27 夏の森のおさんぽ
ルクアリア大森林 中層南部
「おはよー」
「母さんおはよう」
「2人ともおはよう、よく眠れたね」
精霊には本来睡眠というものはほとんど必要がない、しかし人の社会へ溶け込む為にも2人にはこうして時々睡眠を行ってもらっている
丁度いいので今日は人間の三大欲求について───
「「……誰?」」
ん?
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「つまり、あなたが母さんなの?」
「えー?どーなってんのー?」
ぴょんぴょんと飛び跳ねながらルカが私の周りを回っている
アルの方も納得がいかないと言った表情である
さて、なぜ2人がこういう反応をしているのかと言うと当然原因は私の容姿にあった
180cmにもなろうかというほどの高身長に腰まで伸びたストレートロングの髪、いつもよりややグラマラスな体型をシャツと短パンで隠しておりチラリと見えるお腹にはうっすらと腹筋が見えている。
そんな見た目の女性が今の私である。
過去に説明をしているのだが今一度説明をしておこうかな
私の姿は季節で変わる、その姿が変わったと言うことは季節が進んだと言うことでもある
つまりはルクアリア、夏の姿という訳だ
さて、私が夏の姿になったということは森自体が多くの生物から見て夏と認識されたということでもある
なら今日やる事は決まった
「2人とも、今から私散歩に行くけどついて来る?」
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ルクアリア大森林 浅層南部
「おー、海が見えるー!!」
「知識では知ってたけど実際見ると違うな」
夏のパトロールを兼ねての散歩に二人が付いて来たので南部の確認と丁度いいので海を見せに来てみた。
森の中に海は含まれていないのでこうやって直接見せなければ行けないが、まぁこれも学習の為なので仕方ないだろう。
「この海にも母さんみたいな精霊がいるんだよね?」
「そうだよ、この海はローリア海と言ってこの世界で一番大きな海だからね、当然私と同じような精霊はいる」
「ローリアって名前なの?」
「うん、私たちの名前はそのまま場所の名前だからね。ローリアもローリア海って名前だね、まぁ、あった時はローリアって呼べばいいさ。それで通用するよ」
「わかった!」
「今はまだ会うのはやめておこうか、ローリアもローリアでルカ達みたいな眷属を育てている最中だろうからね」
そう言って森の中へと戻っていく、二人は少し名残惜しそうにもしているが文句つかずちゃんとついて来た。
「さて、じゃあちょっと内側まで行こうか」
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上層南部
上層南部の湿地帯に来た、ここには毒蛙君をはじめとする生物が多く住むエリアである。
春はまだ数が増えだしたといった時期ではあったが今はというと……
「げーこ」「げこげこ」「しゅるるる……」「かささっ」「ちゅちゅん」「きゅっ」
といった風にかなりの数となっている、春と比較しても数倍と言ったところだろう
そして、ここにいる子たちは大体毒を持っているのである種の地獄とも言える場所にもなっている
ちらほらと人間の死体も見えるし、今年も順調に戦果を得ているのが確認できる。
「げこー!!」
「あっ、ちょっとルカ!離れるなって!」
ルカが毒蛙君の方へと走っていく、精霊は他の生物とは仕組みが違うので毒はほとんど効かないのでいいのだが、毒蛙君にも悪いかな
「ゲコー」「ゲコー」「ゲコー」「ゲコー」
おっと、輪唱しだしたようだ
「げこーっ!…お……ぉ……????? ?お?」
「ルカどうした……ぁ? わ?」
二人は毒蛙君の輪唱の混乱効果をもろに受けてしまったようである。
と言ってもこの輪唱は身を守る為であって狩りではないので二人を回収、そして収納した。
「まだちょっと早かったかな?もう少し対処できるように勉強させないとね 毒蛙君たちも元気でね、それじゃあ次だ」
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浅層西部
「時期的にそろそろだったはずだよね」
今来ているのは、二ヶ月ほど前に来た浅層西部のやや南の場所だ
ここでは私と緑帽子君で作成した桜虫君たちの繭が設置されていた場所である。
「そろそろ大丈夫かな、出ておいで」
「「わぁっ」」
どててっという音を立てつつも収納した二人が現れる。
「何だったんだ今の…?」
「なんかぽわぽわしたと思ったらぎゅってなってぶわってなった…!」
「2人とも混乱魔法にかかってたんだよ、因みにあの湿地帯はあれくらいのが沢山いるからね」
「上層なのにあんなに……」
「すぐに慣れるだろうから大丈夫さ、ほら、それよりもこれを見てごらん」
まだ少し動揺が残っている二人を落ち着かせながらも桜虫君の繭を指差した。
今はもう夏、そして時期的にも覗いた感じでもそろそろ羽化の時期だ。
「これ、この子たちの繭じゃないよね?」
「わかるかいアル? そう、これは私が作った繭だよ、他の人間にも手伝ってもらったけどね。」
「何でそんなことを?」
「この子たちの糸は良い素材になるんだよ、人間にとっては頑丈だし肌触りも良い。後は希少性から高額で取引されているそうだよ」
「そう、なんだ」
ちょっと思うところがあるのかあまりいい顔をしているとは言えない。
こういうのに対する価値観を養うのも情操教育に必要だろうから、そっとしておこう
「わっ、やぶけてきた!」
繭が破けてきてそれにルカが反応した。
丁度今羽化するタイミングなので来たというのもあるが、我々精霊と深い関係のある"生命の進化"を見るいい機会でもあるのでそういう意味でも丁度いい。
「ほら、アルもちゃんと見ておいてね」
「えっ? あぁ、うんわかった」
繭の裂け目が広がっていき、そこから桜虫君の成虫…桜色の蚕蛾が次々と現れる。
1匹の大きさは手のひらサイズではあるがその数は膨大、優に百を超える蛾が飛び去る様は正に天に舞い上がる桜吹雪のようだった
という感じにこの風景を詠った詩人が昔居たが、きっと二人も今似たようなことを思っているだろう
「「綺麗」だ…」
こういう風に惚けているのがその証拠だね
そういえば人間は蝶と比べて蛾にはいいイメージを持っていないのが多いけど、実際はそこまで際は無い。
どちらも美しい生命であるし、見た目も案外そう変わらない。
一応違いは存在するがそれもちょっとしたものだからね
そうしているうちに桜虫君たちが皆飛び立ったので仕上げをする。
「この残った繭を処分するけど二人やってみる?」
「「……」」
まだ感動が残っているようで、反応が無いのでこちらで処理をしようか
「《燃えろ》」
簡単な魔法で繭に火をつける、可燃性の高いものなのであっさりと燃え尽きてしまった。
中にいた死骸は周りに散らばらせたのできっと誰かが食べるだろう。
「よし、ここもこんなもんかな」
そうしているうちに惚けている二人も正気に戻っていた
周りの生物たちも異常は無いようなので少し深いところに向かう事にした
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下層北部
「この辺は二人にはまだ危ないから離れないようにね」
「うん」「わかった」
さて、ここに足を運んだ訳だけど、実は夏の間だけ現れるダンジョンというのが存在する。
他の季節限定のも当然あるけど、それはその時にまた。
で、このダンジョンに来た理由は単純な話、ちゃんと生物が生まれているかの確認だ。
勿論森の一部でもあるのでいるのは確認出来るのだが、ちゃんと確認するためにもこうして身体を作っていくのが一番いい。後は暇つぶし。
「ダンジョン、知識では知ってたけど見るのは初めてだ……」
「ママー、ここ入っていいの?」
「もちろん、入る為に来たんだからね。 でも流石に私だけじゃ二人を連れて奥までとなると守り切れないかもなので……」
そこで、巨大な影が私たちを覆った。
その影は近づくにつれ小さくなり、目の前に来た時には私たちと同サイズの人間の男性となっていた。
「それで呼び出したのか、お前一人で行けば大丈夫だろうに。 それに、お前の力なら守り切れるだろうが」
「こういう時に使うのはエルフ達が使えるくらいの魔法だけって決めてるんでね、それに私達の力を使うのは不自然だ」
「はぁ……全く、俺はゆっくりと眠る事すら出来んのか。 こいつらの為でなかったら来る気は無かったぞ」
「でも来てくれるのが君だよね、ありがとねドラゴン君」
ダンジョン散歩には過剰だろうが、これも家族の義務ってやつだよね
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