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VSリエン・ニャンパ

 プロメテウスの甲板。

 そこには、各部に太いエネルギーケーブルが繋がれた、ストラウスの姿があった。


『プラズマリアクター、反応良好です!』

『次弾、粒子圧縮始めぇ!』


 レゴン艦長の指示により、ストラウスのプラズマリアクターを、プロメテウスの主砲発射システムと直結させたのだ。


 通常、コマンドスーツの武器は、粒子生成、圧縮、そして制御のすべてを一つのリアクターで行う。

 だが、この連結システムなら、粒子生成のみをストラウスが行い、圧縮と制御をプロメテウス側の巨大なシステムで行うことができる。


 これにより、威力、射程、そして連射性能が、戦艦クラスの主砲へと飛躍的に向上していた。

 狙撃機であるストラウスを、巨大な艦載砲の弾丸供給装置として利用する、マティアスならではの戦術だ。


 ズドォオン!

 再び青白い光が走り、今度はミサイル砲塔へ直撃。

 砲塔は、隣のレーダードームを巻き込んで爆散した!


〜〜〜


 さて、クーロンのブリッジ。

 そこでは、次々に絶望的な被害報告が上がっていた。


『荷電粒子砲、大破!』

『右舷ミサイル砲塔、大破!』

『左舷レールガン、大破!』


 チェン・ジャンは歯を食いしばり、憤怒の表情で叫ぶ。


「チッ、戦闘空母が、ここまでやるとは……!」


 プロメテウスはプラズマリアクター搭載機を

 彼は即座に、残存戦力を振り分けた。


「ソークル部隊、全機、あのスナイパーの機体へ向かえ! 艦を落とせば、あの狙撃は止まる!」


 同時に、別働隊にも通信を入れる。


「ファランクス別働隊、予定通りプロメテウスの背後へ回り込め! 敵の旗艦を叩け!」


~~~


 プロメテウスのブリッジ。

 ヨウコが、モニターの情報を読み上げ、切迫した声を上げる。


「敵機、接近してきます! 前方より、ソークルの群れ! 同時に、反対方向より、新たなファランクス6機が急接近中!」


 敵は、旗艦プロメテウスへと集中攻撃を仕掛けてきた。


 レゴンは即座に指示を出した。

 冷静な判断が、激しい戦場で光る。


「イノセント部隊は、全機、前方のソークル隊を迎撃せよ!」

「了解!」


「ウェイバーのチャージは完了したか!?」

『おう! いつでも出撃、いけるで!』


 通信越しに響いてくるのは、菊花の声。

 レゴンは小さく頷き、威勢よく声を張り上げた。


「よし、ウェイバーを射出! ファランクス隊に向かわせろ! それと、リミッターは使うなと、ギゼラに伝えておけ!」

「「了解!」」


 カタパルトでは、紫の巨体が出撃のときを待っていた。


「ウェイバー・ザ・スカイホエール、ギゼラ・シュトルム、出るよ!」


 勇ましい名乗りと共に、ウェイバーがカタパルトから虚空へと躍り出た。

 ギゼラは加速のGをねじ伏せ、即座に照準を合わせて粒子キャノンを放つ。


 ズドォオン!


 閃光が走り、ファランクスの一機をシールドごと吹き飛ばした。

 左腕を肩からごっそりと持っていかれた敵機が、バランスを崩してきりもみ回転を始める。


「一丁上がり!」


 だが、敵も精鋭だ。残る機体が即座に反応し、反撃の荷電粒子砲を次々に撃ち込んでくる。

 ウェイバーは巨体を翻し、ビームの豪雨の中を紙一重で回避し続ける。


((チッ、ちょこまかと! リミッター解除さえできれば、こんな連中、瞬殺できるのに!))


 ギゼラは歯噛みする。

 すでに切り札を使ってしまい、キャノン砲の再チャージには時間がかかるのだ。

 そこへ、敵の照準が重なる。


 その窮地を救ったのは、後方からの一撃だった。


 プロメテウス甲板から、ストラウスのスナイパーライフルが火を噴く。

 狙われたファランクスは反応し、即座にシールドを構えて防御態勢をとった。


 だが――粒子弾は直前で不可解な軌道を描いて湾曲し、シールドを迂回して敵機の脇腹を貫いた。


 ドガァン!


 爆発する敵機。

 それは、ストラウスに新たに装備された、『偏曲型スナイパーライフル』の威力だった。

 磁場干渉によってビームを曲げ、遮蔽物の裏側を撃ち抜く新兵器だ。


「なにっ!?」


 しかし、ファランクスのパイロットたちは強化兵士だ。対応が早い。

 僚機が爆散した直後、残るファランクスたちは即座に円陣を組み、互いの死角を打ち消す防御陣形をとった。


 そして、代わる代わる荷電粒子砲を放ち、絶え間ない弾幕でウェイバーを追い込んでいく。


「ふむ、連携が上手い。一筋縄ではいかないか」


 マティアスはコックピットで小さくつぶやき、冷静に視線を前方へ戻した。

 これ以上、守りの堅いファランクスに拘泥して時間を浪費するのは得策ではない。


 前方では、ソークル部隊とイノセント部隊の乱戦が続いていた。


 ダダダダッ!


 ソークルの機銃掃射がイノセントの一機を蜂の巣にし、爆発させる。

 直後、別のイノセントが踏み込み、粒子ブレードでソークルを両断する。


 敵味方が入り乱れる乱戦だ。

 これでは、護衛艦も誤射を恐れて支援攻撃ができない。


 だが、マティアスの腕なら話は別だ。


「目標変更。ソークルを墜とす」


 ストラウスが長い砲身を僅かに動かす。

 音もなく放たれた光弾は、乱戦の隙間を縫うように走り、味方と交戦中だったソークルのコックピットを正確に貫いた。


〜〜〜


 一方の、最前線。


 合体によって出力を大幅に引き上げたブレイズは、まさに鬼神の如き強さだった。

 東武連邦の艦隊が放つ弾幕を、E粒子コートとシールドで弾き返しながら、ブレイズは一直線に敵の中枢へと突き進む。


 その行く手を遮るように、全長100メートル級の輸送艦が割り込んできた。

 旗艦クーロンを守るための、捨て身の肉壁だ。


「邪魔だぁぁぁ!」


 烈火の咆哮と共に、ブレイズの手が背中へと伸びる。

 合体したリベルタのパーツから、折り畳み式の大太刀を引き抜いた。

 刀身に赤きE粒子が奔り、巨大な光の刃を形成する。


 斬───ッ!


 一閃。

 輸送艦の巨体が、船首から船尾まで、紙細工のように真っ二つに両断された。

 爆発が連鎖し、巨大な火球が膨れ上がる。


 ブレイズはその爆炎を突き破り、無傷で姿を現した。

 その目の前には、護衛の戦闘艦が立ちはだかっていた。


「落ちろッ!」


 ブレイズの背部――リベルタの脚部レールガンが火を噴く。

 至近距離からの容赦ない連射。

 超高速の弾丸が戦闘艦のブリッジに吸い込まれ、司令塔を飴細工のように粉砕した。


 ドゴォオオオン!


 輸送艦と戦闘艦。

 二隻の艦を瞬く間に鉄屑へと変えたブレイズのカメラアイが、奥に鎮座する巨艦『クーロン』を捉える。


『烈火、次が来る! 右!』


 兎歌の鋭い警告が響いた。

 直後、宇宙の暗闇を切り裂いて、黄色い閃光が奔る。


 常識外れの加速で急接近してきた機体が、ブレイズへと襲いかかった。


 ガギィイイイイン!


 甲高い金属音と、粒子が弾ける音が宇宙に響く。

 ブレイズの大太刀と、敵機が繰り出した黄色のE粒子ブレードが激突し、激しく火花を散らした。


 鍔迫り合いの向こう側に見えたのは、白と金を基調とした機体。

 かつて奪われたエリシオンの希望――『イノセント・オリジン』を、ノヴァ・ドミニオンの技術で無残に改造した姿。

 『イノセント・ソラリス』だ。


 ソラリスは、背負ったリングから不気味な黄色の光を放つ。

 その姿に、烈火は肌が粟立つような感覚を感じ取った。

 無機質で、冷たく、けれど確かに覚えのある気配。


「お前は……あの時の!」


 烈火が叫ぶ。


「……」


 だが、当然、敵にその声が届くことはない。


 ソラリスのコックピットで、リエン・ニャンパは無表情にレバーを握っていた。

 幼い顔立ちと、それに似合わぬ豊満な肢体。

 だが、その瞳には感情の光がない。


 あるのは深い絶望と、植え付けられた恐怖だけだ。

 考えることと言えば、痛い目にあわないことと、敵を排除することだけ。


 二機は互いに距離を取り、刃を構えて対峙する。

 赤と黄の粒子が、火花のように散った。


「包囲、攻撃……」


 ソラリスが、無機質な動作で左手を振るう。

 それに呼応するように、周囲に展開していたファランクス3機が動き出した。

 ブレイズを中心として、正三角形を描くように包囲網を形成する。


 さらに、頭上を巨大な戦闘艦と輸送艦が覆い隠す。

 逃げ場はない。

 この空域の全戦力をブレイズただ一機に集中させ、確実に圧殺する布陣だ。


 ズガガガガッ!


 四方八方から、無数の砲撃がブレイズを襲う。

 普段の烈火なら、鼻歌交じりに躱せる弾幕だ。

 だが、今のブレイズの動きは、明らかに精彩を欠いていた。


『烈火ッ!』


 反応の遅れた烈火を庇い、背中のリベルタが翼を広げる。

 展開されたE粒子防壁が、殺到するビームを受け止め、弾け飛んだ。


 ドゴォオオオン!


 機体に凄まじい激震が走り、アラートが鳴り響く。


『ぐぅ……ッ!』


 歯を食いしばる烈火の脳裏に、忌まわしい記憶がフラッシュバックする。

 かつて、ノヴァ・ドミニオンと戦った時のことだ。


 あの時、烈火は敵機――リエンを、コックピットごと破壊しようとした。

 だが、引き金を引く寸前、流れ込んできたのだ。

 死を前にした、幼い少女の震えるような恐怖心が。


───死にたくない、死にたくない、死にたくない!!


 ネクスターという特殊な感応能力を持つがゆえに、烈火は敵の恐怖と共鳴してしまった。

 その結果、トドメを刺せなかった。


 そして今も、目の前の敵機から伝わってくる、凍りついたような少女の心。

 それが、烈火の闘争本能にブレーキをかけている。


『烈火……! このままじゃやられるよ!』

『分かってる……! 分かってんだよぉッ!』


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