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4話

ケムコとケンタ以外にも早々に激突している勇者候補者は存在した。

その一組は・・


「当たれっ!」


多数の『光の剣』を飛ばす勇者候補者マツダ。


「ふぇっふぇっふぇっ!!」


嗤いながら、身体をガスを発生させるドス黒い液体に変化させ、自在に直撃を避ける勇者候補者カナヤマ。

カナヤマは液体化したまま、マツダに向かって突進する。液体の身体が多少斬られ刺され焼かれても構わず進み続けたが、ついには数十の光の剣に貫かれ焼き尽くされて消し炭となった。


「はぁはぁはぁ・・相性が悪かったな。話し合いに応じないからだ!」


疲労困憊のマツダは言い放ったが、


ドォッッ!!!


マツダの背後の地面を突き破り小さなドス黒い液体の渦が背中からマツダの布の服を貫いていった。

液体は『猛毒』で、マツダは勇者の回復力を発揮することもできずドロドロに溶かされて死んだ。

マツダを貫いた小さな毒液の塊は幼児の姿に変わった。


「ふぇっふぇっ! 話し合いだぁ? スキルの理解もなってねぇしっ、間抜けがよぉ! 日本じゃいい育ちしてたんだろぉ? こっちでまでいい顔できると思うなよぉーーっ!!! ふぇっふぇっふぇっ!!」


毒の幼児は毒の腕を伸ばしてマツダだった毒液を吸い上げ、元の陰気な顔の大人のカナヤマの姿に戻った。


「ああ~、服、いるなぁ。どっか原住民でも襲うかぁ? ふぇっふぇっふぇっ」


カナヤマはひきつったように身を捻って笑い続けた。


カナヤマ以外にも凶暴な勇者候補者は少なからずおり、無意味に複数のアリエスティア住民を『荊』で縛り上げて苦しめて殺害する者、『炎』で村を焼き付く尽くす者。『誘惑』の力で女達を操り村の男達を全滅させてハーレムを作る者、手当たり次第『捕食』する者、『ガラクタの巨人』を造り出して村を踏み潰してゆく者等もいた。


中にはひたすら僻地で自分を『鍛える』者や、状況に関わらず『農業』を始める者、『鍛冶』に打ち込み出す者、『下級女神を召喚』して連れ歩く者、人知れず『ループ』しながら不利な状況から逃げ回る者等、積極的に争うことはない様々な者達もいた。


勇者候補者達はそれぞれのやり方でアリエスティアで第2の人生と戦いを始めており、あるいは早々に滅び、異世界の塵と消えた・・



村で本を獲得してから2日。あたし達は何度が行き来しつつ、村から離れた山地の谷を根城にしていた。

ここにもモンスター達はいたけどあたし達が『狩り』や『練習』をする内に、残ってた子達も全員退散しちゃった。


「ファイアーアロー! ブリザード! サンダーボルト! トルネード! クエイク! アクアナイフ! グラビティボール! マナボム! ホーリーライト! マイナスシェード! ポイズンファング! アッシドクラウド!」


ドドドドドッッッ!!!!


あたしは一通りの属性の攻撃魔法を谷の岩場に連発して、岩場を地獄みたいにした。


「う~ん? こんなもんでいいのかな? 本の通りにやってみたけど??」


「いいんじゃね? どうせ」


ケンタは漬け物石くらのを拾うと離れた所にあった大岩に投げ付けて、大岩を粉砕し、その後ろの岩も次々貫通していった。


「パワーだけなら『投石』が一番強い。攻撃魔法は状況作るのに使い分けられたら十分だぜ」


まぁ訓練でさらにフィジカル強くなってるもんね。


「それよりか、だ」


ケンタは自分の宝物庫から勇者関連の本を2冊だした。あたしもだけど『念力』スキルが使えるようになったからいちいち手を入れなくてよくなってる。


「俺もお前も、覚えられる範囲のスキルと魔法は覚えたし、この世界の一般常識も大体わかった。あとは『勇者関係』だ」


「うん」


あたしは『近距離テレポート』スキルでケンタのわりと近くに移動した。

ケンタは勇者関連の本を1冊あたしに念力で渡した。

2人でそれぞれ開く。あたしが開いたページでは壁のような神が見下ろす中、多数の勇者候補者達が2つの陣営に別れて対立する挿し絵が描かれていた。


「このクソッタレ異世界は、数百年周期で魔族達が活性化して『魔王』が発生する。壁野郎はこれに合わせて、勇者候補者を100人召喚して競わせ、一番強い本物の『勇者』を手っ取り早く育成し、魔王を倒させる。魔王を倒した勇者は神によって願いを叶える権利を得る。それがクソッタレ世界でクソ壁野郎が俺達に強いてきたクソルールだ」


「ケンタ、クソクソ言い過ぎ」


お下品。


「ケッ」


「でも」


あたしは別のページを開いた。そこには女神に祈りを捧げる少数になった勇者候補者達が描かれてた。


「勇者の争いを強いる天の神の支配の及ばない、地母神神殿までたどり着いた勇者候補者は、天の神から与えられたチートスキルを放棄するのと引き替えにこの争いから離脱できる! 元の世界にまでは帰れないみたいだけど・・このルールには、抜け道があったっ」


これってホント画期的!!


「俺はこの地母神とかいうヤツが善意でやってるつーより、天の神の『権限の独占』を妨害してるんだと思うが、どっちにしろだ! 同時期に複数生き残った勇者候補者達がこの世界の社会や歴史に何千年単位で影響を与え続けてるらしいのは間違いなさそうだ。信憑性は高い。こりゃもう『離脱者』がある程度出ること自体、システムとして組み込まれてんだろ」


権限の独占、とかケンタ的思考だよね。でもわかなくはないかも?


「神様同士が直接争うのを避けてる感じもするよね。天の神もなんか、すんごいモンスターだったけど、地母神もきっとそうなんだと思う。実体のあるモンスター同士なら無駄に潰し合いたくないんだよ」


神様、って信仰の中だけにしかいない方がいいのかもしんない・・


「化け物同士の思惑はどうでもいい。問題はお前だよ、ケムコ。どうする? 俺は生き返って日本で復讐したい、つう目的がある。お前は、ちょっとツイてなかっただけだろ?」


酷っ。というか復讐とか考えてんだ。


「言い方! あたしだって死にたくはなかったし、生き返れるなら生き返りたいよ・・」


「場合によっちゃ、お前との契約はここまでだ。勇者候補者を皆殺しにする必要が無いなら、見逃してやんよ」


「あたしに負けたクセにぃ」


「ふんっ。透明を補完するスキルで固めたから、次やったらフルボッコだかんな?」


「う~」


「早く決めろ。俺達は1ヵ所で時間を食い過ぎてる。今日まで無事だったのもそこそこ賭けだった」


この世界、勇者候補者同士の殺し合いとか無いなら嫌いじゃない。チートスキルも別にいらないし。それに、


「・・・」


義母さんや義姉さんと仲良くできないのはもうしょうがない。でも、父さんがあたしに気を遣って子供を作らないようにしてるっぽいのと、そのことで義母さんと揉めてるのは知ってるんだ。

別にいい子になろう、って話じゃなくて、なんていうか、そんなことに自分のリソースを使って生きてくの、しんどいな、とは思ってた。

あたし勝手なヤツだと思う。器、小っちゃい。


「あたしは、地母神神殿を目指してみるよ」


「わかった。じゃあ」


ケンタは速攻で近距離テレポートで消えようとしたからっ、ちょっとまだ遠いから、あたしは慌てて分身を1つ近くに出してケンタの腕を掴んだ。


「んだよ? お前が俺を殺しても、もうメリット無いだろ? ここ数日無事に乗り切れたのはこっちが2人だから警戒された可能性はある。ケムコ、お前は役には立ったよ。一応な」


「・・違う!」


「は?」


もうっ、コイツは! あたしと同じ文法の脳ミソじゃないからっ、いちいちグーでパンチするみたいな会話になるんだよ!


「地母神神殿まで結構遠いじゃんか? そこまで一緒に行けばいいんだよ。2人の方が安全! 時間が立てば『殺る気』のある人達は勝手に減るだろうしっ、それに2日でこんなに強くなったんだよ? 神殿に着く頃には凄く強くなれるよ? メリット、ある!」


ケンタは、たぶんあたしと2センチくらいしか違わない目線で、ケンタ的な斜めから見る感じで、しばらくそのままにしてたけど、不意にあたしの手を振りほどいた。

ほどき方、強っ。つんのめるわ!

あたしは掴んでた方を本体に指定して、さっきまで本体だった方をぽふんっ、と煙と共に消した。


「・・わかった。ケムコは分身するから弾除けになるしな」


「最低だよ!」


「へへっ」


あー、もぅっ、めんどくさい! なんだかんだで、2人で地母神神殿を目指すことになった。遠いんだよね~

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