21.2 異物君と東の街マルファ-1
春も過ぎて時期的には五月ごろだろうか、そんな日に俺は異世界の街にいた。
異世界に来てもう1ヶ月半ごろにもなるのだが元の世界に帰るどころか街から出てすらいない
探索者の仕事も荷物運びや掃除などの雑用ばっかりだったりする。
そんなことをしているものの俺はまだこの街をちゃんと散策したことが無いのだ、この街がマルファで国がライオノールって言う事と後はギルドと食品店ぐらいしかわからない。
この一ヶ月はこの世界になれるための勉強と仕事、街の外で安全に過ごすための修行ばかりだ。
そんなわけで、学院でひと段落ついて一度帰ってきたアンナがこの街を案内してくれるようになったのだ。
「お待たせー」
アンナがルルさんと屋敷から出てくる。服装も帰ってきた時は学院の制服と思われるものだったのがラフな格好に変わっていた。
黒のシャツにデニムを合わせて白いキャップを被っている、空色の髪が目立つようにも思えるが意外と違和感がなくよく似合っている、ストリートギャルって感じで異世界の服装とは思えないほど現代的なのだがこの世界も意外とこういう服装が多い。
ただ、戦闘用の服なんかはファンタジー間あふれているのでバグるのだが。
因みにルルさんも現代的な服装になっている。白のシャツに黒のスカートで少し大きめな鞄を肩から下げている。
「どうかした?」
「あ、いやぁ。なんでもない!」
見惚れてたなんて言えるわけがない!
「ところでララは?」
「ララさんは他にも用事があるとかで残るってさ、ルルさんがいるから大丈夫だろうって」
「ふーん、じゃ、行きましょうか。」
「おう、ルルさんもよろしくお願いします」
ルルさんはペコリと一礼だけして俺たちの少し後ろをついてくるようだ。
アンナは歩きながらこちらに話しかけてきた
「で?あんたが知ってるこの街の事の確認なんだけど、どれだけ知ってんの?」
「ん?ギルドとそこの商店街の店の幾つかくらいかな」
「…マジでなにも知らないじゃないの」
「いやぁ、修行とか仕事とか頑張りすぎて…」
ははは、とから笑いしつつも心の中で少し反省。
「ところであんた幾らくらい持ってんの?」
「ん?金の事か?そうだな…」
そう言って俺は財布を確認する、異世界に来た後に買った安めだが頑丈な財布の中には大体46000クレト入っていた。物価は違うが日本円とほぼ同等の価値観で使えるのでとても助かる。
因みに装備品はギルドでレンタル出来るのとは別に購入すると引くほど高かったりする。
ただの鉄のショートソードでも5万~10万クレトはする、鉄以上になれば案外買えるらしいが俺ら非金属組(木・石・ガラス)にはキツイ出費だ。純魔石の買取分で10万の剣を一つと簡単な防具を買ったけど怖くて持ち歩いていない。
「46000だな、残りは家に置いてある。」
「へぇ、あんた銀行使ってないの?」
「あーー…銀行な、ギルドの近くにあるんで寄ったことはあるがどうやら鉄以上じゃないと探索者証では身分証代わりにならないんだと。それで作れなかった。」
その時に聞いた話だが、他にも公共機関での身分証代わりに使えるのは殆どが鉄以上じゃないと無理だそうで、ギルド管轄の施設ならその限りではないらしいが。
「とりあえず今ある分は使っても大丈夫?」
「大丈夫だけど、買い物でもするのか?」
「まぁそんな感じ、多少自由に使えるお金があったほうが行ける場所も増えるからね」
「あぁ、それもそうか」
「さて最初に案内したい場所に着いたわ、ここよ」
アンナはそう言うと前にある建物を指し示した。
看板に書いてある文字は日本語に置き換えると…
「えっと……喫茶…なんて読むんだこれ?」
「アマミツよ、書いてある通り基本的には喫茶店ね」
漢字っぽいのを使ってるとまだ名詞はわかんないんだよなぁ、喫茶とかはわかるんだが規則が日本と違うせいか中々見に入らない。【知識】でも無理だ、あれに漢字の自由な読み方なんてなかった。
これも勉強しないとか……世知辛いな
まぁそれもこれも後にして
「とりあえず入るか」
「えぇ、そのために来たのだもの」
店に入ると店員さんに案内され4人席に通される、内装は喫茶店というよりはファミレスの方が近いだろうか、結構広くチラホラと客が見える
服装は現代風とファンタジーが入り混じってすごいことになってるが……
つーかあの1人でいるレンジャーっぽい人の前にあるパフェクソデケェなおい、1メートルくらいないか?
「何キョロキョロしてんのよ、恥ずかしい」
「すまん、あの人が食べてるパフェがデカすぎて思わずみてた」
「ん?……うわおっき…なにあれ」
「お前も知らないのか」
「うん、初めてみた……これかな?アルティメットデラックススーパーパフェ」
アンナが指差したメニューには巨大なパフェの絵が描かれた商品があった、値段は……
「4万!?」
「!?な、なんだ!?」
レンジャー(っぽい)の人が驚いてこちらに向いてしまった
「あ、いやなんでも無いっす。へへ…」
「お、おう。……なんなんだ?」
「タクマあんたほんとバカね」
「だって4万だぜ?ビビるわ」
「それだけの価値があるのかもね、見る限りでも結構良い果物とか使ってるみたいだし」
「そうなのか?俺にはわかんねぇな」
「タクマ様も審美眼を鍛えたらわかりますよ、ララに言えば教えて貰えるかと」
「ララさんそんなのも出来るのか」
家事は当然完璧だし魔術も上手いしあれで結構運動神経も良いんだよなあの人、スーパーメイドかよ
そんなこんなしながらもそれぞれ注文をする、【知識】と勉強の成果もあり俺もなんとか注文が出来た、しろ?なんとかってやつも頼んだがこれ多分ケーキだよな?
「お待たせいたしました、こちらコーヒーの方とお食事になります」
アンナ名前にはコーヒーとカツサンド、ルルさんはコーヒーだけみたいだ
俺の前にはコーヒーとケーキ……じゃないなこれ!?
シ◯ノワールだ!!シ◯ノワールだこれ!でけぇ!!
あんなのカツサンドも結構でけぇな!!
コ◯ダじゃねぇかここ!?
「えーっと、アンナはカツサンドにしたんだな」
「えぇ、私アマミツのカツサンド好きなのよね、タクマが注文したシロミツとも迷ったけどお腹空いてたからね」
「俺も今度頼んでみようかな、はは…」
アンナはカツサンド、俺はシロノワー…シロミツを食べながら今後の予定を話し合う事にした。
「それで?この後何処へ行くんだ?」
「そうね、まずは服屋ね」
「服か、そういえば持ってるの作業着と最初に着てた服だけだしな」
「そうね、後その髪もダサいから美容院も行くわよ」
「うそだろおい、俺ダサいの!?」
毎日鏡で身だしなみ整えてるし、清潔感を意識して髪のセットもしてるのに!
「タクマ様…」
「ル、ルルさん的には大丈夫ですよね?」
「いえ、ダサいかと。後目に髪がかかって正直鬱陶しいです。」
「ルルさん?」
「因みにララも同意見とのことです。」
「ララさんも!?というかいつ聞いたんですかそんなの!」
「メイドパワーです」
「何それ…」
「タクマ、メイドには謎が多いのよ。考えるだけ無駄だわ」
メイドってなんなんだ
「ま、まあ分かった。服と美容院な、場所は任せていいんだよな。」
「ええ、ラングも使ってる場所だから安心していいわよ。どんな髪型がいいか考えときなさい、批評してあげるわ。ルルが」
「任せてください、めちゃくちゃ否定して差し上げます」
「ルルさん?」
「冗談ですよ、ちゃんと公平に判断致します」
俺にはこの人の心がわからない、本当にわからない!
「身だしなみを済ませた後は便利な施設と息抜きが出来る施設を案内してあげるから楽しみにしてなさい」
「ああ、ありがとうな。楽しみにしてる」
「あとはそうねぇ…何かあったかしら?」
アンナが考え込んでいる、こいつって本当に面倒見がいいしいいやつだよな。
あぁそうだ今ちょうどいいしずっと気になってたことを聞いてみようかな
「なあアンナ、ちょっといいか?」
「何?」
「ずっと気になってたんだが、前に言ってたアリアって誰の事なんだ?」
「アリアの事?そうねぇ、私の命の恩人で友達かしら?まだ1回くらいしか会ってないんだけどね」
会ったのが1回だけ……?
それなのにその人の事を信頼して俺の世話をやいてくれているのか。
お人好しっていうのもあるだろうが、本当にそれだけなんだろうか?
そのアリアってやつが俺の事を知っているのも間違いないし、怪しいが元の世界に戻る手がかりになるかもしれない。調べる必要があるか
「なあアンナ、アリアって人の見た目の特徴とかどんな性格かとかわかる範囲でいいから教えてくれ。」
「そうねー…」
「なあ、少しいいか?」
そう横から声をかけられる。
そちらの方を向くとそこにはレンジャーの人がこちらを見ていた
「俺?」
「ああ、そうだ。アリアさんの名前が出たんで気になってな」
「へ?アリアの事知ってるの?」
「ああ、と言っても君と同じように少しの間だけなんだが…気になることもあるんだ。」
そう言いながらレンジャーの人は4人席で空いていた俺の横に座った。
「申し遅れた、俺はテオ。鉄クラスの探索者だ。よろしく」
レンジャーの人もといテオはなぜか急に緑の帽子を被りながら自己紹介をしていた。
つーか、手めっちゃ震えてね?
続きは26.1になる予定です
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