17 ルクアリアとリコリア
リコリア山脈の麓、かつルクアリア大深林浅層北部……の地下に私達はいた。
精霊(?)である私たちは他の生物に迷惑をかけない為に話をする時は大体地下で行うのだ、まぁ姿を作らなきゃどこでもできるけど気分の問題だ。
私もリコリアも基本的に外には出られないから境界線で話すにしても地上だと邪魔なのだ
「で?ルクアリア、貴女何であんたところにいたの?」
「いやね、森の方に正体不明の液体が飛んできてたから気になったんだよ」
「あー、あれ?どの辺まで飛んでたの?」
「上層北部だね、浅層を一飛びで越えてるのすごいよね」
「へぇ、すっご。あれそんなに飛ぶのね」
感心したような声を出すリコリア、だがその表情はそこまで興味は無さそうだ。
私もそうだけど機械類には興味ないよね、精霊(?)って
「最近変なものも来たし、不自然な何かだったら困るなーって言うのもあって山の方に行ったってわけさ」
「そう簡単に不自然なことなんて起きないでしょ、変なものって何?」
「異世界からの来訪者って言ったら良いのかな、私は異物君って呼んでる。一応人間だよ」
「人間かー、なら別に気にしなくても良くない?どうせ100年も生きないし」
そうだね、でもそれだけじゃないんだよ
「それだけだったら良かったんだけど、彼、変わった魔力を持ってきててさ、なんて言ったら良いのか……強いて言うなら異空間魔力かな?」
「異空間?空間魔力ならその辺に幾らでもあるけどそうじゃないの?」
「うん、空間魔力だと空間の拡縮や移動はできるけどそこまでだ」
「異空間魔力はそうじゃないと」
「うん、例えばダンジョンは空間魔力と時間魔力の融合で産まれるものだけど異空間魔力はそんなダンジョンを一つの世界として産み出すことができる。そういう魔力だね」
「なるほど、それは確かに少し不自然だ」
「今は森の中で隔離してるけど、ずっとって訳にはいかない。これが自然になる場合もあるしね」
「そうだね、で?私は何をすれば良い?」
「何も?」
「そう、わかったわ、何もしない」
ほんとう聞き分けがいいよね私たちって、逆の立場なら私もこう返すけどさ
「あ、でも一つ。異物君が山に行ったら気にかけてあげて、彼はこの世界に慣れてないから色々大変そうなんだよ」
「あら優しい、貴女そんなタイプだったっけ?」
「いや?変に自然の中で死なれたらどんな影響があるかわかんないし、異空間魔力の問題が無くなるまではいて欲しいだけ。リコリアも嫌でしょ?自分の中でそんなのが死なれるの」
「嫌ね、なんなら入られるだけでも嫌かも」
「はは、私もそうだよ。だから異物君なんだ」
「なーるほど、そういう事。じゃあ彼の事教えて?」
「いいよ、抵抗しないでね」
異物君を覗いた情報を共有した、これでリコリアも異物君の事がわかるだろう。
あ、ついでにアンナの情報も送っとこう
「あら?この子は?」
「アンナ・ハーパー、異物君の世話を任せた子だよ。今は学院ってとこに通ってるとかなんとか」
「あら珍しい、貴女が名前を呼ぶなんて」
「名前くらい呼ぶさ」
「でも、精霊同士で話す時は大体名前を呼ばないじゃない?その異物君だってヒライタクマとか言う名前あるじゃない」
「まぁね、私が名前を呼ぶのはそんなに多くないね」
「でしょ?………あぁ、そういう事?」
「そういう事、完全にそうじゃないけど」
「ならしょうがないか、私も覚えておこっと。ついでに見かけたら話しかけようかしら」
「お好きにどうぞ、異物君のことはドラゴン君にも伝えてるから彼に会ったら話しても良いからね」
「ローリアとかシュバリアには?」
「まだだけど話しても良いよ、その辺は任せる」
彼女達もどうせ私と同じようなものだし、どちらでも良い。会った時に考えるさ
さて、話したいことは話したしどうしようかな
「私の用事はこんなもんかなー、リコリアは何か話したいこととかある?」
「えぇー?…そうねぇ、最近暇なのよね」
「わかる」
「だからさ、ちょっと眷属でも作って国に送ろうかなーって思ってるのよ」
「眷属?私達ってそんなの作れたんだ、生物ですらないのに」
「貴女のとこのエルフとかほぼそうじゃない、うちののドワーフもね」
あぁ、そういうやつか。ならわかる
「でも彼らはちゃんとした生命体だよ?私たちの影響を受けているだけで」
「まぁね、だからそれとは少し違うのよ」
「どういう事?」
「見た方が早いかしら?細かくはまた考えるから今回はお試しで…」
リコリアがそう言うとにゅるにゅると地面が盛り上がってきて20cmくらいの人形になった。
その人形はぴくっ!と動くと頭の部分をきょろきょろとし始めた
「これは?」
「うーん、ハイノームとでも言おうかしら?私の一部を植え付けた精霊ね。自立して生物として生きるけど、私と繋がっている存在。この子達なら制限なく外に行けるみたいなのよね。ほら、近い事してもすぐに死んじゃうでしょ?さっきの小鳥みたいにさ」
ほう、それはなかなか興味深いね。
確かに小鳥君はもう死んでしまっている、享年3時間程度だ
「詳しく教えてくれるかな?」
「良いわよ、私達って元はと言えば精霊じゃない?」
「今もそうだと思うけどね」
「話を折らない……だからか、精霊を産む時は私たちの存在を植え付けやすいのよ」
「うん」
「もちろん、精霊らしく依代は必要なのよ?でもそれって体内に埋め込むことも出来てね、そうすると何処にでも行けるようになっちゃったのよ」
考えもしなかった…私が暇で散歩してたのと同じようにリコリアは研究でもしてたのだろうか?
私たちってそういうことも出来たんだ、びっくり
「ルクアリア聞いてる?続けるわよ」
「うん」
「とにかく、そうやって生み出した精霊と繋がればいつでも外の事もわかるし暇つぶしが出来るんじゃないかってそういう事よ」
「へぇー、リコリア頭いいね、頭ないけど」
「でしょ?因みに当然依代が壊れたら死ぬわ」
そう言いながら人形のおなかを潰すリコリア、人形は少しもがいたが、事切れてしまった。
「その辺は普通なんだね、それで?リコリアは何処に送るつもりなんだい?」
「シュバリアの方かしらね?ついでにあの子に挨拶しに行っても良いし」
「へぇ、じゃあ私はライオノールの方に送ろうかな?それぞれで育った後に交流会とかさせても良いかもだし」
「それ良いわね、採用で」
「だったらついでにローリアも誘わないかい?彼女も同じ事出来るでしょ」
「確かに、そうしましょ。じゃあ作る時期合わせましょうか」
「ローリアはどこにするかも聞かないとね」
きゃっきゃっとしながら女子会(数十億歳)も、進むのであった
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「うん、今日は楽しかったよ。ありがとうリコリア」
「こちらこそ、良い暇つぶしになったわ。また会いましょルクアリア」
「ローリアには私から伝えておくよ、君だと遠いだろうしね。」
「助かるわ、そうしてちょうだい、シュベリアとライオノールには眷属が行く事伝えておくわね」
「うん、お願い」
久々の再会だったけど、リコリアは変わりがなくてよかった。
私たち精霊は自然の影響を受けるせいで性格とかもよく変わるからね。
さて、予定も出来たし次はローリアの方に行く事にしようかな
そう思って私は南に向かう事にした。
ルクアリア大森林の南に面する海、ローリア海。
魚を始めとした生物に加えて水属性の魔法を扱う魔物が多く潜んでいる、この世界最大の海洋だ。
ローリアはそんな海の精霊、私達よりも少し歳上のお姉さんなのだ。
どうせ彼女も暇しているだろうし、ついでにちょっかいを出しても良いんじゃなかろうか?
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