プロローグ
習作です、ゆるりと不定期に更新していこうと思いますので、もし良ければご覧ください
ルクアリア大森林
この世界において最も大きな森林地帯であり、俺たち人間にとっては多大な恵みにもなるが同時に大いなる脅威とも言える
この森林には多くの生物が生息している、猪や狼などの獰猛な動物や鹿や兎などの基本的に穏便な動物のほかにもスライムやゴブリンといった魔物もいるし、どこかにはエルフの隠れ里もあるって話だ。それに森の深部からは龍の鳴き声が聞こえたという話も出ている。
そんな森のどこかに一人ポツンと放り出されているのがこの俺、平井 拓真だ。
「ったく、どうしろってんだよ…」
そんな風に独り言を漏らしたところで何も事態は変わらない。
そもそも何故このような場所に一人でいるような事になってしまったのかというと、だ
元々俺はこの世界の住人ではない。
よくある話だとは思うのだがこれが噂に聞く"異世界転生"というやつなのだろう。いや、死んだ覚えはないので転移か?まぁどちらでもいいが実際に自分が体験することになるとは思わなかったのには変わりない
ただ、城に転移するとかよくわからん空間に飛ばされて神と話すとかそういうのは無く、いつも通り学校に向かおうと家から出たと思ったらここにいたって感じだ。振り返っても家どころかドアも何もないしどうなってんだよ
で、なぜここが異世界かどうか解るかっていう話なのだが、俺にもよくわからないのだ
ここに来た瞬間に知識だけ得たような不思議な感覚になっている。だが、おかげてこの世界の言葉なども使えそうなのだから一旦は便利に使わせてもらおう。気持ち悪いがな
「まぁなぁ、この森から出ない事には何も出来ないのだがな。家にも帰れそうにないしどうすっかなぁ」
正直に言うと家族とか友達ともう会えないのかとかの不安もあるが、焦ってもどうにもならないし、帰る手段を見つけるためにも森から出たいところなのだが・・・
その前に、折角異世界に来たらやる事があるよなぁ?
「というわけで!【ステータス】!!」
・・・
何も起きない…
「えっと、違ったかな?【閲覧】!【プロパティ】!【メニューオープン】!」
しかし何も起こらなかった!
誰もいない場所で良かった…!誰かに見られてたりしたら痛いやつだったよな…
この【知識】には一応魔法とかはあるみたいだが、ゲームみたいに数値で簡単には見られないってことなのか?いや、普通はそうなのだが異世界だし可能性はあるかと思ったのだがな
右手をシュッとしてみるか、メニューとかでないかな?
シュッ
出ないわ…ゲーム脳で考えるのはやめておいた方がいいのだろうな。
さて、現実逃避もこの辺にして冷静に状況を整理しようか。魔法は今は使えそうにない、武器は無い…木の棒ならあるか?剣道とかやってないし持たないほうがいいだろうが、道は分からない、いつ動物や魔物に出くわしてもおかしくないってぐらいか。
死ぬんじゃないか?俺?
エルフに出くわしたら無事にすむかもしれんが温厚な種族かはわからんしなぁ、オデニンゲンコロス的な感じだったら終わる。と、なるとだ
「適当に隠れながら外を目指すしかないんだよなぁ…」
あぁ…朝飯もっといっぱい食べておけばよかった。食パン一枚でサバイバル突入は辛いって…
とりあえず第一目標は森から出ること、その後に、街を見つけて保護を頼むことだな。奴隷とかにされないように気をつけないと・・・やっぱりこの世界にあるのかなぁ、奴隷制度。
その後には職とかを得て一旦文化的な暮らしが出来る最低限の環境を整えたいと思う。
じゃあ…まぁ……歩くか………
——————
————
——
結論から言うと、驚くほど簡単に森から出られそうだった。
歩き始めて数時間と言ったところなのにもう森の出口らしきものが見える。その先に国だか街だか村だか知らんが人工物も目視できる距離に見えるしな。
一応木の枝とかを拾ったり石を集めたりして即席の武器を用意したが、猛獣とか魔物(?)とかに襲われた時に役にたつ気もしないし、武道とか学校の授業でちょっとやった柔道ぐらいしか知らんので出くわさなくて助かった。
実際食べて大丈夫かはわからんがいくつか落ちてた木の実や綺麗そうな水もあったから意外と暮らしやすいのかもな、でもこういうとこの水って危ないんだっけ?
まぁどちらも口に入れる必要がなくて良かったと思おうか。
「あとはコレか…」
そう言って通学のため持っていたスクールバッグから取り出したのは大きめの岩にはりついていた綺麗な紫水晶のような物。
【知識】が正しければこれは魔石とかいう物だとおもう。割と価値があるらしくそこそこの値段になるらしいから行きがけの駄賃として拾っておいた。
因みに携帯などもあるが圏外だったし、必要になった時に充電切れだと怖いので電源を切っているので最早ただの板と化している。
とりあえず、これで街だか村だかについてすぐ死ぬってことはないと思いたい。身分証明が大変だが。
この森にはある程度したらまた来たいとは思っている。最初にいた場所だし、意外と楽に探索できそう——
『今回は特別サービスだからね、次は死なない程度には強くなってからくるように』
!?
だ、誰かいるのか!?
そう思って辺りを見渡すが周りは木や草や花のみ、人どころか動物すら見当たらない
もしかして幻聴…?
疲れてんのかもな、数時間とはいえ森を歩いてたわけだしこんな状況だもんな。
だがまぁこんな状況で楽に探索ってのは早計か、調子に乗るのは良くないし慎重にいこう。また来るのは情報と協力者を集めてからだな。
それにさっきの声も日本語だったしな、無意識に危険を察知したのかもしれん
さて、外に出られそうだがここで問題が一つ残っている。
今着ている服や持っている物だ。
【知識】から察するにこの世界には俺みたいな服装のやつは居なくもない、が、当然それは学生だ。
こんな森でいるのもおかしいがそれ以上に、俺はこの世界に存在しない学校の学生ということになる。
これを疑われたらどういう扱いになるかわからん、念には念を入れて対策しないといけないんだが…やだなぁ
「でも、背に腹は替えられんよな…クッソ」
そう言って俺は着ていた制服のブレザーを脱ぎ、ポロシャツの学校の校章がプリントされている胸ポケットを引きちぎる…筆箱にカッターを入れてたの忘れてたが、やってしまったのものは仕方ないか
とにかくそれらを全てスクールバッグに入れ鞄ごと埋めることにした。魔石は取り出しておくけどな。
「こんなもんか、無駄に時間かかったな、手はいってぇし服はボロボロで血もついてら」
数時間かけてなんとか鞄を埋められた俺は見るからに泥と血にまみれ、ボロボロの姿となっていた。
これで色々と言い訳も思いついたし結果オーライとしておこうかね。
持ち物は魔石一つのみ、服はボロボロで武器もない。
魔法もまだ使えなけりゃ、チートとかもなし。
実質この身一つで知らない世界に飛び込むわけだ
全く、絶望的だな
「あぁ、でも今最高に充実してる」
イカれてるのかもしれないが、恐怖以上に心が高揚しているんだよな。
こういう冒険ってのは憧れていたものな。
もし、生きて元の世界に帰れたら友達に自慢してやろう、嘘と思うかもしれんけどな。
んじゃ、行くか異世界。折角なんで楽しませてもらうぞ。
そう思って俺は森から見える人工物に向かって駆け出した。
————————覗き見はこの辺にしておこうか
「ごめんね、少しキミの記憶とかを覗かせてもらったよ。お礼として言葉とかこの世界の常識とかの知識は与えとくから許してね?それにしても異世界・・・ねぇ?」
と、どことも知らぬ場所で私は独り言を溢した。
突然この森に異物が現れたので気になって調べさせてもらったが中々興味深い人間が現れたものだね、少しは暇つぶしになればいいんだけれど。
あまり個人に干渉するのは自然ではないけど、元々彼は異物だし、この森から死なずに出られるくらいには補助しておいてやろうか
異世界というのは気になるが、私には関係ない。
そもそも私はこの森から出られないのだし
いや、出られないというのは違うな
このルクアリア大森林そのものが私なのだから。
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