!」


 メイルの叫びに、鉱夫たちが応える。

 ある者は奪ったライフルで応戦し、別の者はその辺にあった消化器を振り回して警備兵を叩きのめした。


「こっちだ婆さん!」

「急げ、肩を貸すぞ!」


 走れない老人や怪我人を、他の鉱夫が肩を貸して支える。

 混乱の中、シャオは先頭で道を切り開き、コマンドロボと共に警備兵を蹴散らした。

 日焼けした拳が、かつての故郷を守れなかった悔しさを叩きつけるように動く。


「オレに続け! 絶対にみんな連れて帰る!」

「いたぞ! 脱走者だ!」

「逃がすな!」


 だが、通路の先で新たな警備兵!

 警備兵はスタンロッドを振り上げるが、すでにシャオは眼前にいた。

 鋭い膝蹴りがその顎を砕き、裏拳が頚椎を粉砕。


「さぁ、こっちだ! 焼き切れ、ロボ!」

『ウォオーン!』


 コマンドロボのレーザートーチが鉄扉を焼き切り、脱出ルートを確保。

 鉱夫たちの足音が、凍てつく砂漠の夜に希望の響きを刻んでいく。


〜〜〜


 一方、ヘルメスの格納庫から発進したリリエル・ザ・ラビットは、脱出ポイントで待機していた。

 砂嵐の中、ケンタウロス型の桜色をした機体は静かに佇む。

 操縦席では、兎歌がモニターに映るシャオたちの動きを注視する。


「背部大型コンテナ……収容準備よし、展開。ブレイズの追加武装……異常なし。……よし」


 兎歌は通信で二人に呼びかけた。


『シャオ、鉱夫たちをコンテナに誘導して! 烈火、外周のシェンチアンはあと3機! 私が援護するよ!』

『『了解!』』


 烈火のブレイズは施設の外周で戦いを続けていた。

 迫るリニアキャノンの弾を回避し、粒子ブレードを振り下ろす。


「そこだッ!」


 青い光が煌めいた直後、シェンチアンの上半身がずるりと滑り落ちた。

 反対側からもう一機のシェンチアンがリニアキャノンを構え、狙いを定める。

 だが、発射より早く、リリエルの放った弾幕がシェンチアンを吹き飛ばしていた。

 通信パネルから響くのは、二つの爆音と、烈火の声。


『兎歌、ナイスだ!』

『うん!』


〜〜〜


 さて、シャオと鉱夫たちは、銃声と叫び声の中を突き進む。

 老婆ミミルは鉱夫メイルに支えられ、懸命に走った。

 頬を伝う涙は、シャオの背中を見つめながら希望に変わっていく。

 と、その時。

 収容エリアの外壁が近づく中、突然の轟音!

 現れたのは桜色の巨大な手。

 リリエルの腕が外壁に突き刺さりバリバリと引き剥がしていたのだ。

 拡声器を通じて、兎歌の声が、鉱夫たちに届く。


『こちらリリエル! コンテナを開けたよ、早く乗って!』

「兎歌!」


 シャオは振り返り、鉱夫たちに叫んだ。


「ほら、婆さん、みんな! コンテナに乗れ! ここから脱出だ!」

「助けに来たのか!?」

「そうらしいぞ! そら急げ!」


 ミミルはメイルに支えられ、最初にコンテナに飛び込む。

 続々とリリエルのコンテナに殺到する鉱夫たち。


 その様子を見ながら、シャオも走った。

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