夢で過ごした時間
---
「夢で過ごした時間」
急だが私は今日から新人として働くメイドらしい。疑問に思いながら私はそこにあったメイド服に着替え、人が沢山いるホールに集まった。するとそこにはお喋りをしている女子達と怒って説教しているきつそうな女の人がいた。見た目で判断して失礼だが仲良くできないタイプだと思い、関わりたくないなと思ってしまったことが後々、後悔することになるとは知らずに…。
そんなとき、急にリーダーらしき人が現れその場はシーンと静かになりその人が口を開いた。
ーペアを作ってくださいー
その言葉から周りを見渡してみるとペアを作るメイド達がいて、笑顔で仲良くしているのをただじーっと眺めていた。気づいた時には、私はもう一人ぼっちだった。一人ぼっちには慣れっ子だったが自分も作らないといけない周りの目線を感じて、一応焦って探してみるとたった1人組んでいないメイドさんがいた。あのきつそうなメイドさんと私だけが孤立している…
すると、メイドさんがこっちに近付いてきた。私は困惑してパニック状態にはなったが冷静な人間なのでなんとか落ち着きを取り戻した。
メイドさんが目の前に、いい距離感を持ちながら立っていた。よく見てみると彼女はお団子結びにした濃い青い髪に、目元の近くには可愛らしいほくろがあった。美人で綺麗な人だと思い、可愛いなと思ったが口には出さず心にしまっておこう。
ーペアが決まりましたねー
その後、清掃場所を伝えられ皆が移動する。
するとメイドさんが突然私の手を掴んできた。私が驚いてびっくりしていると、こちらの様子見て無表情な彼女は私の手を強く握って口を開いた。
「あなたはもう一人ぼっちじゃないわ」
その一言に、私はなんだか救われたような気がした。私の手を握る彼女の手のぬくもりが、まるで心を包み込んでくれるようなそんな温かさを感じた気がした。
「一緒に行きましょう。」
そう言うと彼女は私を引っ張っていき、階段を上っていった。階段をひたすら上っていると、また喋り声が聞こえてきた。彼女はそんな人たちを見つけ次第、怒ってきつい説教をしていた。私は厳しい子だな…そんくらい許してあげればいいのにとか、そんな事を考えながら、彼女の説教している姿を眺めていると…彼女がこちらに気づいた。
見られていることが不快に感じたのかもしれないと思って謝ろうとしたら、彼女は私を怖がらしてしまったと思ったのか、説教中でも彼女はずっと私の手を離さず握っていたのに、握る手を安心させるように優しくさらに強く握ってきたのを嬉しいと感じてしまう素直で純粋な可愛らしい自分がいた。その後、口元が緩んでいることに気づき、また顔に出ないよう必死になってもとに戻した。
そろそろ説教をし終えたっぽいので区切りのいいところで「…そんなに怒らなくてもいいんじゃないかな?」と私は責めてると感じさせないように優しくうまくできない笑顔でそう伝えてしまった。
そしたら、反応がなく心配になり彼女の様子を伺おうとしようとしたが、彼女はただ黙って私の手をさらに強く握るままだった。
そんな彼女が振り返って私を見て言った。
「私は、貴方のお友達だから。」
泣き出しそうな表情をして優しく微笑んで言った。その言葉を聞いた私は心がじんわりと温かくなってとても嬉しく感じた。お友達というその言葉に幸せを感じていた。
そして、私は目が覚めた。
夢だった。そう夢だったのだ。
夢の中で過ごしたあの時間は探しても、もうどこにもない。泣いて願ったってもう一度寝ようたって、もう会うことができないらしい。段々と、目が冷めてくる。そこには時計の針がチクタクと部屋に響いて動き出す静かな現実だけがあった。そんな現実が彼女との時間は終わりを告げる音にもきこえた。
夢の中で出会った彼女は、もう会うことはできないかもしれないけれど、私が忘れない限りは、彼女は私の思い出の中で生き続けてくれるだろう。
彼女との思い出を大切に大事にしてこの先にある動き出しているこの辛い現実を''まだ''耐えていくことにしよう。感謝してるよ
「…ありがとうメイドさん」
---