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6話

「こぽぉ~~っっ」


あたしは今夜もキャンプ飯な夕食の『メルメル鶏のシチュー』を全リバースしたっ。


「あにやってんだよ」


「だ、だってっ。ポーション大丈夫だったからイケると思ったんだけどっっ。やっぱ、『お肉』は暫く無理っ!」


普通の状況じゃなかったけど、『殺人の衝撃』は後からくるボディブローとしてあたしのメンタルにダメージを与えていたっ。


「豆とか野菜とスープだけでも入れとけよ、ポーションばっか飲んでるとまたエナジードリンク中毒みたいになんぞ?」


最初の谷の修行でキャンプ飯を日に何度も作るのがめんどくさかったのと、喉も渇くし、魔力もチャージできるから2人で何本もガブ飲みしたらなんか目がバキバキになって胃腸と動悸と血圧が、2人しておかしくなったことがあった。

アレ、勇者の身体じゃなかったら逝ってたと思う・・。死因、『ポーション飲み過ぎ』でリタイアはさすがにカッコ悪いっ。


「わかったよ・・ううっ」


激弱りのあたしだったけど、そんなこと言ってられない! 翌日には普通に出発し、また爆走っ! 一応平原を通り、今度こそ無事な村、というか町に到着した。

買い物だけじゃなく思った以上に状況が悪くなってきてるみたいだから、情報収集も必要だったんだ。



ケンタが接触で透明を伝播できるようになってるから、あたしもケンタのマントの裾を掴んで透明化して、まず2時間くらいひたすら黙って町を見て回った。

結構広いし必要そうな所をざっと。その上で例によってあたしだけ姿を表して買い物開始!


『布の服と檜の棒で油断させる、とかいうフェーズはとっくに過ぎてた』


という了解の元、まずあたし達は装備を刷新した!


気配を消す特性の『忍び装束』で忍びの守りのアクセサリー枠をフリーする! 色違いであたしは葡萄茶(えびちゃ)色。ケンタは鉄紺(てっこん)色。


足音を消す『盗っ人ブーツ』でその特性をさらにサポート!


鉄より硬くて軽く値段もお手頃な『鋼蝎(はがねさそり)の籠手』で守備力アップ!


取り敢えず無難に性能アップの『フード付き魔除けのマント』もGET!


武器は小振りな片手剣『パリィスモールソード』を買った。束のとこにカバーの付いた頑丈な武器! 予備に『ショートソード』を5本ずつも買った。


あたしはミスリルていう高価ですんごい頑丈な金属の『髪止め』で邪魔だった前髪をパッツン仕様に!


ケンタは嫌がったけど鬱陶しかった前髪を斑尾(まだら)蜘蛛っていうモンスターの丈夫な糸で作ったバンダナを任せてすっきりさせた!


「ずっと『見習い魔法使い』で通してきたけど、『見習い忍者』に設定改めよっか?」


レア気味だけど傭兵さんの職業に忍者もあった。たぶん、過去の逃げ延びた勇者の生き残りの影響だと思う・・


「なんでもいいけどよ、ケムコの分身以外でも、ボロが出ないように忍者職っぽいスキルも一応最低限度フォローしとくか」


その辺は普通に売ってる『手裏剣』を何枚か持っとけばしのげるような気もするかも?


あとはアクセサリー類や加工用の素材類や回復や補助系探索系アイテム、キャンプ用品で欠けてたのを買い足して、1つのテーマだった飛行系魔法道具『飛行箒(ひこうほうき)』を購入して、残金が・・


3万ゼムちょい!


になった。うお~っっ、減ったぁ!


売却額用素材の補充は十分じゃなかったけど、あたし達は素材を売りにゆくことにして、なんとか所持金を180万ゼムくらいに増やし、ここでも本を買いにいくことにした。


飛行箒の使い方もだけど、今持ってる飛行系は『浮遊』スキルだけで、他は念力スキルで無理矢理浮くだけだから、『初級飛行』スキルが取れそうな本は優先的に買った。

ルート上の地理や天の神と地母神関連性もしっかり目に。

買った本は十数冊で、所持金は一気に50万ゼムくらいに減った。


「物価の基準がよくわかんなくなってきたよ・・」


悲しいくらいすぐ減ってくんだ・・


「日本、つーか地球に無い物ばっかしだしな。飯食ったら本格的に情報収集すんぞ?」


「落ち着いて食べたいから個室の店行こっか? ケンタも姿出せるし」


「んあ~?」


食事あんま興味無いんだよね、君さ!



蒸し料理の店の個室に入って「朝食、食べそびれちゃってっ」なんて店員に言いつつ、たくさん頼んで料理が全て運び終わるとケンタは姿を表した。


「頼み過ぎじゃねぇか?」


確かに、3人前は頼んだ。


「お肉、まだ食べれないからなんかカロリー足りない感じで」


次、いつ村や町に寄れるかわからないし、なんならこれが最後の晩餐かもしんないし・・


「ま、いいけどよ」


ケンタは宝物庫からキャンプ用のナイフやフォークや箸を取り出してガッつき始めた。


「行儀良くしろ、とまでは言わないけど、もうちょっとちゃんとしなよ? ワンコみたいだよ? 地母神神殿行くまで先が思いやられるわ」


「うっせっ」


はぁ~、もうっ。どっか落ち着いたタイミングで食事のマナーは教えないと、だわ。

なんて考えつつ蒸し料理を食べだしていると、


(すいませんっ、『テレパシー』スキルです! 攻撃じゃないですっ)


卑屈な感じの女の子の声があたし達の頭の中に響いた。


「っ!」


あたし達は即座に食事を中断して、宝物庫からパリィスモールソードを抜いて構えた!


(あっ、待って下さい! 攻撃じゃないですってっ。私も勇者候補者です! 窓の外の路地の物陰にいますっ。そちらの状況がわかるのは『中級透視スキル』と『中級盗聴スキル』で把握できてるからです! 私の固有チートスキルは『リープ』ですっ。その日、私が目覚めた時間に3回まで戻れる力です。攻撃する能力じゃないんです!! 地母神神殿を目指してるんですよね? 私もですっ!)


あたし達は顔を見合わせた。


「確認、してみる?」


「嘘でもホントでもこれ以上同行者を増やす必要は無い気がするけどなっ」


あたしとケンタは暫くにらみ合いみたいになったけど、ケンタの方が折れて視線を逸らした。


「オイっ、聴こえてんだな? おかしな真似をしたら即、殺っちまうぞっ?」


(それは凄くよくわかってますっ!!)


「はぁ?」


「窓、開けるよ?」


あたし達構えを解かず、窓に近付き、ケンタはパリィスモールソードを左手に持ちかえて、右手に宝物庫から引き出したショートソードを投擲できるように構えた。

スプリガンスキルによるアクセサリー適用は守備系で固めたっ!

頷き合って、あたしは念力で個室の窓を開けた。

通りの先、路地の物陰にっ、確かに高校生くらい? の三つ編みの、アラビアンなテイストの服を着た女の子が、


『私は今日、既に3回死に戻ってます。内、2回はあなた達に殺害されましたっ!! 話を聞いて下さい!!! HELP!!!!』


と書かれた看板を抱えて号泣していた。こっちの世界の言語じゃないから逆に一瞬読み辛かったりしたけど、


「・・頭、オカシイやつじゃねーだろな?」


「いや、それは」


2回、私達、殺っちゃってるの?? よくわかんないけど、『自称』リープ能力者の三つ編みの女の子と話してみることになったよ。



というワケで約10後、あたしは『万歳』の体勢で震えてる三つ編みの女の子に対して、蒸し料理屋の個室で、粘着質に全身を舐め回すように『初級透視スキル』で透視しまくってた!


「ケムコ、手加減すんなよ? 宝物庫のストレージとスキルリスト、魔法リスト、ステータス評価リストだけじゃ甘いっ。ケツん中に俺達を即死させるアイテム仕込んでるかもしれねーからな! 徹底的やんだっ」


「了解っ!」


「ひぃ~っっ」


『初級スキル鑑定』『初級魔法鑑定』『初級ステータス評価』のスキルで先に一通り見たけど、スキルと魔法は自己申告通り。チートスキルのリープもあった。でもステータスがおかしかった。


「貴女、『トキコ』さんだっけ? ステータス低過ぎるんじゃないの? 勇者候補者でしょ?」


「ですからっ、何度も言ってるじゃないですか! ノーリスクでリープできるの1回目だけです。2回目でステータス半減っ、3回目で一般人レベルまで落ちるんですっ!」


「はは~ん? 疑わしいなぁ? 大人しそうなのに、装備の下は意外とボリューミだし~」


「関係無いじゃないですかっ」


「コンソメスープかと思ったら、『ハヤシライス』だよ~~?」


ふっふっふっ。


「意味がわからないですっ。なんですかこの時間っ?! 私にこれ以上の材料は無いですからっっ」


「もういいケムコ。おちょけるだけだ。俺はケンタだ。トキコ、お前の能力は明日検証する。信用するかどうかはまた別だけどよっ」


「え~っ?」


「まぁまぁそういうことだから! あたしはケムコ。取り敢えず、御飯食べよ? ちょっと冷めちゃったけど」


「あ、はい。え~と、改めまして! トキコ・・ですっ」


名字を名乗らないあたし達にちょっと困惑しながら、トキコさんは端に避けてあった予備の椅子の1つを持ってきて席に着いた。

あたし達は『暫定』でリープ能力を持つ勇者候補者と仲間になった、のかな? ん~、主人公っぽい能力だね!

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