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ニート更生人西園寺君子

転生しないで、「女性だけの街」に行ったニートの話

作者: 山田 勝

 私は婚活中、権田町子、42歳、家事手伝いよ。


「町子・・・お見合いどうだった」

「ああ、母さん。ダメね。年収低すぎ。この前なんて、年収500万円の男が来たわ」


「そう・・」


「でね。女だけの街を作ろうとSNSで盛り上がっているの。日本のオスはダメね」


「グスン、そうなのね」


「じゃあ、ちょっと、東京に行ってくるわ」



 東京で推し活をしてきたわ。

 帰ったら、家のドアが開かない。鍵が変えられたようだ。


「あら、鍵が開かないわ。どうしたのかしら・・・え、張り紙がある。ここは西園寺不動産が管理しています・・・お問い合わせはこちらに・・まあ、市外?お母さん。車出して・・っていないわね」



 電話で問い合わせて、バス、電車の乗り継ぎをして、やっと、西園寺不動産までついた。

私は少しぽっちゃりしている。最近歩くのも大変なのに。お母さん。後で文句を言ってやるわ。



「ちょっと、どういう事?」


 まあ、20代後半ぐらいのセミロングの女が対応してくれた。スーツを着て下はスカートに黒のストッキング、名誉男性みたいだ。気に食わないわ。


「説明します。貴方のお父様は定年退職を迎えて、老後は新生活をしたいと家をお売りになり。その資金で当社の物件を買って頂きました」


「まあ、教えなさい。婚活費用は振り込んでくるのでしょね。どこに住めばいいの?」

「ですから、今年、お父様が定年退職をして、娘様に月10万円の家事労働費を払う余裕はなくなりました」


「あの家は私が相続する予定よ!」

「ですから、あの家はご両親のものです。生前どのように処分しても自由です」


 ラチが空かないわ。名誉男性なので意識低い。だから教えてあげたの。


「あのね。主婦の労働は年収1100万円に相当するのよ!私は母さんの手伝いをしたから年収550万円の女よ!それを月10万で働いているのよ。みくびらないで!」


「へえ・・・」



 私は西園寺君子、地元密着型のグループ企業よ。今日は女のニートがらみの物件の対応ですの。


 こういった方はプライドが高いですわ。そうですね。


「お母様から聞いていますわ。「女性だけの街」を作ろうとしているとか・・・」

「ええ、そうよ。あったら住みたいわ!」


「それなら、良い方を紹介しますわ。『女性だけの街を作ろう会』代表の明智女史よ」


 奥から女性が出て来たわ。私と同じ年齢?痩せている。若いときは私の方が美人だったわ。地味ね。


 名刺を出したわ。


「私、東京で社会保険労務士をしている明智光子と申します『女性だけの街を作ろう会』の代表です」


「はい・・そんな団体、SNSで聞いた事ありません」


「当然です。治安の問題があります。宣伝したらよからぬ男性や犯罪者に狙われます。ひっそりとやるものです。まずはスモールスタートで実践しています」


「そ・・・そんな。でも、確かに言ったけど、オスがいなければ、夜一人でコンビニにいけるよねとか、そんな程度の言葉です」


「ゴホン、はっきり言います。貴方の婚活市場では無職の40女の価値は0円です。そして、労働市場でも正社員で採用する所はありませんわ!」


「そんなこと・・」


「ですから、私の『女性だけの街』では正社員で雇用可能です。行きますか?」


「行かないと言ったら・・・」


「分かりました。でしたら、貴方はこのままお好きな所に行って下さい」


 結局、契約書にサインをして行くことにした。




 ☆☆☆市内某所


 何よ。ここ、廃村じゃない。女だけで32人いるって。


「西田さん。新入りです。お願いしますね」


「はい、明智女史分かりました」


「私は西園寺不動産の社員です。新人担当をしています。農業指導をします。ここは農場です」


「え、私、農作業をした事ありません」

「なら、今からだ」


 私は作業着に着替えさせられた。

 生意気、若いわね。まあ、女なのにツナギを着ているわ。20代前半かしら、ショートカットで男がやる仕事をやっているアピール。名誉男性ね。それに年上を敬う気がないわね。


「いいか。まず。この小型耕運機がお前の相棒だ。挨拶しろ!」


 な、お前?モラハラだわ。こいつやっぱり名誉男性ね。簡単じゃない。

 このヒモを引っ張ってればいいのね。


 ヒモを手にとったら、


 バチン!


 頬を殴られた。


「ウグ、ひどい・・・訴えますわ!」


「バカ野郎、危険行為をしたから正当防衛で止めた!しっかり抑えないと暴走するぞ!言われた事以外するな!挨拶をしろと言った!」



 ・・・・


 グスン、グスン・・・・


 寮は分校だったらしい。共同生活だ。


 仲間は教養のない遠慮のない奴らばかりだ。


「オメーよ。太りすぎ。痩せないと死ぬぞ?」

「失礼だわ!」

「いや、マジ忠告だぜ。ここは病院から遠い。皆、健康に気を使っているぜ。教室の一つがジムになっている。トレーニング器具がある。一緒に行こうぜ」


「いいです!」


 私は20代のころは港区で高級外車に乗った事があるのよ!こいつらとは違う。


 なのに。

 ここは免許を持っている者が威張っている。


「おう、ボンクラども、ここから10キロ先のコンビニに行くからよ。乗りたい者はいるか?」


「「「「はい!はい!はい!」」」


 軽ボックスを持っているお米婆さんと。

 軽乗用車を持っている私に無礼な口を利いたヤンキーだ。


「おう、町子さん。ドラッグストアいかね?ナプキンの買い出しに行くんだ。ついでにコーラーでも飲もうぜ。おごってやる」


「私はいいですわ!」




 仕事も免許を持っている者が偉い。


「あの、町子さん。私のコンバインの手元作業をして下さい。イモを籠につめて下さい」


「・・・分かりました」


 あいつは、大型特殊を持っているから、コンバインというのに乗って作業をしている。

 なのに私は泥まみれだ。


「はあ、はあ、疲れた。もう、動けない」

「町子さん。私がやってあげるから少し休みなさいよ」


 気が利くわね。

 しかし、すぐに、この子もお呼びかかかった。


「鈴木さん。ここは権田さんに任せて、玉掛け作業をして下さいね」

「はい、町子さん。ごめん」


「え、これを一人で・・・」


 玉掛け作業と言っても、クレーンに荷物を掛けるだけだ。


「あ、この籠、危ないです。崩れます。あの町子さん。面倒ですけども籠のこの線までイモがいっぱいになったら、新しい籠に入れてね」


 年下に注意される始末だ。


 スマホは電波が届かない。

 監禁されているに違いないわ。

 そうだわ。

 真の男性に迎えに来てもらうか、SNSサイトの仲間に窮状を訴えて、助けてもらおう。


「車に乗せて下さい!」

「いいけどよ。今日は米の積み込みあるんだよ。手伝ってもらうけどいいかい?」

「いいから!」



 地元の米屋さんにいった。



「ほお、米の値段が上がっている。という事は俺らの作ったイモとか高く売れないかな」


「さあ、どうだろうね。ところで連れのおばちゃん。積み込みを手伝わないで、スマホイジっているぞ」


「・・・う~ん。まあ、いいか。俺っちが一人でやるよ」

「うんにゃ、ワシも手伝う」


 私は店の側で、スマホに書き込みをする。


 婚活サイト、いや、マッチングアプリでもいいわ。

 年収500万円以上、30代でも可としておいたわ。

 私はまだ30代で少しぽっちゃりで登録する。


 そして、いつものSNSの仲間に窮状を訴えたわ。


 これで、炎上して、私はヒロインよ。



 それから、初の給料日になった。



「え、これだけ。7万円!」


 さすがに文句を言った。今日は明智が来ている。


「はい、法令通りです。最低時給に寮費食費社会保険を引かせてもらいました。週休二日で祝日も休みですよね。それに何日か休みましたね」


「そんな・・・でもこんなに取られるなんて」


「貴方、今まで年金は払っていましたか?」

「分からないわ。親が払っていたのよ」


 分からないわ。こんなに多く引かれて・・・


「それなら、事務仕事をさせて下さい!」


「・・いいわ。やってみなさい」



 ・・・・


「え、ブラインドタッチできないのですか?」


 若い子に指導され。


「・・・無理ね。ここは年配の方を事務員として育てる余裕はないの」


 明智はそう言う。

 見てないさい。今ごろ、炎上しているわ!私にはコンタクトが沢山来ているに違いない。


 チャンスはすぐに来た。



「給料日後の休日だから皆で健康センターに行きましょう。自由時間もありますよ!」


「「「「やったー!」」」



 あの西田という女がマイクロバスを運転する。


 街に出て、皆は温泉に夢中だけど。私はスマホを見た。


 婚活サイト、マッチングアプリは・・・0件・・・ぽっちゃりよ。オスどもに需要はあるはずだわ。


 SNSは?


 ‘’それ嘘松’’

 ‘‘マッチーさん。女だけの街って本気にしていたの?ウケる~’’

 ‘‘それはジャッポスが作ってみろよと言っただけ。発信はジャッポスだよ’‘



 もうどうでも良くなった。


「なあ、町子さん。温泉行かないの?宴会7時からだべ。何か重大発表があるって言っていたから遅れないように」


「分かっているわよ!」



 また、アイドルを愛でる生活をしたいわね。

 キラキラした生活・・・あら、キラキラ光る看板があるわ。あれはパチンコ店。

 もしかして。



「さあ、当店は珍しい等価交換だよ。4パチだよ!」


 促されるままに店に入った。


「「「スゲー姉ちゃん大当たりだ!」」」


 え、運は見捨てていなかった。お金が倍になったかしら。


 もうすぐ7時ね・・・・


 私はそのまま逃げた。

 近くのホテルに泊まって、明日どうするか明日考えよう。





 ☆☆☆健康センター宴会所


「え~、皆様に重大発表です。女性だけの街に技術提供をして下さる西田耕吉さんです。イチゴ栽培のノウハウを伝授して下さるそうです」


「え、イチゴ!」


「決して楽ではありませんが、なによりも高く売れます。そのほか、地元の農家さんたちに逐次技術の提供をお願いする予定です」


「あ~、ワシについて来いや!」


「キャー!お爺ちゃん可愛い-」

「ウケる~!」


「可愛いじゃと!婆さんに嫉妬されるのじゃ」

「「「ハハハハハハ」」」


 ・・・フウ、私、明智は社会保険労務士の仕事をしているうちに、仕事で、DVや放置子問題も直面してきた。邪な男性に狙われる女性が多い事に気がついた。


 なので、シェルターとして

 女性だけの街を作る事を思い付いた。

 しかし、過去、ウーマンリブ運動では失敗している。


 だから、失敗した原因を究明し。地元の方の協力が不可欠とこの8年間運動をしてきた。


 やっと日の目を見る。


「これから、Wi-Fiを引きますし。希望者には免許の取得の補助金を出します。何より、これから皆様の頑張り次第で、給料も増やせます!」



 そうだ、新人の権田さんには玉掛けを取ってもらおう。

 それから免許も取ってもらって・・・


「あら、権田さんは?」


「さあ、スマホイジっていたから、男でも出来たんじゃねえ?」


「まあ、そうなの、来る者拒まない。去る者追わずよ。幸せになるのならよかったわ」


 そうか、安心したわ。


 ピロロロ~


「あ、旦那からだわ。皆さん。失礼、楽しんでね」


「「「「はーい」」」



 ・・・・・・・



 数日後、健康センターの前でたたずむ太った中年の女がいた。

 その後、彼女はどこに行ったのかは定かではない。


最後までお読み頂き有難うございました。

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