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異世界森精霊  作者: P223
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6 春を告げる鳥

おはようございますルクアリアです。

緑狼君に食べられてから三日ほどかな、経った訳だけどちらほらと冬眠から醒める子達が増えて来たように思える。


もう少ししたら探索者も浅層や上層にも増えてくるんじゃないかと思う。薬になる草などは夏から秋にかけて生えるからその辺りを狙う低位の探索者に関してはもっと後にならないと来ないだろうけどね


そうだ、季節についてなのだけどうちの世界の季節は異物君の世界と同じように春夏秋冬がある場所が殆どだ。

夏と冬しか無い場所もあるみたいだけど異物君の知識から察するに自転と公転?とやらが関係しているんだろうね。

うちの世界の人たちは多分知らない知識だよね?そもそも、宇宙もまだ行ってないと思う。


そして今の季節は春になって来たかなといったところ、冬眠していた動物も起きてき出して植物も新芽を生やしたりで新しい始まりを感じる時期だね。

そんな春を告げる鳥っていうものがいてね、今回はその鳥を探してみよう。


——————

————

——


私を生やして現在上層東部、春鳥(はるとり)君の痕跡を探して散歩中だ。

時期的にこの辺りに一度来るはずなんだがね、今回は魔力を使用する必要があるので使えるように設定している

春鳥君の探し方は少し手間がかかるが常に薄く広く魔力を発し続ける、その際に光の魔力と適合する様にしておくのが重要。

光の魔力は空中にも含まれているのでうっすらと光出すのだが……さて、見つけた。


「あったあった、これだ。」


強く光っている様に見える一枚の羽を拾う。

この羽が春鳥君の羽だ、光の魔力が多く含まれており、光魔法などに強く反応して光ることが一つ目の特徴。


そして発していた魔力を消してみる。


すると手に持っていた羽が消え失せた、ように見えるのだが正確には見えなくなるのだ。

なので常に魔力を発していなければいけなかったって事だね。


羽があるという事でちゃんと春鳥君が活動し始めている事が分かったので一安心。

今持っている羽で少しお遊びが出来るんだよね、人間の子供とか好きそうなやつ。


「ふぅー」


と、羽に息を吹きかける。その際に光魔法も息に乗せておくすると


くわわんっ♪


金属の円盤を平らな硬い面に落とした時のような音がする。しかして嫌な音ではなく綺麗な音なのだ。


それと同時に羽に含まれる魔力が反応して空中に小さな波紋のように虹が広がっていく。

そして、5m程広がったら虹は薄くなって消えてしまった。


これが、春鳥君の羽での遊び方。

特に効果は無いし、戦闘にも生活にも使える事はないのだけどこれはこれで良いのだ。


遊ぶのも良いけど春鳥君を探さないとね、夕方迄には見つけ出したいところ。多分今日のはずだから


今は大体昼頃だから後5時間程度がリミットかな?

…そういえば異物君の世界とうちの世界の単位似てるな、メートルとか時間とか。まぁ私としてはどうでもいいし、異物君も馴染むの楽そうだし良いことか。


とりあえず!羽が見つかったって事はここを通ったってわけだ、なら次行くべきはこの場所の近くにある春鳥君の餌場かな。


春鳥君は幼虫などの虫を食べる他木の実なども食べる雑食だ。

上層東部には小さな湖の周りに果実の木が大量になっている場所がある。もちろんそういった場所も一つではないのだけど、今回行く場所は探索者もあまり来ず、小さめの木の実がなっている場所なので春鳥君がいる可能性が高いのだ。



「というわけで来たわけだけど…?」


あっれぇ、一匹もいないぞ?春鳥君自体も羽と同じようにほぼ透明なので光の魔力を利用して探すのが良い、それで一応魔力を展開しているんだけど全く反応がない。間違えたかな?


木の実は既になっているようだけど食べられた痕跡は見つからないし春鳥君どころか羽すらも見つからないなぁ、原因はなんだろうか。


この辺りで可能性がありそうな生物だと…あ、あれか?空蛇くんことヨルムンガンドモドキ。

体長7〜8mもある大型の蛇なのだけどトビヘビのように少しとはいえ空を飛ぶことが出来る蛇だ、その姿を見た人間から伝説上の生き物であるヨルムンガンドと呼ばれていたのだが後に違うと発覚し後ろにモドキをつけられた経歴を持つ。


そんな蛇が確かこの辺に生息していたはず、冬眠から覚めていれば春鳥君の天敵になりうるからなぁ透明でも彼らがもつピット機関でバレてしまうし飛ぶ速度の遅い春鳥君では空蛇君から逃げるのが遅れたら食べられちゃうものね。


空蛇君がいるなら仕方ない、別の場所まで向かおう。

少し遠いけどまだ間に合うでしょ、目指すは上層東部のやや北辺りにある小さな崖。

(わたし)の中でも比較的高い場所にあるから予想が正しければきっと見えるはずだ。本当は近くで見たかったんだけどね、それはまた来年にしよう。


スタスタと崖の方まで歩いていると上層とはいえちらほらと探索者がいることがわかる。

見られたりしたら面倒だし下手すりゃ捕まるから鉢合わせないように隠れつつ進んで行く。見た目は15歳くらいの儚げな少女だからね私。夏ならもっとマシなんだけどな


折角なのでこの前に見つからないように慎重に情報がないか聞き耳を立ててみる


「じゃあこの————」


「春の精霊が————」


「そろそろ獲物————」


情報があるような、無いような。

特に聞いていても利点はなさそうなので離脱、そろそろ崖へ着く頃だ。


「と、いうわけで到着ーっと」


久しぶりに来た上層東部の崖、良い感じの絶景スポットとなっており私の自慢でもある。そういえばこの崖にも名前ついたんだったっけ、人間って何にでも名前付けるよね。

時間も丁度いい感じに過ぎておりそろそろ夕方になる、間に合って良かったよ。


では、耳をすませてみる。


わわんっ♪


くわわわんっ♪


あぁ、聞こえてきた。どうやら始まるようだね

視界の下に見える森から幾つもの光が天へと昇ってゆく。

何も無い程の高さまで辿り着いた光はそれぞれが意思を持つかのように近すぎず遠過ぎない程度の距離をあける。


くわわわわんっ♪


どこからか音が聞こえてくる、そして光から大きな波紋となって虹が放たれる。

それは、私が吹いた時とは違いどこまでも広がっていくようであった。


くわわんっ♪

くわわんっ♪


一つが虹を放ったのを合図のように次々と光は虹を放っている。

それは夏の花火とはまた違う夕暮れの空に咲く虹の華のようであった。


この行動は春鳥君の求愛行動である、鳥の繁殖は丁度この時期に行われている事が多い。

その中でも春鳥君に関しては団体で求愛行動を行うのだ、人間で言う合コンのような物だね。

自分を見ろとオスが綺麗な虹を放ち、メスは気に入ったオスに虹を返す。そうやって(つがい)が完成するのだ。


そうやって大量の春鳥君たちが虹を放つ事で生まれるのがこの風景。

この時だけは普段は透明な春鳥君も魔法で光る事で光の玉のような形で肉眼でもちゃんと確認する事が出来るのだ。


因みに人間からもこの風景は人気であり、場所によっては閲覧用の席などを有料で貸し出していたりもする。皆なんだかんだ言って美しい物には目がないからね。

私のいる崖も絶景スポットとはいえ危険な場所なので基本的に人は来ない、0人って言うわけではないけどね。

今も近くにはいないだけで見てる人間は何人かいるようだし。

ここで見るようなのは大抵高位の探索者などなので余計なトラブルにならないだろうし放置でいいさ。


この虹自体は森周辺の街などにも届くため、この虹を確認する事で春が来たと認識する人が多い。

普段は争いだらけで割と殺伐とした森の中もこの子達が活動している間は少し平和になっているようにも感じるね。


この光景は2時間ほど続くため今日はもう少しゆっくりと眺めていよう。


あ、そうだこの春鳥君を人間がどう呼んでいるかって説明していなかったね。


人間はこの子達を春を呼ぶ精霊、スプリング・ルミナスと呼んでいる。


人間はこの鳥を勘違いしているんだよね、この子達は歴とした鳥類であって精霊ではないのだけどね。


人間だって全てを理解しているわけじゃないってことだ。

虹のイメージは作品名は少し伏せますがMLPのRDのSRB的な感じです。

次回は少し番外、異物君視点の予定です


よろしければ評価や感想をよろしくお願いします。

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