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ガロVSギゼラ、東武連邦の陰謀

 眼下では、セレーナとネビュラがホテルのバルコニーから掩体壕へと急いで避難していた。

 警報が鳴り響く中、砂浜にイノセントの残骸が散らばり、住民たちがパニックに陥っている。

 落下してきたソークルの残骸が、屋台を押しつぶし、衝撃で焼き魚が砂浜に飛び散った。

 セレーナが走りながらネビュラに叫ぶ。


「ギゼラが来てくれた! これで持ちこたえられるかしら!?」


 ネビュラが冷静に応じながら、周囲を警戒する。


「はい、ウェイバーの火力なら敵を押し返せます。しかし、油断は禁物ですよ。……セレーナ様、急いでください!」


 掩体壕に飛び込むと同時に、上空でウェイバーの粒子ブレードが再びソークルと交錯。

 ガロが哄笑しながら応戦し、戦場は一層の混沌に包まれていく。

 セレーナは掩体壕の入り口から空を見上げ、心の中で祈る。


((ギゼラ、お願い……みんなを守って!))



 上空では、ウェイバー・ザ・スカイホエールの粒子ブレードが唸りを上げ、ソークルの左腕を切り落としたところだ。

 青白い光が機体を切り裂き、爆発が空に花を咲かせる。

 直後、動きの鈍ったソークルに下方からのリニアキャノンが直撃、爆発四散!


 ギゼラはコックピット内で哄笑する。


「ハッ! また沈んだな。アンタら、アタシに追いつけんのか!?」


 だがその瞬間、ガロ・ルージャンのソークルが鋭い動きで反撃に転じた。

 機銃が連続して火を噴き、ウェイバーを襲う!

 ガギギギンッ!

 ギゼラは即座に粒子コートと左手のシールドを展開し、弾丸を何とか弾き返す。

 火花が散り、ウェイバーがわずかに揺れた。


『ちっ、こいつ、やりやがるな!』


 ギゼラが舌打ちするが、ガロの計算高さが彼女を上回っていた。

 ガロはウェイバーの動きを観察し、ミサイル迎撃のために荷電粒子キャノンを撃った後のエネルギー充填時間を正確に予期していたのだ。

 砲撃から一定時間、ウェイバーの出力が下がり、動きが鈍る。

 機体性能ではソークルを圧倒するウェイバーだが、この隙を突かれ、ガロのために特別にチューニングされたソークルに押されていた。


「おもしれぇ機体だな、新型ちゃん。だが、その機体じゃ重たいだろォ!?」


 ガロが哄笑しながらソークルを急旋回させた。

 直後、機銃とコンバットナイフの鋭い連撃がウェイバーを追い詰める!

 ギゼラは歯を食いしばり、レバーを握り直した。


「舐めんなよ! 此の程度……!」


 ウェイバーはE粒子ブレードを突き出し、接近戦を挑む。

 コンバットナイフより粒子兵器の方が威力は上だ!

 だが、ガロの狡猾な動きに翻弄され続ける。


「だーはは! 甘いね。機動力じゃこっちが上なんだよ!」


 上空の戦いは一進一退の攻防となり、戦場に緊張が張り詰める。


~~~


 一方、地上ではさらなる危機が迫っていた。

 海岸線から、東武連邦の量産型コマンドスーツ『シェンチアン』の武骨な影が次々と上陸を果たしていた。

 あらかじめ水中活動用に改造された機体が、海底から不意を突いて攻め込んできたのだ!


 水中用の丸い装甲に覆われたシェンチアンが砂浜に足跡を刻み、アサルトライフルを構える。

 イノセントの1機がその動きに気づく間もなく襲いかかる、アサルトライフルの弾幕!。

 ダダダダダ───ッ。

 弾丸が装甲を貫き、小破したイノセントがよろめいた。

 パイロットが通信で叫ぶ。


『敵が海から! 新手だ!』


 残りのイノセントが急いで反撃に転じるが、不意を突かれた状況で防戦一方に追い込まれる。

 海と空からの挟撃に、防衛部隊は翻弄され、反撃のスキを見いだせない。

 掩体壕の中で、セレーナがその光景をモニター越しに見つめる。

 冷や汗が流れた。


「海底からの攻撃……! ネビュラ、どうなってるの!?」


 ネビュラが冷静に状況を分析し、セレーナに応じる。


「おそらく、上空の部隊は陽動、海からのシェンチアンが主攻です。上陸部隊ということは、目的はおそらく───」


 掩体壕の中、セレーナとネビュラが戦況を見守る緊迫した空気が一変した。


 ドォオオンッ!!


 突然、入り口が爆破され、黒い装甲服の兵士たちが乗り込んできた。

 東武連邦の特殊部隊、ガロの直属の精鋭だ。

 シェンチアンの上陸と同時に、輸送艇が密かに海岸に到着し、送り込んでいたのだ。

 黒い影が素早く掩体壕内に散開する。


「セレーナ様、伏せてください!」


 ネビュラが咄嗟に拳銃を抜き、セレーナを庇うように立ちはだかる。

 黒髪が揺れ、物静かな瞳が鋭く光った。

 銃声が響き、兵士たちに向かって発砲する……だが、多勢に無勢。


「うぁあッ!」


 敵の数が多く、ネビュラの抵抗も限界を迎える。

 一人の兵士が放った弾丸がネビュラの腹部を貫き、呻き声を上げて膝をついた。


「ネビュラ!」


 セレーナが叫び、倒れたネビュラに駆け寄ろうとするが、その隙に兵士たちが彼女を取り囲む。


「きゃあ!?」


 兵士たちに腕を掴まれ、抵抗する間もなく確保される。

 戦士でもないセレーナでは、特殊部隊の兵士に対抗などできず、なすすべがない。


『目標を確保した! 撤収しろ!』


 兵士の一人が通信で報告し、セレーナを連れ去っていく。

 セレーナの叫び声が掩体壕に響き、ネビュラが血を吐きながら手を伸ばすが、力尽きて倒れた。


「せ、れーな……」


 地上では、イノセントがシェンチアンに押され、防戦一方の状況が続いていた。

 砂浜に散らばる残骸と煙の中、東武連邦の量産型コマンドスーツが次々と進撃する。

 上空ではウェイバーが奮闘しているが、ガロと拮抗するだけで手いっぱい。

 地上への攻撃を食い止める余裕は……ない!


『チィ……下も慌ただしいねぇ!』


 しかしその時───

 突然どこからともなく粒子砲のビームが飛来し、シェンチアンの1機を正確に貫いた。

 ドゴォオン!

 装甲が溶け、爆発が砂を巻き上げる。


『何!? どこからだ!』


 東武連邦の兵士たちが驚き、通信が混乱する。

 上空では、ガロのソークルがウェイバーと激戦を繰り広げていたが、続く2発目の粒子砲が彼を襲う。

 鋭い光が空を切り、ガロはとっさの判断で機体をひねる。

 だが、回避が間に合わず、右足が吹き飛び、ソークルが大きくバランスを崩した!


「くそっ! 狙撃か!」


 ガロが舌打ちし、コックピット内で状況を確認する。


 遠くの空、水平線のかなたに戦闘空母プロメテウスの姿が浮かんでいた。

 その甲板に立つのは、狙撃に特化したコマンドスーツ『ストラウス・ザ・ホークアイ』。

 深緑の機体が大型ライフルを構え、スコープ越しに戦場を睨んでいる。

 試作型の超々遠距離狙撃用大型ライフル。

 有効射程は20kmを超え、高圧縮粒子弾は距離減衰を抑え、この長距離でも大型コマンドスーツを破壊する威力を保っている!


「お姫様は……よし、回収できたな」


 精密な射撃が、東武連邦の勢いを一気に削いでいた。

 ガロが通信で部下に叫ぶ。


『敵の増援が来たぞ! 潮時だ、撤退しろ!』


 その瞬間、ウェイバーのギゼラが反撃に転じる。

 ミサイルコンテナが開き、尾を引く弾頭がソークルとシェンチアンをそれぞれ1機ずつ撃破!

 爆炎が戦場を包み、東武連邦の兵士たちが慌てて後退を始める。


『ちッ、撤退だ! 急げ!』


 だが、彼らの動きは迅速で、セレーナを乗せた輸送艇がすでに海岸を離れていた。

 ウェイバーが追撃を試みるが、ガロのソークルが陽動を続け、時間を稼ぐ。

 プロメテウスからはストラウスがさらに一撃を放つが、敵の撤退速度がそれを上回る。


~~~


 殺し合いが終わった。

 砂浜にはイノセントの残骸と、潰れた屋台が残されていた。

 セレーナの連れ去られた掩体壕から、彼女の叫び声の余韻だけが虚しく響き、戦場は一時的な静寂に包まれた。


 ギゼラは防衛隊の兵士から通信を受け、セレーナが攫われたことを知る。


『マジかよ……。あのお姫様が……』

『残念ながら本当です。我々の力不足で……クッ』

『泣くんじゃないよ。暗殺じゃなくて誘拐だろ? 生きてんなら、まだ手はあるさ』

『は、はい……』

『それに、ウチには優秀な仲間がたくさんいるんだ。きっとなんとかしてくれるさ』


 ギゼラは通信しながら機体をチェックする。

 大急ぎで飛んできて、そのまま激闘を繰り広げたせいで、機体への負荷がすごい。

 しかも、ウェイバーは小回りが利かない。人質がいるような状況とは、相性が悪い。

 だが、問題ない。

 ギゼラは仲間をよく知っている。

 この程度の事態なら、解決できると知っているからだ。

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