第四話『登場人物たち』
ちょっと登場人物紹介させてください。
☆★☆ 冬二の学校生活 ☆★☆
学童保育の手伝いを始めてからの冬二は、放課後になると急いで帰宅する。
「トージー、お前最近付き合い悪くねー?」
だが、その事を友人たちに指摘されても冬二は動じない。
「あー、俺今、学童保育の手伝いしてるんだ。それがなかなか面白くってさ~」
それに隠しもしない。
「なんか最近のトージーってスゲー楽しそうだしまあいっか。暇な時でいいから今度またウチで一緒にゲームやろうぜ」
「お、いいね。土日と祝日だったら結構遊べるから誘ってよ」
そう。 親が休みだと学童保育に子供は来ない。
「じゃ、今度の土曜日ウチに来いよな」
「わかった。楽しみだな~」
冬二は最近、だいたいこんな感じの学校生活を送っている。
☆★☆ 休みの日の冬子の日常 ☆★☆
平日の冬子は、学校帰りに学童保育に行けるからといつもニコニコしているが、休日に家にいるときは必ずしもそうではない。
むしろ無表情で暗い。
父と母が離婚する際の激しい口論を目の前で見てしまったからだ。
親たちが気付いた時にはもう遅かった。
その時から、冬子にとっては、父も母も好きではない人になった。
知らない人の前では怯えて母に隠れるが、母と二人きりでいる時は全くと言って良いくらい甘える事をしない。
「お兄ちゃんの所に行きたいな……早く月曜日にならないかなぁ……」
母の雪子に公園で遊んでもらっていても、一緒に買い物をしていても、冬子の心は常に野村冬二に向かっていた。
☆★☆ 冬子の母雪子 ☆★☆
仕事が決まった。
土日と祝日がお休みで、子育てに優しい職場だが、正職員にはなれなかった。
経験も資格も、なにも持っていなかったからだ。
給料だって安い。
アパート代、食費、光熱費、それに学童保育にだって月謝はかかる……
夫の浮気による離婚だったから、慰謝料は取れるだけ取れたので、まだあと数年は持つと思うけれど、このままではいずれ生活が詰んでしまう。
今の仕事を頑張りながらも、雪子はより良い待遇の仕事を探し、将来の事を考えて、いつも大いに頭を悩ませている。
☆★☆ 冬二の祖父 ☆★☆
冬二の祖父、野村春巻。
5人姉弟の末っ子だが、一人息子で姉が4人いる。
優しい気質だがわがままで、実は畑仕事が大の苦手。
だが、人を使うのが上手かった為、3人の息子の他に数人のお手伝いさんを雇って、上手く農業を続けていた。
だが、妻を扱うのは下手だったようで、ある日突然
「農家の嫁が大変だというのは分かっていましたが、もう耐えられません」
そう言い残して出て行った。
そういえば、まだ離婚届を出して無いような気がするが……
わりと細かい事は気にしない性分なので、そんな事などどうでも良く、確認なんかする気もない。
元妻、或いは出て行っただけでまだ妻であるかもしれないあの女が、今どこで何をしているのかなど、全然気にもしない男。
それが冬二の祖父、野村春巻の正体だ。
☆★☆ 冬二の父 ☆★☆
いい加減な父を持ち、手のかかる弟二人の面倒を見ながら成長した冬二の父、野村夏樹は、超が付くほど効率を重視する真面目人間である。
田んぼも畑も、綿密に計画を立てて、計画通りに仕事を遂行する。
もちろん、台風や大雨などで仕事が出来ない日があることも計算に入れて、身体にも心にも畑にも優しいスケジュールを作る。
また、夏樹は大きく頑丈な体に恵まれ、学生空手のチャンピオンだった過去を持つ。
そのくせイケメン(当時はハンサムと言われていた)で、女子にはモテモテだった。
ある日、夏樹の父春巻がトラクターを購入すると、そのたくましいフォルムにべた惚れし、トラクターの整備と洗浄が、唯一で最大の喜びとなった。
その後夏樹は、美女に逆プロポーズされて結婚して長男秋一を授かったが、やはり農家の嫁と言う激務に耐えかねたのか、あっさり離婚した。
美女は秋一をも連れて行こうとしたが、なんとか説き伏せ親権は夏樹が得た。
夏樹は、男手一つで秋一を子育てしていたが、そこはやはり当時のハンサム。
今度は地味だが優しそうな見た目の女性に、再度逆プロポーズされ、あっさり再婚した。
少し年は離れたが、次男冬二を授かった。
だが、優しそうな見た目のその女性、実はあまり優しくは無かった。
度々口論をし、畑仕事なんかしたくないとごねた所で、義理の息子の秋一に
「義理の母は役立たず」
と、言われた。
だが、それだけでなく、秋一は冬休みの宿題の習字にまで『義理の母は役立たず』と、書いて提出していた。
とても上手に書けていたが、内容が内容なだけに、秋一が先生に褒められることは無かった。
優しくない女はこの事を後から知って激怒した。
「もうこんな家には居たくない!」
そう吐き捨てて出て行き、夏樹はついに二度目の離婚をした。
真面目で働き者の、いい男なのだが、多分女運が悪いのだろう。
冬二の父、野村夏樹とはそういう男だ。
☆★☆ 冬二の兄 ☆★☆
母に捨てられ、厳格な父を持った冬二の兄、野村秋一は、誰もが認める不良少年だった。
特に父と再婚した二番目の義母とは全くそりが合わず、反発するか無視するかの態度しかとらず、夜は度々どこかへ遊びに出かけていた。
なら、日中はどうしているかと言えば。
実は真面目に畑仕事をしていた。
早朝も、休日も、放課後でさえも。
根は真面目なのだ。
だからこそ、いい加減な奴には反発する。
やりたくないならやらなくていいから、別な事で役に立てばいい。
そう言う考えが根幹にあるからこそ、畑仕事はサボるが人を上手く使う祖父を尊敬するし、真面目に働く父について行く。
だが、義母はやりたくないからと言って何もせず、代わりに別の事で頑張ろうと言う事も無い。
だから嫌った。
学校でも秋一は尖っていた。
半端な虐め野郎を家の畑に連れ込んで半殺しにした事など、手足の指では数えきれないほどにやった。
「強い奴が弱い奴を虐めてもいいってんなら、俺がお前らをどうにかしても文句ねえってことだよな」
冬二の兄、秋一の決め台詞である。
とにかく喧嘩好きで、弟の冬二にも強くなって欲しくて喧嘩を教えていたが、ある日父夏樹に見つかり、
「喧嘩よりも空手の方が効率が良い」
と、空手を教わることになった。
「喧嘩には無駄な動きが多いが、空手には無駄な動きが無い」
『喧嘩は悪』などとは言わず『効率が悪い』と言い切る、父の夏樹も大概おかしな男だが、そう言って秋一の事を頭ごなしに怒らずに認めてくれている点で、秋一は父に感謝すらしている。
ただ『時には無駄な事もある人生の方が本当は楽しい』と思っていても、父には何となく逆らえないから言えない男。
それが冬二の兄、野村秋一と言う元不良の素顔だ。
4コマ風小説と言うものを考案しました。
今後、短い展開で話が飛ぶような感じになります。
もしよければ、感想意見、批判提案などをコメントしてくだされば嬉しく思います。
どうぞよろしくお願いしますm(__)m