23 眷属クエスト-幸運兎2-
中層西部、アルとルカはそこにいる。
二人は私からの依頼の練習としてラッキーラビットこと幸運兎君を探してもらうためだ
私は実体を消した状態で二人の後をついていく。
「さて、ルカ。行動前に注意点のおさらいだ、これからぼくたちはラッキーラビットを探しに行くわけだが、気をつけるべきことは何だと思う?」
「ん?攻撃したり暴れちゃダメなんだよね?」
「そうだ、ラッキーラビットはとても臆病な性格でもあり幸運を持っているから危険と判断されれば会う事すら出来なくなるだろう。でも、そう簡単にいくともいかない」
「どういうこと?」
「それは……こういう事だ、来るぞ。」
アルがそう言って振り向いた方向から2メートルくらいの生物が現れる。
身体は緑で四足歩行、下半身には大きなふくらみがある
そして、長く細い上半身には二本の大きな鎌。
つまりは、カマキリだった。
「おっきいかまきり!?」
「カマキリは通常夏に成体になると本に書いてあったんだが…サイズ的に魔物だろうし、常識から外れていてもおかしくない…か。」
キチチチ…と音が聞こえたかと思うとそのカマキリは瞬く間に距離を詰めてその鎌でアルに攻撃を仕掛けた。
「あっぶな!?」
キィィン!!、と音を鳴らしながら上手く剣で弾くのに成功する。
初撃を防がれたカマキリは追撃をせずに少し距離を取った。
どうやら、二人の事を警戒しているようだ。
「アル大丈夫?」
「大丈夫だ、でも何度も弾けそうにないな。腕が少し痺れた」
「よし!じゃあルカに任せて!!《めらめら…」
「まて、ルカそれはダメだ、火属性と雷属性は範囲が広すぎてラッキーラビットが危険を感じてしまう恐れがある。」
「へ?」
「!」
ルカがきょとんとアルを見た瞬間に隙を感じ取ったカマキリがルカに斬りかかる。
不意を突かれた二人はその攻撃に対処をすることが出来ず、ルカの左肩に鎌が深く突き刺さった。
「うぐぅ…!」
「ルカッ!?」
「はな……して!! 《むくむくぱーん》!!」
ルカは土魔法で作った衝撃を放つ爆弾で無理矢理距離を取ることに成功するが、受けた傷は大きいようでそのまま吹きとばされ木に衝突してしまった。
「ぼくは馬鹿だ!火はダメとか言ってる場合じゃないだろ…!!よくもルカをやってくれたな!!《フレイムセイバー》!!」
アルは剣に火を纏って攻撃を仕掛けた…しかし
ガキンッ!!
「なっ!?」
カマキリの元に刃がたどり着くこともなく見えない壁のようなものに阻まれてしまった。
キチチと笑うような音を出しながらカマキリがあるに反撃をした
「くっ!!これが魔物か…!全然歯が立たない!」
さて、ここらで解説をしようか。
今回二人の元に現れたのは念導蟷螂君こと、サイコマンティスだ。
この念導蟷螂君は風属性の魔法と身体強化の魔法が得意な生物で常に体の周りに透明の盾を飛ばしている。
アルの攻撃が弾かれたのはこの盾が原因だ、さらに言えば今のアルの実力ではこれを貫けるほどの力は無い。
「ルカ、大丈夫か?」
「うん、なんとか」
「じゃあ逃げるぞ、こいつは無理だ。やるにしても準備もいるだろうししたとしても被害は受ける。今回の目的に対して割に合わない……悔しいけどさ」
「わかった…じゃあどうやって逃げようか。っと、《きらきらばりあー》!」
会話中にも当然、念導蟷螂君の攻撃は来る。それをルカは氷の壁で防ぐが、その壁は一度だけ役目を果たし消えてしまう。
「隠れるってのは難しいか?」
「うーん、どうだろう?やってみるね!《もやもやどぅーん》!」
闇魔法での煙幕を張って逃走を図るが、念導蟷螂君はしっかりと二人の方を捉えている。
通常でも高い視野角をはじめとした高性能な目である複眼を持っている念導蟷螂君は身体強化魔法を常に無意識的に使っているので、恐ろしいレベルでの認識能力を誇っているのだ。
「闇だけじゃダメか、《スタンドウォール》!」
アルは念導蟷螂君から姿を隠すことが出来ていないと気が付いたのでさらに4メートルにもなる高さの土魔法の壁を生成した。
認識能力が高いのは何も相手だけではない、精霊は自然に対しての認識能力に関しては他の生物と比べても圧倒的に高いのだ。
「!!」
獲物に逃げられそうだと思った蟷螂君が壁を攻撃するが、アルは壁の表面に水魔法をかけて滑りやすいローションのようなもので斬りづらくしていた。これでは破壊するのにももう少し時間がかかるだろう。
「よし、走るぞ!」
「うん!…いてっ」
アルに続いてルカも走ろうとするのだが、木に衝突した際に足を痛めたようで躓いてしまった。
「ルカ、乗れ!」
それに気づいたアルはルカの前に座りおんぶの姿勢に入った。
「ごめんアル!お願い。」
「気にするな、それにその怪我はぼくのせいだから責任は取る!」
「うん!とりあえず教科だけするね!《びゅーんとばしゅーん》!」
ルカの魔法で二人の速度は上がりその場から離脱する。
その少し後に壁が破壊されて念導蟷螂君が来るが、二人の姿はもう無い。
悲しそうな雰囲気を作りながらも念導蟷螂君はまた、別の獲物を探しに移動していくのだった。
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「はぁ…はぁ…ここまでくれば大丈夫だと思いたいな」
「うん、近くに大きい生物はいないと思う。」
二人は息を切らせながら安全を確認する。
うん、私が覗いても近くに危険な生物はいないから一息付けそうだね。
にしても二人を少し人間に近づけすぎたかもしれないな、このくらいで既にきつそうだし。
まぁアルの身体は殆どドラゴン君任せだったけどさ
「「ごめん」!」
おや?なんか二人が謝りあっている。
「ぼくがルカを止めなかったらそんな怪我をせずにすんだんだ。火や雷がダメってのも事前に伝えておくのを怠ったぼくの責任だ。」
「ルカもあのカマキリちゃんから目を離したのが悪いからお互い様だよ!」
「そう…か、とりあえず幹部を見せてくれ、治療する。」
「わかった!いてて、服がちょっとくっついてるや。」
そう言いながらルカは全裸になった。
「ルカ、全部脱がなくていいから。今はぼくだけだから大丈夫だが他の人がいる時は女性に治療してもらうか、見せる部分だけ脱ぐようにしてくれ」
「?うん」
私もそうだけど、男の人の前で全裸だと色々と面倒が増えるからね、アルが正しいと思う。
昔は私も全裸徘徊してたからなぁ、何度も襲われたし驚いてその隙で魔物に殺された人もいたっけ。
アルはそういうところの常識は大丈夫そうで何よりだ、ドラゴン君のおかげかな?
「よし、《ヒール》。痒いとは思うが我慢してくれ。」
「ありがとー!」
「で、今後の事なんだがさっきので分かったことがある」
「何がわかったの?」
「ぼくらはまだまだ未熟で弱いってことだ。」
「それは……うん、そうだね。カマキリちゃんでも全然ダメだったし」
「ああ、だからこれからは戦うのはやめようと思う。もっと強い魔物が相手だったらぼくたちが死ぬ可能性すらあるから」
良かった、ちゃんとこの結論に達してくれたようだ。
森の中は普通の存在にとっては十分危険なんだ、今の二人の実力は中層の地表の魔物と同等レベル。連戦なんてするとすぐにダメになる。
それにだ
「今回の目的はラッキーラビットを撫でるだけだ。戦えとか何かを倒せなんて言われてない。母さんもそのつもりだったんだろうね」
「ほえー」
「とりあえず、これからは隠密と逃走に力を入れよう。ルカ、少し作戦会議するぞ。…でもその前にだ、魔物除けの結界を張る、手伝ってくれ。」
「うん」
二人が手を握る。
「《ここはわが地、我らの地》」
「《他の者この場に入るべからず》」
「《他の者この場を知るべからず》」
「「《一時精域》」」
二人の合体魔法か、そういえばこんなものも作っていたね。私の生物払いの結界と同じような効果の結界魔法を使いたいって二人で作ってたっけ。
普通の魔法じゃ無理だからって二人の精霊としての力も合わせてやっと使えるものだし、効果は私が作ったものには劣るが中層の地表では十分通用する。
私にも隠したがっていたけど、この森にいる上に私の眷属なんだから無理な話。
でもまぁ見せてきた時は驚くふりくらいはしてやろうかな。
随分と空いてしまいました!
次回は相談と行動、その次で幸運兎は終わりのつもりです。
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