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異世界森精霊  作者: P223
4/33

3 魔晶スライム

キラゲル君、もといスライムくんが私たちの前に現れた。

この小洞窟が元々彼らの住処だったみたいだね、それを彼らが利用していたと。上手いこと考えるなぁ


「スライムがいるなんて…最悪じゃない」


「キラ…濡れていたのは彼らの影響みたいだね」


「ってことはこの液体ってスライムのってことじゃ…!?溶けるから早く脱がないと!」


「そう慌てる必要はないんじゃないかな、彼らは通常のスライムとは違う。それに脱いだくらいじゃ剥がれないよ彼らは」


スライムという種は他の生物に張り付くようにして寄生する魔物だ。その性質上適切な処置を行わない限りは中々剥がれない、ほぼ液体だから物理的に掴んだりとかも難しい


「通常のスライムとは違うってどういう意味?」


「彼らは私の認識が正しければマナクリスタルスライムや魔晶スライムと呼ばれている魔物だね、知っているかい?」


「いや、スライムにも種類があるっていうのは知っているけど、総じて動物とかに取り付いて溶かしてしまうってことぐらいしか知らないわ、物理が効きにくいんだっけ。後は体のどこかにあるコアが弱点」


「大体あっているね、ただ彼ら、魔晶スライムは少し違うんだ。彼らは寄生した生物の魔力を奪う。魔力自体を餌としている生物なんだ」


「魔力を?倒すための魔力が無くなったらまずいけど意外と安全なのかしら?ゆっくりコアを破壊すればいいし」


「そうともいかない。彼らに魔力を吸収される際に同時に意思を吸われるのさ、魔力を全て吸われたころには自分の意思じゃ殆ど何もできないような状態になる。他人の命令は全て聞いてしまうので奴隷のようにも使える。そうなってしまえば自然には治らないし治すのは困難だ」


「……ちょっとそれって!」


「彼らが交尾とかは後でやるって言っていたのはそういう状態にするためみたいだね、殺すっていうのだけは嘘で人身売買が目的かな?」


「ほんっと最低なやつら!!!魔物を勝手に利用するのは重罪だっていうのに!それに誘拐に人身売買に冒険者証偽装!?信じらんない!!」


「まあまあ落ち着いて、それで、どうするんだい?このままだと君は生ける屍のようになるよ」

「あっそうよね!先にスライムを倒さなきゃ!」


忙しい娘だ


「スライムにはあまり物理攻撃は効かないし、今は武器もない。でも私は優秀ではなくても魔術師なのよ!だから安心していいわアリア!」


「頼りにしているよ、私は戦えないのですみっこにいるさ」


戦いに巻き込まれても困るしね、支持されても殴る蹴るくらいしか出来ないしする気もないからスライムには無意味だし


「確かスライムには水魔術も効かないのよね、ならとりあえず!〈火射(ファイアショット)〉!」


女の子が手のひらをスライムに向け、魔術を唱えたことで彼女の手の前に拳大の火球が生まれスライムに向かって放たれる

しかし…


「うそ…!?吸収された!?」


スライムに命中した火球は目立ったダメージを与えた様子はなく、吸い込まれるように消えていた


「魔力が餌なんだから魔術をぶつけても効果は薄いのだろうね」


「先に言ってよ!どうしたらいいのよこれ!」


「ほら、ご覧。君に寄生しているスライムがちょっと蒸発して服が少し乾いている。直接当てなければ効果はあるのさ」


「確かに少し乾いたけど何の意味があるのよそれ……熱だけで全てのスライムが蒸発するくらいの火力なんて出せないわよ?」


そうだなぁ、色々方法はあるんだけどね。そこまで強くないからねこの子たち。

女の子が知ると有利になりすぎるから教えないけど。

……ちょっとだけ、補助してやろうか。巻き込まれたワケだしアリアとしてだけど


「例えば魔術の火を移し替えた枝を使うとかなら魔力じゃなくて自然現象に置き換わるから吸収されないって聞いたことがあるよ。スライムの身体は液体だから中まで入れたら消えるけどね」


「枝なんて無いし、ここで燃えるものなんてほとんどないじゃない……服もスライムに寄生されて濡れてるせいで燃える前に吸収されるわよね?」


「まぁね、なら他の属性を使ってみるとかもいいんじゃない?スライムは総じて電気に弱いから魔力依存でも電気なら効いた筈だよ」


「他の?私が使える属性魔術は基本の火水風土ぐらいよ?雷は危険度含めて上級魔術扱いだからまだ習得していないわ……弟は出来るけどね…」


基本…ねぇ、まぁ


「それだけ使えれば十分さ、色々考えてみな、手遅れになる前にね」


こうしているうちにも私たちに寄生している魔晶スライムは私たちの魔力を吸い取っている。


「確かにそれを先に対処しなきゃいけないか、なら〈焔纏(フレイムフォーム)〉」


女の子の身体を魔力の炎が纏う、その炎の熱により彼女に寄生したスライムが蒸発し消滅した。


「ほら、アリアにもかけてあげるわ」


「私は要らないよ、魔力は温存するといいさ」


「そう?やばそうだったらかけてあげるから言ってよね」


今の私の身体には元々魔力が殆ど含まれていないし彼ら(スライム)が吸おうにも魔力排出器官である魔力孔(まりょくこう)も付けていないので吸えないのだ。

そもそも魔晶スライムの魔力吸収は、人間などの動物が体内の魔力を使用する際に働く器官である魔力孔に特殊な毒を注入し誤作動を起こさせることで吸収に適した魔力として強制的に排出させて食事を行っている。また、その際に毒の影響で思考能力が低下していき最終的には廃人状態と化す飽くまで完全になくすわけではなく判断能力の低下なので他人の命令などには従えるのだがそれを悪用する者もいるわけだ。

治療方法は当人の魔力を完全回復後何らかの方法で意思を強化し長期間安静にしておけば治ることもあるのだが、意思の強化に使用できる薬草が貴重なため手に入りづらく、服用しても治療に成功する者は3割~4割程度となっている。


かなり危険な生物と思えるが、それは"完全に"魔力を吸い尽くされた場合であり、その前に対処できれば少しの時間の軽度の思考力低下と魔力低下のみであり時間経過のみで回復する。さらに魔晶スライムの毒自体は待機に触れるだけで解毒される為、余程運が悪くない限りは対処は可能なのだ。

但し、それらは魔晶スライムを討伐もしくは逃走出来る場合に限る。


「扉も開かないし、まだ大丈夫だけどスライムも数が増えてきてる。このままじゃまずいわ」


スライム自体動きがとても鈍い種族だ、しかし彼らは群れる習性があり獲物を見つけるとどんどんと数を増やしていき数で押しつぶす戦法で戦う。数が少ないうちに討伐に成功することで他のスライムは逃げるためなるべく早めに討伐もしくは逃走することを推奨されている。今回は手遅れだが


数も多いし少し覗こうか


「うん、今で十五匹いるね。放置すると最大八十二匹まで増えるようだ」


「アリアあんたそんなこと分かるの?どうやったのよ」


おっと


「詳しくは言えないんだけど昔数え方を教わったのさ」


「あとで教えてもらえる?っと<地裂(アースクラック)>!」


女の子は手を地面につけ呪文を唱える。すると地面がひび割れたように裂けていきその裂け目からスライムが五匹ほど落下していった。


「よし!倒したりは出来ないけどこれは有効そうね!」


「中々上手いね、時間が経てば登ってくるだろうが時間稼ぎにはなりそうだ。後数え方は企業秘密さ、気になるなら学院とやらで聞いてみるといい」


「ケチね、いいじゃないそれくらい。仕方ないから学院に入ってから調べることにするわっ<風刃(ウインドカッター)>!」


風の刃がスライムを襲うがコアに到達する前に吸収されてしまう。


「ま、そうなるわよね。地裂(アースクラック)以外に有効そうなものはあるかしら」


「私に聞かれてもね、魔術は詳しくないのだけど」


そもそも魔術は人間が魔力を扱うために規格を統一したものなのでわざわざ知ろうとしない限りは知れないし、あまり興味もない。

そういえば昔魔術師の記憶を覗いた時にこんな知識があったような


「そういえば確実かは分からないけど、火が使えると氷も使えるらしいよ。スライムの身体は水と同じような性質だからね、凍らせてしまえば無力化出来るんじゃないかい?」


確か火属性っていうのは人間が決めたもので、正確には熱の魔力の指向性を発熱に充てることで火のようなものを生み出しているんだったか。その指向性を逆にすれば氷というか冷却を行えるそうで。


「そうなの?どういう原理よそれ。それに氷でも吸収されるのじゃないかしら」


「だから直接当てなければいいんだよ。氷って言ったけど正確には低温化らしいね、どちらも熱だから火の適性があれば出来るらしい」


「あー、なんとなくそんな事習ったかも。()()は苦手なんだけどやってみるわ。火を撃つときと逆にするのよね……」


そう言った女の子は目を瞑り、ブツブツと何かを呟き始めた。

魔力を使用する際はイメージが重要視される。大勢でイメージを固定化した規格を呪文を用いて放つものを魔術といい、魔力自体を自身のイメージのみで扱うものを魔法という。

魔法に呪文の有無は個人の自由だが、自分のイメージを固定化するために設定する者は多い。

魔術は安定した効果を発揮し、魔力消費が最適化されたものが多い。

魔法はムラがあり、魔力消費が多くなっているものが多く基本的には魔術より劣るが今回のようなイレギュラーな状況においては無類の強さを発揮する。また、中には同系統の魔術よりも高性能な魔法を扱えるものもいるそうだ。


「よし、出来たわ!名付けて《短絡的な銀世界(レスホワイトエラ)》!」


洞窟内の温度が急激に下がっていく、ある程度広い洞窟内とはいえその広さは小さな湖より狭い。すべてが魔法の範囲に入れることに成功したようだ。

気温はどんどん下がり、ついに氷点下へを達する。いつの間にかまた増えて二十匹に達しかけていたスライムはそのすべてが活動を停止していき氷塊へと変化した。


覗いてみるが、増える予定の残りのスライムは現れることはなさそうだ。逃走を選んだらしい。


「全部やれたかしら……?」


「うん、見える範囲にいるスライムは全て凍ったみたいだ。頑張ったね」


「え、へへ、やったぁ。私も案外やれるじゃない……」


そう言った女の子は気絶してしまう。大量に魔力を消費する魔法を使用したことにより魔力が枯渇したらしい、体内の魔力が枯渇すると生物は気絶する。生命活動には支障はないがこんなところで気絶すると折角凍らせたスライムがまた溶け出して襲ってくるんだけどねぇ。

まぁアリアとして助けてやるつもりだったし、丁度いいからこの子に頼み事もしたくなった。仕方ない、この後はどうにかしてやろう。

()()()()()たちも死んだわけじゃないけど、私のせいで食事が出来なかった部分もあるので後で補填してあげようかな。


とりあえず


「おめでとう、アンナ。この生存競争は君の勝ちだ。」

よろしければ評価や感想をよろしくお願いします。


1話3000文字程度を意識しているのに会話させると全然越えてしまう不思議

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