6.1 異物君と小魔術師
時はルクアリアがフォレストウルフに美味しくいただかれる少し前に戻る
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「はぁ…これからどうなるんだろうか…」
小綺麗な部屋でこの俺、平井拓真はため息をついた。
少し、昨日の事を思い出す。
あの森林を抜けてすぐに見えた街に向かった俺は街に入る直前に衛兵に止められた、まぁ予想していたので予定通りに言い訳を言ったんだよな。
言ったことはこんな感じだ
・気がついたら森にいたので何とか脱出した
・何故森にいたかはわからない
・森に入る前までの記憶がない
まぁ最後は嘘ではあるが、この世界の常識とかわかんねぇし何かあった時は記憶喪失ってことで乗り切るつもりだからそう言った。
そこまではいいんだ、衛兵さんも困ってはいたが親身になって聞いてくれたし。
問題はその後、これからどうするかって聞かれたので拠点の確保と金を稼ぐつもりと伝えたのだがその際に拾った魔石を売りたいと伝えたのだ。
すると物によっては騎士団で買い取れるからと見せて欲しいと言われたので見せてみた。するとだ
「こ、これは…!!いや判断を急ぐのは良くない、失礼、これをお預かりしてもよろしいでしょうか?」
と言う感じにやや驚いていたのだがこちらとしても急いでるわけではないし、騎士団とか言ってたので多分公務員だしでとりあえず
「あ、はい、大丈夫です。どうぞ」
とまぁ、適当に返事をしてしまったんだよな。
それで通された個室で待ってたんだが、中々帰って来ない。盗まれたのか?と思ってたらなんか高そうな鎧を着てる人が来た。それでなんか提案をくれたんだよな。
聞かされたことを簡単にまとめると俺が拾って来たものが純魔石っていうものかもしれないらしく本物か詳しく調査するために数日間必要ってのと、連絡先が欲しい的な事を言われたんだ。
つっても今俺は金を持ってないし、行くところも無いのでどうにかならないかって言った結果とりあえず今いる個室で一晩は泊めてくれる事になった。
そしてその一晩経ったのが今日、俺は今後のことに悩まされていた
「俺は馬鹿だ…昨日のうちに今日の宿と今後の為の職場を探すのが最適だったじゃん…!いくら疲れてたからって何のうのうと寝てるんだよ!!」
この個室はそもそも住む場所ですら無いので長く貸すことは出来ないらしい、まぁ色々あった時のの待合室に使う場所だそうだから他にも人が利用するとか。
今は人がいないから借りられていただけだしな
なので火急の用として仕事を探す必要がある。
何だっけな…確か【知識】に俺みたいな人でもつける職があったはず……探索者だか冒険者だかそんな感じのやつ。
えーっと【知識】が言うにはギルド?とかがあるみたいだな、なんかゲームみたいだわ
にしても、この【知識】は思い出すのに少し時間がかかるっぽいな、単純に記憶しただけなのかもしれんがずっとこれが使えるか怪しいし過信はやめておこう。
「んじゃ、とりあえずギルドってとこに行ってみるかな」
そう言った俺は立ち上がり、個室の扉に手をかけた。
と、その時個室の扉が押し返される、内開きなので俺が押される形になるのだが突然の事で思わず尻餅をついてしまった。
「ここで待てば良いのよね?……え、何あんた?何でそんなとこで座り込んでんの?」
そう言ったのは俺と同じくらいの年齢に見える小さめの女の子、髪は肩より少し下ぐらいの長さで綺麗な空色のサラッとした髪で服は半袖のシャツに短パンで活発そうな印象を受ける。
外は寒そうだが大丈夫なのだろうか。
それに所々に巻いている包帯も気になるが、気にしない方がいいか。
ややつり目だが綺麗な顔をしており、さぞモテることだろう。
見惚れているとその少女の桜色の唇が開いた
「何ジロジロ見てんのよ…?っていうか通りたいからどいてくんない?あんた邪魔よ」
「あっ、ごめん!」
慌てて立ち上がって道を開ける。
少女はスタスタと歩いていき、椅子に座った。
「あの…」
「え、何?」
思わず話しかけてしまった、どうしよう何を言おう
「あっ、えっと、君はどうしてここに?」
「ここに通されて待ってるように言われたからだけど…?」
「そうだよな!はは…」
……コミュ障か俺は!!
正直タイプだったから緊張してしまったが、落ち着いて話しかけよう。
「すぅーー、ふぅ」
「?」
「君の名前を教えてくれないか?」
「ナンパ?」
「えっ、違っ……いや、ナンパだなこれ」
人との会話をしたいのが一つ、タイプなので仲良くなりたいのが一つ。
しゃあねぇじゃん!ドストライクだったし!
「変な人……いいわ、待ってる間暇だし話すだけなら良いわよ」
「まじ!?ありがとう!」
「はぁ…で、名前だっけ?アンナよ」
アンナさんか、良い名前だな
「よろしく、俺は拓真って言うんだ」
苗字は秘密にする。苗字があるとややこしいことになりそうだしな、【知識】には貴族とかがいるってあったし
「…タクマ?あんたがそうなの?」
「え?拓真だけどそれがどうかした?」
変な名前だったのだろうか、日本の名前は異世界基準では珍しいのかもしれない
「ねぇあんた、アリアって知ってる?」
「アリア?人の名前か?」
アリアどころか何も知らないがな、よくわからん
「人違い…?まぁいいわ、あんたが話を振ってきたんだからなんか面白い話しなさいよ」
そういうの困る、日本での事なら多少は話せるんだが。
修学旅行で学校に置いてかれたやつが自転車で無理やり合流してきた話とか。
「あー…すまん、俺記憶喪失ってやつらしくて昨日からの記憶しかないんだよ」
「えっ、ごめん…でもなるほど、それならアリアのこと知らなくても違和感ないか」
いやだから誰だよアリア、日本でもそんな名前の知り合いいねーよ。記憶喪失設定にしてるせいで言えないけどさ
「まぁそんなわけだから人と話をしたらなんか思い出すかもしれないから話をしたかっただけなんだよ、悪いな」
「そういうことだったのね、大変ねあんたも」
割とあっさり信じてもらえたな、初対面だからどうでも良いのかもしれないけど
「じゃあちょっと気になったから聞くけど、さっき何であんなとこに座り込んでたわけ?」
「あれはただ外に出ようとしてた時にちょうどきみが入って来たんで尻餅をついたんだよ」
「ふーん、で?何でまた外に?あんたもここにいるってことは何かの待ち時間なんじゃないの?」
「たまたま持ってた物を売りたいと見せたら鑑定に数日かかるそうなんだが俺は自分の家すらわからないし一文無しだから一晩泊めてもらってたんだ」
「なるほどね?それで今晩の宿とか職を探そうとしてたって感じ?」
「あぁ、探索者ならなれるかなって思っててな」
「探索者……」
なんか嫌そうな顔してる……探索者ってそんなにだめな職業なのか?
「もしかして探索者ってダメな感じなのか…?」
「そういうわけじゃないわ…今日探索者に酷い目に遭わされただけよ…」
すごい嫌そう…あまり突っ込まない方が良さそうだ
「それは災難だったな…とりあえず、探索者がなっても大丈夫そうな職ならなっておこうかと思うんだが……ギルドってとこに行けば良いんだよな?」
「そこから?…って記憶ないんだっけ、まぁそうよ、探索者ギルドに行けば簡単になれるわ。身分証とかが要らない分あの職は浮浪者ですらなれるから治安悪いし気をつけてね」
「お、おう」
「それと探索者ギルドは一応ずっと開いているけどちゃんと対応してもらいたいなら明るいうちに行くと良いわ、夜になるとまともな人間はあまり居なくなるから大体変なのに絡まれるわよ。…経験者からの忠告だからね」
「素直に受け入れる事にする、明るいうちにって話だしそろそろ俺は行く事にするよ。色々ありがとう、次に会う時は面白い話を沢山出来るようにしておくさ」
そう言ってひらひらと手を振りながらちょっとカッコつけて外に出ようとした
「ちょっと待って」
「ん?どうかしたか?」
「やっぱりあたしも行くわ、なんかあんたとはもう少し一緒にいた方が良い気がするし。アリアに面倒見るように頼まれたの多分あんただろうしね。」
「…俺としては助かるが、そっちもなんか待っている途中なんじゃないか?」
後アリアって誰だよ、すごく気になるんだが
「それは大丈夫、私これでも貴族だからね。用は家に引き継いでもらうわ」
「貴族だったのか!俺、不敬だったりする感じ…?」
「気にしないで良いわよ、長い付き合いになる気がするし」
「そっちが良いならいいんだが、んじゃあとりあえずギルドに行くか」
「そうね、ついでに私怨だけど文句も言ってやるわ」
「……ほどほどにな」
マジで何があったんだよ…
でもまぁ、一人でいるよりかは楽しくなりそうだ。
アリア視点だと人間の容姿に興味がないせいで描写出来ないんですよね、なんでそういう時はタクマくんとかアンナちゃんに任せようかと思います。
追記) 他者視点は◯.5の記載でしたが今後のことを考えて◯.1表記に変更しました
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