落とせ、巨大戦艦クーロン!
「ハーハハ! 見つけたぜ、でけぇ獲物!さぁ、覚悟を決めな!」
ウェイバーがスラスターを全開にし、対空砲火の網を軽やかにかわす。
背面ミサイルコンテナが開き、無数のミサイルが尾を引いて『クーロン』の後方ブロックへと叩き込まれた。
ドドドドドッ!
爆発が連鎖し、艦体に激震が走る。
装甲が剥がれ、火花が散り、後方ブロックの一部が黒煙を上げて崩れ落ちる。
ギゼラは牙を剥いて哄笑した。
「どうだい、ケツに火がついた気分は!?」
クーロンのブリッジで、チェンジャンが歯を食いしばる。
艦体が揺れ、モニターに映るウェイバーの動きが捉えきれない。
「この……近づけさせるな! 荷電粒子砲、二番砲塔、てぇー!」
艦体が低く唸り、無数の砲塔がウェイバーを狙う。
ズガァンッ! ブォンッ!
レールガンの超高速弾体と荷電粒子砲の青白い光が成層圏を切り裂き、紫の巨体へと襲いかかる。
ギゼラは操縦桿を引いて回避するが、攻撃の密度が尋常ではない。
「ちっ、しぶといねぇ!」
ウェイバーの装甲を掠め、火花が散る。
E粒子コートによる重装甲が耐えるものの、戦艦の火力は強力で、簡単には落とせない。
ギゼラは舌なめずりする。
「この位置だと援護は期待できないねぇ。とっとと仕留めないと、プロメテウスがヤバいか?」
プロメテウスのブリッジでは、オペレーターが敵襲の報告を伝えてくる。
「左舷に敵機2!」
「右舷4番砲塔破壊されました!」
「前方に敵影3!」
「右3番、ミサイル放て! 荷電粒子砲2番、目標敵影!」
無数の光が交差し、爆炎が広がる。
プロメテウスの周囲ではリリエルが飛び回り、護衛するが、敵の数が多い!
一方、クーロンの艦橋では、チェンジャンが冷静に状況を分析していた。
「敵は4機……新型と前衛の3機が目立つが、本命は4機目の奇襲か。ならば、護衛艦を囮に使え! 敵を引き寄せ、一気に叩く!」
オペレーターが即座に応じ、残る護衛艦がウェイバーを誘うように動き出した。
チェンジャンの目が冷たく光る。
(ドミニオンの機体がどれだけ強くても、俺の艦を舐めるなよ……!)
成層圏の戦場で、ウェイバーはクーロンの猛攻に晒されていた。
対空機銃と荷電粒子砲の嵐の中、ギゼラ・シュトルムは操縦桿を握り直し、牙を剥いて笑う。
「ハーハハ! 確かに強いけど、これはどうだい!?」
ウェイバーのE粒子コートが青白く輝き、対空機銃の弾幕を弾き返す。
紫の巨体がスラスターを噴かし、艦橋を狙って急接近。
背面ミサイルコンテナが開き、ミサイルが尾を引いて放たれた!
ドドドドッ!
爆発が艦橋周辺を包み、火花と黒煙が舞う。
だが、クーロンの装甲は厚く、致命打には程遠い。
ブリッジで、チェンジャンが冷静に指示を飛ばす。
「慌てるな! いくら高性能機でも、戦艦より強いわけではない。落ち着いて防衛機を向かわせろ!」
オペレーターが即座に応じ、残存するシェンチアンがウェイバーを迎撃すべく展開する。
チェンジャンがモニターに目を移すと、作戦の推移が映し出されていた。だが、そこには不穏な事実が示されている───シェンチアンの残存数が急速に減っている。
「何……? 敵の前衛がここまで強いのか?」
チェンジャンの眉が寄るが、表情は崩さない。
一方、前方戦線では、サーペントの巨体がプロメテウスを狙っていた。
リエンは無表情にアニムスキャナーを通じて機体を操り、肩の荷電粒子砲が光を放つ。
おお、プロメテウスと言えど荷電粒子砲の直撃には耐えられまい。
もはやこれまでか!?
ブォンッ!
青白いエネルギーがプロメテウスの艦首へと襲いかかるが、その前に赤い影が立ち塞がる。
烈火のブレイズだ。
ガギィンッ!!
両手のシールドが展開し、荷電粒子を弾き返した。
火花が散り、烈火が通信で叫ぶ。
『艦長、艦は守ったぞ! こいつは俺が片付ける!』
『見事だ烈火!』
『た、助かったぁ……!』
サーペントの粒子砲が再チャージに入る。
その隙を消すため、リエンが両手のレールガンを構えた。
だが、ブレイズの動きが一瞬早い。
烈火が鋭い視線でサーペントを捉え、叫ぶ。
「その装甲、武器までは付いてねぇだろ!」
ブレイズが跳躍し、粒子ブレードが青白く輝く。
斬───ッ!
光の刃がサーペントのレールガンを両断し、砲身が火花を散らして折れる。
巨体がよろめき、リエンのコックピット内で微かな振動が響いた。
烈火は追撃をかけようと構える。
「粒子チャージが遅ぇからって、レールガンで誤魔化そうったって無駄だ! 次はお前をぶった斬る!」
ブレイズがバックパックの調整を終え、次の隙を狙う。
サーペントの装甲は強力だが、武装そのものには粒子偏光が及ばない───烈火の観察が的中していた。
一方、クーロンのブリッジでは、チェンジャンが状況の変化に気づき始める。
「新型が押されてるだと……? ドミニオンの機体もこの程度か。ウェイバーを先に潰せ! 前衛は後回しだ!」
艦のレールガンが再びウェイバーを狙い、砲火が集中する。
ギゼラは舌打ちし、機体を旋回させた。
「ちっ、しつこいねぇ! こっちも本気出すか!」
ウェイバーの粒子キャノンがチャージを開始し、紫の巨体が反撃の準備を整える。
遥か後方では、シェンチアンが爆散する花火が上がり、空を照らした。
成層圏の戦場で、プロメテウス隊が徐々に優勢を取り戻しつつあった。
ウェイバーから100mの位置。
クーロンの近く、オービターのコックピット内にアジャダ・バンダーの苛立ちが響いていた。
脂ぎった顔が悔しげに歪み、彼が操縦桿を乱暴に叩く。
「えぇい、なぜ1機も落とせん! リエンは何をやっとるんだ、この役立たずが!」
アジャダはミサイルランチャーを発射。
ドドドオッ!
オービターから放たれたミサイル郡が尾を引いてウェイバーを狙う。
だが、紫の巨体がねじれるように旋回し、飛行形態から人型形態へと変形。
ミサイルが掠める中、ギゼラ・シュトルムの哄笑がコックピット内に響く。
「ハーハハ! その程度じゃ当たらねぇよ!」
ウェイバーが肩から粒子ブレードを抜き、光の刃が青白く輝く。
巨体が急加速し、オービターへと切りかかる。
『このぉおお!』
アジャダは咄嗟にレーザー刀を展開し───
ガキィンッ!
刃と刃が交錯し、火花が散る。
だが、ギゼラの狙いは別だった。
オービターに接近することで、クーロンの砲火を封じる───
この位置なら、戦艦は巻き添えを恐れて撃てない。
その隙に、ウェイバーの粒子キャノンが低く唸りながらチャージを進めていた。
「まとめて灰にしてやるさ!」
ギゼラが牙を剥き、チャージ完了を待つ。
一方、クーロンのブリッジでは、チェンジャンが状況の変化に歯を食いしばる。
「敵が接近戦に持ち込んだか……砲撃を控えろ。シェンチアンで迎撃せよ!」
だが、モニターに映るシェンチアンの数がさらに減り、チェンジャンの表情が硬くなる。
プロメテウス隊の猛攻が、戦艦の防衛線を確実に削っていた。
一方、前線では、リリエルが側面から迫るシェンチアンを迎え撃っていた。
リリエルは両手にサブマシンガンを構え、桜色の機体が軽やかに跳躍。
ガガガガッ!
弾幕がシェンチアンを襲い、コックピットを正確に撃ち抜く。
ボゴォオンッ!
爆発が成層圏に広がり、敵機が破片となって散った。
だが、反対側から別のシェンチアンがアサルトライフルを乱射しながら迫る。
ダダダダッ!
弾丸がリリエルを狙うが、兎歌は冷静に反応。
一瞬にして間合いを詰めると、左脚の粒子開放機が起動し、青白いエネルギーが解放された。
ブォンッ!
粒子波がシェンチアンのコックピットを直撃し、一瞬で破壊。
機体が爆散し、残骸が闇に消える。
兎歌はコックピット内で静かに息をつく。
少女は座った目になり、感情が薄れたように見えた。
追い込まれたことで闘争本能が活性化し、普段の優しさが影を潜めているのだ。
「……次」
淡々と次の敵を探す兎歌の姿は、戦場の修羅と化していた。
戦場全体が混沌と化す中、ギゼラのウェイバーがオービターを牽制しつつ、『クーロン』に粒子キャノンを向けていた。
『充填率100%、状態、安定』
電子音がチャージ完了を告げ、ギゼラが叫ぶ。
「くらいなッ!」
ドゴォオオオッ!
拡散粒子砲が放たれ、無数の光の矢がクーロンの艦体を襲う。
装甲が赤熱し抉れ、対空砲の一部が破壊される。
チェンジャンがブリッジで声を荒げた。
「くそっ、防衛機を集中させろ! 敵を艦から引き剥がせ!」
リリエルとウェイバーの猛攻が、クーロンの命を揺らし始めていた。
「くそぉ!!」
アジャダの焦りが募り、オービターが無駄にミサイルを乱射するが、戦況は既にプロメテウス隊に傾きつつあった。
成層圏の闇に、爆発の光と鋼の響きが響き渡る。
成層圏の戦場で、サーペントの巨体が危機に瀕していた。
コックピット内で、リエンは機体状況を確認する。
長い前髪が揺れ、アニムスキャナーが脳波を映し出す。
「荷電粒子砲……チャージが遅い。レールガン……破壊された。残るは……マシンガン」
無表情に呟き、リエンが視線を動かす。
巨体の各部に付いたマシンガンが一斉に火を噴いた。
ダダダダッ!
弾丸がブレイズを襲うが、烈火はシールドを展開。
射撃を弾きながら赤い機体を急接近させる!
「ウォオオオッ!!」