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異世界森精霊  作者: P223
12/33

10 緑帽子と疑似繭DIY

チュンチュンと小鳥の声が聞こえる、辺りは明るくなり爽やかな春の朝だ。

天気は晴れ、雲は空に二割ほど見える丁度いい感じとなっている。


「おはよう、テオ」


「起きたか、おはようアリアさん」


私はこの森で出会った緑帽子君…もとい少年テオと一晩キャンプをした。

ねる必要は無いのだけどこういう経験もまた一興だね。


今の私の見た目は少女なので男女2人で夜を明けたが、何もなかった。緑帽子君は奥手なようだ、迫ってこられても私は子供とか産めないし悪い事してしまうだけなんだけどね。


さて、彼は桜虫君の繭の為に私と2~3日待つことになっているが、今日何もしないってのも暇だ。ここは何か提案してみようか。


「さて、テオ。今日は桜虫君の繭を回収した後の為の住処を作ってやらないかい?」


「あの蛾の?……あぁそうか採取しちゃうと孵化するまでに身を護るためのものが無くなるのか。どうすればいいんだ?」


「いくつかの素材を採取してそれを組み合わせることで疑似的な膜が作れるんだよ。まぁまぁ頑丈なやつね。当然孵化したときに破れる程度のものだけど」


「成程…無知ですまないがそれは何を使うんだ?」


「それはこれから探しに行きつつ説明するよ。」


「ここから離れるのはまずい、他人に奪われる危険性があるからな。」


「それは大丈夫だよ、ちょっと待ってね。」


私はそういうと桜虫君の繭とテントを包むくらいの大きさの範囲に幾つかの印をつけていく。

印の範囲に桜虫君と緑帽子君以外の生物を除けるための膜とカモフラージュ用の膜を張る。

ものとしては異物君の出現地点に作ったものに近しいものだね。


「……うん、これで良し。これで1日程度なら奪われたりしないと思うよ。こっちへ来てご覧」


「どれ……!?こ、これって結界ってやつじゃ!?しかも隠蔽結界!?」


「うーん、まぁそんな感じになるのかな?」


「本当貴女は予想外の事をしてくれるな、結界を使える人は優秀な魔術師や神官になれるだろうに学者なんてやってるし」


「学者を馬鹿にしちゃいけないよ、知識は知的生命体において最も強大な力なんだから。ほら、そろそろ行くよ。ついて来て。」


そう言って私はすたすたと歩き始める。


「あっ…とと、悪いすぐ行くよ。」



——————

————

——


私たちは森にある小さな川に来た。今回用があるのはこの川ではなくてこの川の畔に咲く花だ。


「ここには疑似繭のベースの素材になる花があるんだよ。」


「花?どういう物なんだ?」


「そうだね、春から夏にかけて咲いている花で、咲くのに多量の水分と魔力を必要とするやつさ。名前はたしか……スプリングコットンマギカだったっけ?」


「またすごい名前だな、綿ってこんな所で取れたっけ?」


「いーや?そもそも綿花は夏とか秋にもっと熱帯の乾燥してる所で出来るものだからね、ここにあるのは正確には綿花ではないよ、一応植物系の魔物の類さ。無害だけどね」


魔力って凄いよね、本来生えないようなものも生えるんだし。(わたし)には生えないような植物やいないような動物が来てくれるから利点しかないけど


春綿君も今ならもう生えてるはずなんだけど…あったあった。


「あったよ、この子だ。」


そう言ってなっていた春綿君の綿を一つ収穫して見せてやる。花も同時に咲いているのだがなんで花と綿が一緒にあるのかな?この子本当に謎な子だよね


「これが、スプリングコットンマギカか。」


「長いし春綿君でいいよ」


「えぇ……とりあえずこれを何個くらい採取すればいい?」


「大体8~10個くらい?かな」


「以外に少ないんだな、サイズ的に足りるのか?」


「足りるさ、後でわかるよ。じゃあ次に行こう。」



——————

————

——


「次はここだ。」


「ここって、洞窟?」


「うん、最近見つけたんだけどここには魔晶スライムがいるんだよ、彼らの身体を構成している液体が必要なのさ」


ここは、アンナと一緒に閉じ込められた例の洞窟だ、あまり生物が寄らないのかまだ焚火跡が残っている。


「魔晶スライムってなんだっけ、スライムは知っているんだが」


「簡単に言うと溶かす代わりに魔力を吸収するスライムだね、吸われすぎると廃人になるから気をつけてね。火があると割と安全だよ〈焔纏(フレイムフォーム)〉は使えるかい?」


「無理だなぁ、アレを使えるほど魔術には詳しくない」


「そうかあ、なら松明を使おうか、はい」


取り出すふりをして松明を生やして渡してあげる、純私製なので人によっては超貴重品なのかも?


「どこに持っていたんだそれ?まぁ使わせてもらうけど、ありがとう。<発火(イグニッション)>」


「企業秘密さ、じゃあこの奥だ。危ないから離れないようにね。」


少し歩く、この場所に来たのは一週間ぶりくらいかな?もう少し長いくらい?どちらにせよ、結構すぐにまたここに来ることになったものだ。


そう時間もかからないで礼の鉄の扉の所に着いた。前に生やしたフクロコウジカズラはもう完全に見る影もないね。


「ここだ、この扉の先にいるんだよね。」


「こんな所にこんなものが…誰が作ったんだろう、アリアさんか?」


「違うよ、私は基本的に跡に残るようなものは作らないさ。」


私も気にしてなかったせいか誰がこれ作ったのか完全には把握していないんだよね、この辺りにいた生物から考えると時期的に人間なのは確かなんだけど何のためかはわからない、でも頻繁に来てるわけじゃないし何なんだろうね。


「それじゃ、開けるよ——」


パタンッ


中をちらっと見た瞬間思わず閉じてしまった。

そういえばここに私たちの代わりにキラゲル君たちのご飯になって貰った人がいたなぁ…

当然もう事切れているんだけど、キラゲル君の性質上残っちゃってるんだよね…あれが

仕方ない、移動させるか…


「テオ、少し時間がかかるみたいだ。ちょっと待ってね」


「?あぁ。分かった」


私は覗いて彼らの魔力が残ってないかを確認した。

どうやら残っていないようだったのでそのまま転移させる、行先は中層西部だ。この辺りは肉食の魔物が多く生息しているからきっとおいしく頂いてくれるだろう。


少し扉を開いて再度、中を確認する。彼らがいなくなっており、腐臭も消せている事を確認して緑帽子君に声をかけた


「よし、もう大丈夫だよ。入ろう」


「わかった、松明はずっと持っていればいいんだよな」


「うん、あ、瓶とかある?」


「ガラス瓶なら鞄に入っているぞ」


「OK、少し失礼するよ」


「あっちょっと」


ゴソゴソと鞄を漁る、これ魔力鞄(マジックバック)になってるね。見た目以上に物が入っている。

幾つかものが見当たるけど瓶は何処かな。

緑帽子君の顔が少し赤くなっているけど、松明が熱いのかな?


なーんて、私は鈍感じゃないからわかるよ。思春期だねぇ、イタズラしてやろうか


「うーん、何処かなー。ね、テーオ、どんな形?中々見つかんないんだけど」


と上目遣いで聞いてやる。


「うぇ!?わっっとっっ!!普通のやつ!!」


おっと、松明を落としそうになっちゃった。初心だなー、人と関わるのが苦手って言ってたし本当に耐性がないんだろうね。

イタズラは後にしてやろう。

じゃあ瓶を取り出してっと


「これだね、これで魔晶スライムの体液を採取しよう。そろそろ来るしね」


その時、あの時と同じように天井からキラゲル君が降ってくる。

それを片手でコア部分をキャッチ。そのままの流れで体液を採取する。


「これで良し」


「お、お見事。手慣れているな」


「まあね、じゃあ戻るよ。ここは長いするとどんどん増えるからね。」


「そのコアはどうするんだ?」


「これは要らない、それっ」


ぽーいとほうり投げる。キラゲル君は綺麗な放物線を描いて扉から離れたところに落ちる。

因みに、一切のダメージは受けていない。彼らはこういう衝撃に強いからね。


「じゃあここはもう用事は無い、戻ろうか」


「これだけか、早かったな」


鉄の扉を閉じて洞窟から出る、意外とこういう面では便利なんだろうね、あの扉。そういう意図なのかもしれない。


「あ、乾かすから松明貸してね。」


べとべとになってるからね



——————

————

——


さて、戻ってきました桜虫君の繭の場所


「じゃあこれから疑似繭を作るよ。」


「俺は何かすることはあるか?」


「土魔術は使えるかい?」


「あー、無理だ。風も土もダメだ。」


「そっか、じゃあ見ておいて」


と言ってもやる事は簡単。

春綿君の綿を全て取り出す。

それにキラゲル君の体液をよーく染み込ませる。

これをすると魔力がよくなじみいい感じの強度になってくれるのだ。

ここからなのだが、強度はあるが分厚く繭に向かない。硬いしね。

なので土魔術…というより土魔法を使用する。

身体も昨日の夜のうちに魔力を使えるものに変えているので大丈夫なのだ


「えーとそうだな。《なんかあのふわーって感じになってわーってなる感じ》」


「雑すぎない…?」


うるさいやい、私が魔法を使うこと自体殆ど無いんだからいいんだよ。

土魔法を使うことで綿がどんどんと広がっていく。

土魔法-土魔力の特徴は膨張や軟化だ。なのでこういう硬いものを加工することには向いているのだ。反転属性は風魔法-風魔力。こっちは収縮と硬化だね。基本的に地面や空気に使われているからこう呼ばれているだけなのだ。反転属性ってのは炎と氷みたいな感じだ、つまり片方仕えると両方つかえるのさ。


っと話が逸れた。


「うん、これで準備が出来た。後はこれをほぐしていってドーム状にするよ。それが終わったら完成だ。手伝ってくれるかな?」


「よし、わかったやろう。」


緑帽子君に教える感じでやってみたけど、いい経験になったかな?なっているといいね。


そういう事をしながらも二日目も過ぎていくのだった。

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