開戦、プロメテウス隊VSクーロン艦隊!
空を裂く閃光が走る。
直後、グロームの巨体が、頭部から尾部まで、寸分の狂いもなく上下に両断された。
「な、う、うわぁあ!」
ドゴォオオン!
真っ二つに両断されたグロームは、リアクターの誘爆とともに火の玉と化した、
轟音を響かせながら、グロームだったものは、二つの巨大な鉄塊となって大気圏へと落下していく。
「や、やったーっ! グロームを撃破!」
「ギゼラさん、すごい!」
プロメテウスのブリッジは、歓喜の声に包まれた。
先程まで絶望的な状況だっただけに、クルーたちの喜びはひとしおだ。
レゴンは静かに安堵の息を漏らす。
「流石はウェイバー、いや、ギゼラだ。敵機動要塞を一撃で討ち取るとは……」
だが、安堵の時間はすぐに終わりを告げる。
~~~
プロメテウスの格納庫。
戦場への射出を待つコマンドスーツ、『ストラウス・ザ・ホークアイ』のコックピットの中で、パイロットのマティアス・クロイツァーは静かに呟いた。
「1度しか使えないリミッター解除を、もう使ってしまったか。仕方がない」
彼は、ウェイバーの奥の手であるリミッター解除の、真の危険性を理解していた。
だが、目の前の危機を乗り越えるためなら、やむを得ない判断だ。
「あとは、私がカバーしよう」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、頭上から強烈な光が煌めいた。
赤い荷電粒子の閃光が、プロメテウスに向けて放たれたのだ。
ドゴォオオオン!
艦全体に、激震が走る。
直撃───
と思われたその砲撃は、しかし、プロメテウスの甲板に立つ一機のコマンドスーツによって、間一髪で弾かれていた。
炎じみた紅蓮の機体、『ブレイズ・ザ・ビースト』だ。
「ぐぅ……重てぇなクソ!」
ブレイズのコックピット内で、パイロットの烈火・シュナイダーは冷や汗を拭う。
シールド越しにも伝わる衝撃波に、奥歯を噛み締めた。
『来たぞ! 敵艦だ!』
烈火の叫びが通信越しに響く。
~~~
ブリッジでは、艦長のレゴンが、オペレーターのヨウコから切迫した報告を受けていた。
「敵艦補足! 戦闘空母クーロンです! それに続いて、戦闘艦2隻、輸送艦2隻を確認!」
戦闘空母『クーロン』。
東武連邦の誇る巨大艦船であり、その火力は機動要塞グロームを上回る。
レゴンは一瞬の迷いもなく叫んだ。
「総員、第一種戦闘態勢! ブレイズとリベルタを出せ! ストラウスはイノセント部隊と合流し、艦を守れ!」
「了解!」
「メインリアクター、出力最大!」
クルーたちの勇ましい声が響き渡る。
「ブレイズ・ザ・ビースト、烈火・シュナイダー、出るぞ!」
ブレイズは猛然と甲板を蹴り、飛び出していく。
そのすぐ後ろを、白い『リベルタ・ザ・ターミガン』が続く。
パイロットの兎歌・ハーニッシュが、少し緊張した声を響かせた。
『烈火、援護するよ!』
二機のコマンドスーツの雄姿を見送りながら、マティアスはストラウスのライフルにE粒子を充填していく。
彼の役目は、艦の防衛だ。
キュウウーン───
入れ違いに、エネルギーを使い果たしたウェイバーが、格納庫へと戻ってくる。
リミッター解除によって膨大なエネルギーを消費したため、すぐにリチャージが必要な状態だ。
それを護るのが、イノセントたちの役目である。
『4番機、位置についた』
『8番機、異常なし、警戒を続ける』
周囲のイノセントたちが展開し、ウェイバーのリチャージが完了するまでの、わずかな隙をカバーする。
その間にも、艦は上昇を続けていた。
戦場は、すでに雲の層を遥かに超えていた。
プロメテウスの窓から見える空の色は、濃紺から、宇宙の黒へと薄っすらと変わり始めている。
その黒の中で、巨大な敵艦隊が待ち構えていた。
先頭を航行する戦闘空母クーロンの甲板から、無数の光が走り出す。
敵の迎撃機が、一斉に発艦したのだ。
〜〜〜
さて、一方、クーロンのブリッジ。
そこは、グローム撃破の報告によって混乱に陥っていた。
東武連邦の軍服に身を包んだ艦長、チェン・ジャンが報告を受ける。
『荷電粒子砲、着弾しましたが、効果、ありませんでした!』
『グロームとの通信、途絶! 戦闘空母、喪失と判断されます!』
『敵機、接近してきます。数2!』
次々と飛び交う切迫した状況報告に、チェン・ジャンの顔に焦りの色が浮かぶ。
仕掛けるタイミングは完璧だった。
クーロン艦隊は別働隊として、高高度からエリシオンを襲撃、グロームを筆頭とする火力で焼き尽くす。
そのはずだった。
だが、敵はそれを読んだかのように上昇。チェンジャンはそこへグロームを迎撃に出したのだ。
それが、やられた?
一機のコマンドスーツに、機動要塞を瞬殺されたという事実は、彼にとって信じがたいものだった。
「ふざけるな! たかが一機に……!」
チェン・ジャンは怒りに声を震わせながら、冷静に命令を下す。
「後方の敵は無視しろ! 接近する敵に、全火力を集中せよ!」
ブレイズとリベルタの二機は、敵の注意を引きつけ、プロメテウスから遠ざける役目を負っていた。
そうして今まさに、クーロンの主力部隊と激突しようとしている!
〜〜〜
宇宙空間と大気圏の境目。
E粒子スラスターを最大噴射させながら、ブレイズとリベルタは敵艦隊目掛けて前進する。
『敵機接近! ソークルが12、ファランクスが6、来るよ!』
リベルタのコックピットで、兎歌が緊張した声を上げた。
ソークルは東武連邦の飛行型コマンドスーツ。
ファランクスはノヴァ・ドミニオンの新型機であり、その性能は量産型ながら、並のイノセントを凌駕する。
烈火は、E粒子ライフルを素早く構えた。
「そこぉ!」
正確無比な射撃が、先頭を突っ切って接近してきたソークルを瞬時に撃ち抜く。
1機が爆散し、後続の部隊の動きが一瞬鈍った。
直後、反撃のミサイルが雨あられとブレイズ目掛けて降り注ぐ。
『やらせないよ!』
兎歌は叫び、トリガーを押し込んだ。
機体は右肩に装備されたE粒子キャノンを発射!
放たれた粒子弾は、拡散する光の雨となり、無数にばら撒かれる。
ドゴォオオオン!
ミサイルと粒子弾が空中で衝突し、空一面に爆炎が広がる。
ミサイルは1つ残らず消し飛んだ。
リベルタの圧倒的攻撃範囲がなせる技である。
だが……
その爆炎の向こうを睨みながら、烈火は本能的な危険を察知した。
『兎歌、合体するぞ!」
『え、もう!?』
予想外の命令に、兎歌は驚きの声を上げる。
だが、幼馴染である烈火の直感を信じ、即座に承諾した。
『了解! リベルタ、バックパック形態へ!』
白い鳥型の巨体が、瞬時に機体構造を変形させ、バックパック形態へと変わる。
『オッケー! ドッキング、いつでもイケるよ!』
その直後、ファランクス6機が一斉に荷電粒子砲を放つ!
黄色い粒子の奔流が、ブレイズ目掛けて撃ち込まれた。
ドゴォオオオン!
強烈な閃光が空を支配し、凄まじい爆発音がプロメテウスにまで届く。
その一撃は、大地を穿つほどの威力を秘めていた。
爆炎が収束していく。
しかし───
その中心には、無傷で仁王立ちするブレイズの姿があった。
リベルタがバックパックとして合体することで、ブレイズの出力は飛躍的に上昇。
合体によって増強されたシールドと、E粒子のコートが、ファランクスの一斉砲撃を完全に防ぎきったのだ。
ブレイズとリベルタの連携は、すでに完成されていた。
だが……
『各機、散開』
『『了解』』
無傷で敵の砲撃を耐え抜いたブレイズを見ても、ファランクスのパイロットたちは動揺しない。
彼らは速やかに散開。
そして、ブレイズを取り囲むように、包囲陣形を形成した。
その横を、小型のソークルたちが、高速でプロメテウス目掛けて突き抜けていく。
彼らの狙いは、後方にいるプロレスだ。
「……」
ブレイズの視線が、一瞬だけソークルへと向けられた。
ファランクスたちはその隙を逃すまいと、次々に荷電粒子砲を撃ち込む。
だが、烈火の反応速度がそれを上回る。
「食らうかよ!」
ブレイズは最小限の動きで砲撃を躱し、間合いを詰めていく。
『烈火! 背面、3時方向! 来るよ!』
リベルタのコックピットから、兎歌が冷静に情報を伝える。
その声に呼応するように、リベルタの脚部レールガンが火を噴いた!
「そこぉ!」
ズガァン!
背後にいたファランクスの脚部にレールガンが直撃!
強靭な装甲を持つその脚が、無残にもちぎれ飛んだ。
同時、ブレイズは左腕のマルチプルユニットをE粒子ブレード形態に展開していた。
紅蓮の光の刃が閃き、別のファランクスの胴体を両断する。
「オォオオオッ!」
乱戦の中、ブレイズの動きは一時も止まらない。
次々に敵機を撃破していくブレイズに対し、クーロンのブリッジから、新たな命令が下された。
「新型もこの程度か……。ならば、主砲発射用意!」
クーロンの艦首に搭載された荷電粒子砲が、ブレイズを狙うように照準を合わせる。
「巨艦の主砲による一撃だ。たとえ合体しようと、防ぎきれまい……!」
だが、その次の瞬間だった。
はるか後方のプロメテウスから、クーロンの主砲に負けない、眩い一条の光が放たれた。
その光は、正確無比な軌道を描き、クーロンの荷電粒子砲の砲門を、内側から貫いた。
ドガアアアアン!
凄まじい爆発と共に、クーロンの艦首が炎上する。




