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開戦! 機動要塞アズールVS連邦艦隊

 再び、セレーナの声が響く。


『我々は試練に直面しています。

 しかし、決して一人ではありません!

 皆さんの力が、この国の未来を守るのです!』



 その時である。

 ドオォオオンッ!!

 遠雷のような音が、大気を震わせた。

 ついに、東武連邦の艦隊が境界線を越えたのだ。


 ゴウがゆっくりと立ち上がる。


「……来たな」

「よおし、ゴウ! 派手に暴れるぞ!」


 シャオも立ち上がり、好戦的な笑みを浮かべた。


「ほどほどにな。生きてこそだぞ」

「分かってるって!」


 そんな様子を見ながら、ゲイルもまた、無言で立ち上がった。


「……」

「ゲイルさん、わたしも……準備します!」


 シホが慌てて後を追う。


「遅れるなよ、シホ。戦場は待たん」

「はいっ!」


 広場の軍人たちが一斉に動き出す。

 ブーツの音が激しく地面を叩き、怒号が飛び交い始めた。


〜〜〜


 一方、その熱狂から離れた地下深く。

 薄暗い庵で、ギンはモニターを見つめていた。


 ポニーテールに束ねた銀髪が揺れる。

 モニターには、偵察映像、部隊のシグナル、天候、海流、そのたあらゆる映像が表示されている。

 その中には、セレーナを映すモニターもあった。


「ふふ、セレーナ。いい演説だ」


 ギンは口元に薄い笑みを浮かべ、キーボードを叩いた。

 操作に応じ、敵艦隊の配置図と戦況データが次々と表示されていく。


「兵士たちの士気は十分。あとは……」


 ギンの瞳が鋭く光る。


「東武連邦の大艦隊か。……この日のために、数頼みの軍隊に負けないだけの科学を築いてきたんだ。ここで仕留めさせてもらおう」


 ギンの頭の中で、戦場の盤面が目まぐるしく組み替えられていく。


 その時である。


 ズゥン……。

 低く響く振動が、地下庭園の静寂を破った。

 いよいよ、敵が目前まで迫っているのだ。


「100年かけた、その集大成。今こそお見せしようじゃないか」


 そう言ってギンは、牙を剥いて笑う。


〜〜〜


 演説からしばらくして。

 巨大なドック内は、金属の軋む音と整備員たちの怒号でごった返していた。


「弾薬積み込み、急いでやー! 時間あらへんぞ!」


 橙色の髪をお団子にした整備主任……菊花・メックロードの声が響き渡る。

 彼女は額のゴーグルを押し上げ、ツナギの胸元を揺らしながら、作業員たちを急き立てた。


「ほらほら、トロトロせんといて!」


 ガシャン! ガコン!

 小型の作業用コマンドスーツが走り回り、プロメテウスのハッチへ、次々と弾薬パックや燃料タンクを運び込んでいく。


 火花が散り、油と鉄の匂いが鼻をつく。

 そんな喧騒の中を、赤い髪の少年が駆け抜けてきた。


「行くぞ、兎歌! 今回は派手にぶちかます!」


 烈火・シュナイダーだ。

 彼は目を輝かせ、プロメテウスへと飛び込んでいく。


「もー、烈火! また無茶しないでよね!」


 その後ろを、桜色の髪の少女、兎歌・ハーニッシュが追いかける。

 走るたびに揺れる、豊満な胸。

 彼女はヘルメットの下で愛らしい顔をしかめ、焦ったように声を上げた。


 その後方から、落ち着いた足取りで二人の男女が続く。


「あれあれ、相変わらず元気だねぇ」


 金髪をかき上げ、ニヤリと笑うのはギゼラ・シュトルム。


「予定通りだ。遅れず行こうじゃないか」


 銀髪の紳士、マティアス・クロイツァーが静かに答える。

 四人はそれぞれの愛機――

 ブレイズ、リリエル、ストラウス、ウェイバー……へと乗り込んでいった。


~~~


 艦橋では、艦長のレゴン・オリエンタルがモニターを睨みつけていた。

 痩せぎすの体は小刻みに震え、額には脂汗が浮かんでいる。

 だが、その目には確かな決意が宿っていた。


 ウィイイィーン!

 甲高いサイレンが鳴り響く。


『全システム、戦闘態勢へ移行。プロメテウス、発進準備完了』


 電子音声のアナウンスが流れると同時に、海に面したドックのプールでも動きがあった。

 巨大なシャッターが、重々しい音を立てて開く。


 ズゥウン……。


 水面が割れ、現れたのは深海魚のような巨体。

 エリシオンが誇る機動要塞『アズール・ザ・リヴァイアサン』だ。


 超大型プラズマリアクターの重低音が海を震わせ、その背中には、黒い人狼のようなコマンドスーツ『ルナ・ザ・ウルフファング』がちょこんと乗っている。


 さて、アズールの広々としたコックピットへ視点は移る。

 特大の座席にどっしりと腰を下ろした巨漢、ゴウは、ゆったりと自身をアニムスキャナーに接続していた。


「システム、オールグリーン。センサー感度良好」

「プラズマリアクター臨界到達」

「ん、了解」


 オペレーターの報告に、ゴウは間延びした声で答える。


「よぉし、出港だ。連邦のヤツらをぶっ飛ばすぞー」


 その気の抜けた号令に、通信パネルの向こうから呆れたような声が飛んできた。


『ゴウ、だっるい声出すなよ! もっと気合い入れろって!』


 シャオの怒ったような声が、通信越しに響いた。


「ハハ、悪い悪い。シャオも暴れすぎるなよ?」

『へいへい』


 ゴウは苦笑しながら肩をすくめた。

 と、その時───


 ドドドン! ドゴォオン!

 ドックの上空で爆発音が轟いた。

 飛来したミサイルが、迎撃されたのだ。


 基地の各所に配備された量産型ストラウスが、正確無比な粒子ビームでミサイルを撃ち落としていく。

 空には黒煙の花が無数に咲いた。


 対空防衛用に、ストラウスは量産されていたのだ。

 その狙撃性能は高く、超音速のミサイルでも抜け目なく撃ち抜く。


「よし、今だ! プロメテウス、発進!」


 ドックの屋根が開くと同時に、レゴン艦長は声を張り上げた。


「び、微速上昇だぞ! 屋根を超えるまで速度は出すなよ、ぶつかるからな!」

「「了解!」」


 クルーたちの勇ましい返答と共に、プロメテウスの巨体が浮上を始めた。

 格納庫の中では、烈火たちの機体がそれぞれの瞳を光らせ、出撃の時を待つ。


 眼下では、機動要塞アズールも波を切り裂いて進軍を開始していた。

 深海魚のような巨体は、ルナを背に乗せ、大海原へと乗り出していく。


 激突の時が、目の前まで迫っていた。


〜〜〜


 さて、一方の東武連邦。

 旗艦『シャーヘイ』を中心とした大艦隊を組み、ゆっくりと前進していた。


 大型空母、戦闘艦、ミサイル艦、輸送艦……様々な艦が並び、甲板には無数の水中用、上陸作戦用のコマンドスーツたち。

 空には有に100を超える戦闘機や、飛行型コマンドスーツが飛び交い、空を黒く染めていた。


 さて、シャーヘイの艦橋を見てみよう。

 そこでは、司令官が報告を聞いて顔を歪めていた。


「ミサイル90%以上迎撃されました! エリシオンの防空網、予想以上の精度です!」

「チッ」


 思わず司令官は舌打ちする。

 しかし、物量の優位は、この程度では揺らがない!


「フン、小賢しい! ならば力で押し潰すまでだ!」


 司令官が吼える。

 同時に、敵接近の報告が届いた!


「敵艦隊、補足。射程圏内に入りました!」

「良いだろう。ソユーズ隊、スヴォーロフ隊へ入電。砲撃戦を開始せよ!」


 司令官の命令を受け、前衛の艦たちは一斉に砲塔を向ける。

 そして次の瞬間───

 無数の砲塔が、一斉に火を噴いた。


 爆音、衝撃、そして閃光!

 高速弾と電磁砲弾の嵐が、エリシオン艦隊を襲う。


「防げぇっ!」


 対するは、エリシオンの量産型コマンドスーツ『イノセント』たち!

 小型空母の甲板に並ぶイノセントたちは、巨大なシールドを構えて前に出る。


 キィン! ガガッ!

 激しい火花が散る。

 シールド表面の粒子コートが砲弾を弾き返し、イノセントたちは一歩も引かずに耐え抜いた。


 海上防衛隊のイノセントは特別仕様。

 その盾は、レールガンの直撃すら通さない。

 この日のために作られたコマンドスーツたちは、その役目を果たし、誇らしげだ。


 と、その守りの中心で、海面が大きく盛り上がった。

 ズゥウウン……!


 機動要塞アズールが、ぬうっとその巨体を現す。

 全長60メートル。戦艦と比べれば小さな機体だが、その出力、粒子生成能力は比類なき領域にある。


「よぉし、アズール、フルパワーだ。ぶっ放すぞ!」


 ゴウの声と共に、アズールの巨大な口が開いた。

 空気が歪み、青白い光が収束していく。

 そして、


 ドゴォオオオン!!

 放たれた荷電粒子の奔流が、海を裂いて直進した。


 狙われたのは、東武連邦の機動要塞『ロンザイ』の一機。

 分厚い装甲は飴細工のように溶け、次の瞬間、凄まじい轟音と共に爆散した。


 鉄壁の重装甲も、防護フィールドも、超大型プラズマリアクターのもたらす破壊力の前に、あまりにも無力!

 爆散したロンザイは鉄くずと化し、海へと還っていく。


「目標に着弾。敵、機動要塞、撃破! やりましたよ!」

「いや、まだだ! 2発目行くぞ!」


 ゴウが次弾のチャージを始めようとした、その時───

 海中から飛び出したのは、無数の影。


 深緑色のコマンドスーツ『シェンチアン』の部隊だ。

 砲撃による電磁の乱れに紛れ、アズールの直下まで侵攻していたのだ。


「囲まれたか!」

『やらせるかよ!』


 ルナから、シャオの叫び声が響いてくる。

 一秒後、黒い人狼がアズールの背を蹴って跳躍した。


「さぁて、いくぜオラァ!!」


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