迫る機動要塞! グロームVSウェイバー!
「さぁて、いくぜオラァ!!」
ルナは素早くサブマシンガンを抜くと、アズールに近づくシェンチアンに乱射!
水面近くにいたシェンチアンに直撃。そのまま爆発四散した!
だが、敵は次々に浮上し、アズールへと群がる。
数で妨害し、アズールに砲撃させないつもりなのだ。
それをさせないのが、ルナの役目である。
ルナは鋭い鉤爪を射出し、シェンチアンを切り裂く。
一機、また一機。ルナは止まらない。
「オラオラァ!」
バチィッ!
一機がルナに向かってきたところへ、脚部の粒子開放機が炸裂!
見事な回し蹴りで、敵のリアクターを粉砕する。
『っしゃあ! まとめてぶっ潰してやる!』
シャオの高笑いが通信に響く。
だが、敵も黙ってはいない。
水平線の彼方、ロンザイの砲塔が、不気味な光を放った。
ドゥウン!
極太の粒子ビームが、エリシオン艦隊を薙ぎ払う。
盾を構えていたイノセントたちだったが───
荷電粒子砲の破壊力の前に、なす術なく吹き飛ばされ、海へと沈んでいく。
東武連邦の技術も進歩しており、火力が向上しているのだ!
『くそっ、シャオ! カバー頼むぞ!』
『任せな! ゴウ、2発目早く撃てよ!』
戦場は混沌を極めていた。
アズールはなんとかまとわりつくシェンチアンを振りほどき、再チャージを狙う。
後方では、戦闘空母プロメテウスがゆっくりと上昇していくのが見えていた。
~~~
地下庭園の薄暗い制御室。
無数のモニターの光に照らされながら、ギンは冷ややかな視線を送っていた。
銀髪のポニーテールが揺れる。
「飽和ミサイル攻撃、これ見よがしの機動要塞、派手な砲撃……」
彼は口元に薄い笑みを浮かべた。
「その割に前進しない。下手な作戦だ。これじゃ『私は囮です』とバラしているようなものだよ」
ギンの指がキーボードを叩く。
新たな通信ウィンドウが開き、彼のアナウンスが戦場へ飛んだ。
『プロメテウスは護衛艦と合流し、このまま上昇せよ』
ギンの声は、氷のように冷静だった。
『上から来るぞ。気をつけろ』
~~~
視点はプロメテウスのブリッジへと移る。
プロメテウスは、いくつもの爆発の中、ドックを超え、上昇している所だ。
そんな中、指令を受けたレゴン艦長は、弾かれたように顔を上げた。
「全艦、上昇を食度を上げろ! 2番、3番スラスターも起動、護衛艦と合流する!」
彼は脂汗を拭いながら叫ぶ。
「ぶつかるなよ、慎重にだぞ!」
「「了解!」」
プロメテウスの粒子推進器が唸りを上げ、巨体はゆっくりと空へ向かって上昇を始めた。
その横を守るように、上昇してきた2隻の護衛艦が並ぶ。
イノセントたちが配備され、粒子砲やレールガンで武装した、戦闘空母2隻。
エリシオンの艦隊は、上へ上へと昇っていく。
そしてついに、艦体は分厚い雲海を突き抜けた。
オォオオオオ───
高度計の数字が、目まぐるしい勢いで上昇していく。
プロメテウスを取り囲んでいた厚い雲の層が、足元へと遠ざかっていった。
視界が一気に開ける。
そこには、どこまでも広がる濃紺の空と、緩やかに弧を描く水平線があった。
地球の丸みを感じさせるその光景は、戦場であることを忘れさせるほどに美しい。
だが、その静寂は唐突な叫びによって切り裂かれた。
「上方に大型熱源反応! 機動要塞です!」
オペレーター席で、ヨウコが悲鳴に近い声を上げる。
その豊かな胸が、激しい呼吸に合わせて波打った。
だが、誰もそれに目を向ける余裕などない。
ズガガガガガッ!
直後、天から鉄の雨が降り注いだ。
超高速で撃ち出されたレールガンの弾丸だ。
その一撃一撃が、音速を超えて空気を切り裂き、プロメテウスの周囲を展開していたイノセントたちへと襲いかかる。
「う、うわぁあああ!」
悲痛な叫びと共に、直撃を受けたイノセントが2機、瞬く間に火球へと変わった。
展開していたシールドごと、装甲を紙切れのように貫かれたのだ。
ドゴォオオオン!
凄まじい衝撃音が響き、プロメテウスの左舷側を航行していた護衛艦からも、黒煙が噴き上がった。
レールガンの直撃を受け、甲板の一部が抉り取られている。
「被害甚大! 第2護衛艦、被弾しました!」
「識別確認! 機動要塞、グロームです!」
ヨウコの報告に、艦長のレゴンはモニターを睨みつける。
頭上、太陽の光を遮るようにして、巨大な影が舞い降りてきた。
それは、伝説に語られる飛竜のようなシルエットを持っていた。
全長約100メートル。
機動要塞らしい白い巨体は、巨大なリアクターによってリパルサーリフトを駆動させ、重力など存在しないかのように空を支配している。
その翼の下には四連装のレールガンが吊り下げられ、機首には凶悪な光を放つ荷電粒子砲が鎌首をもたげていた。
「くっ、待ち伏せか……!」
レゴンが呻く。
敵は上昇してくる無防備な瞬間を、狙っていたのだ。
完璧なタイミング。チェンジャンの策である。
グロームが再びレールガンの砲門を開く。
狙いは、旗艦であるプロメテウスだ。
その時だった。
黒煙を上げていた第2護衛艦が、プロメテウスの進路を塞ぐように斜め前方へと躍り出た。
「なっ!?」
レゴンが息を呑む。
通信パネルから、護衛艦艦長の決死の声が響いた。
『ここは我々が! プロメテウスは先へ進んでください!』
傷ついた船体で盾となり、残ったイノセントたちが必死に弾幕を張る。
だが、上空からの圧倒的な火力差は覆しようがない。
盾となったイノセントが、また1機、空中で爆散した。
「7番機ロスト!」
「ぐぅ……ッ!」
鉄屑となって散っていく仲間の姿に、誰もが歯噛みした瞬間――。
『バカなこと言うんじゃないよ!』
通信回線全体を震わせるような、女の怒鳴り声が響き渡った。
直後、プロメテウスのカタパルトから、一機の影が飛び出した。
流線型のフォルムを持つ可変機、ウェイバー・ザ・スカイホエールだ。
ウェイバーは瞬時に加速すると、護衛艦の前に割り込むようにして上昇していく。
『命を粗末にするんじゃないよ! アンタたちにも、待ってる家族や故郷があるんだろ!』
メインパイロット、ギゼラ・シュトルムの怒号と共に、ウェイバーの背部ウェポンユニットが火を噴いた。
無数のミサイルが、天を覆うグロームへと吸い込まれていく。
ウェイバーが放ったミサイルは、グロームの分厚い装甲と、展開されたシールドに直撃。
だが、機動要塞の巨体を揺らすには至らない。
ウェイバーは、ミサイルの爆炎を突破し、飛行形態のままさらなる加速を加える。
上空からは、レールガンの雨と、無数の機銃掃射。
弾幕が降り注いできた!
ズガガガガッ!
しかし、ウェイバーはそのすべてを、驚異的な機動性で紙一重で躱していく。
それはまるで、重力など存在しないかのような動き。
機体へと迫る弾丸の軌道を予測し、必要最低限の動作で回避を続ける───
まさに、神業のような操縦技術だった。
「ダメです、当たりません!」
「馬鹿な……、バケモノか!?」
グロームのブリッジでは、クルーたちが驚愕に声を上げていた。
モニターには、高速で迫りくるウェイバーの機影が映し出されている。
『敵機、異常な機動力で接近中! この速度は、常識ではありえません!』
司令官席に座る、顔に深い傷を持つ男が、ウェイバーを睨みつける。
機動要塞の司令官だ。
「所詮は小型機。しかし、しつこいな。機首の開口部を開放しろ。至近距離より荷電粒子砲を撃ち込め!」
司令官は舌打ちとともに命令を下す。
ウェイバーは間合いを一気に詰め、グロームへと迫っていた。
その瞬間、竜の頭のような形状をしていた機動要塞の機首が、ガクリと曲がる。
そして、その口が開くように、巨大な砲門が姿を現した。
リアクターから供給されたE粒子が、砲門に収束していく。
深紅の光が凝縮され、凄まじい熱量を伴ってウェイバーへと放たれた。
ドゴォオオオン!
空気を焼き尽くす一筋の光が直撃し、凄まじい爆炎が空中に咲いた。
プロメテウスのブリッジで、レゴンとヨウコが息を呑む。
「ギゼラッ!」
「ギゼラさん!」
だが、その叫びも空しく響いた直後───
爆炎の中から、一機の影が現れた。
それは、飛行形態ではなく、人型へと変形したウェイバーだった。
ウェイバーは、左腕に展開した大型シールドと、機体全体に纏ったE粒子コートによって、荷電粒子砲の直撃を無傷で受け止めていたのだ。
『リミッター解除、本気でいくよ!』
通信回線に乗せて、ギゼラの宣言が響き渡る。
ギゼラの指が、リミッター解除のスイッチを押し込む。
それは、機体の限界を引き出す、禁断のスイッチ!
途端、ウェイバーの全身から、それまでとは比較にならないほど強大な、眩いE粒子の光が噴き出した。
大型プラズマリアクターのリミッターを外したことによる、圧倒的な出力上昇。
シールドの耐久性は飛躍的に上昇し、グロームのレールガン攻撃など、もはや掠り傷にもならない。
ウェイバーは体勢を崩すことなく、巨体の上を滑るように機動。
そして、右腕の粒子キャノン砲を真横へ突き出した。
だが、それは砲撃ではなかった。
迸るのは、ウェイバー本体よりも遥かに巨大な、純粋なE粒子の塊。
それが、刀のような形状を成して、一瞬で収束したのだ。
リミッター解除によって、短時間だけ使用を許された、ウェイバー必殺の大技である。
「この一撃で……沈んどきな!」
ギゼラの咆哮と共に、ウェイバーはグロームの巨体を切り裂くように、その粒子の刃を振りぬいた。
ズバァアアアアン!
空を裂く閃光が走る。
直後、グロームの巨体が、頭部から尾部まで、寸分の狂いもなく上下に両断された。




