第五話『入学直後の親睦会』
☆★☆ 参加できない親睦会 ☆★☆
4月7日(金)放課後の教室。
「なあみんな、暇な奴だけでいいからさ、今日これからカラオケで親睦会やらね?」
「いいねいいねー俺行きたい」
「私たちも暇だし行ってもいいかな?」
爽やかなイケメンで運動神経抜群の『小野寺純』が、クラスのみんなに呼びかけた。
俺とは小学校で6年間同じクラス、中学校でも1年の時同じクラスだったこともあり、俺は小野寺の事は良く知っている。
コイツは何かと俺に対抗意識を燃やして来るが、そのやり方が陰険で、俺はコイツの事が大の苦手であり大嫌いだ。
ちなみに夏音も小学校の6年間はこの小野寺とは同じクラスだった。
その夏音が、俺の方をチラチラと気にしている。もしかして行きたいのだろうか?
昨日入学式で、今日は始業式。
楽しい高校生活のスタートダッシュを決めるのに、この親睦会はかなり有効だろうとは思う。思うのだが……
「夏音? 行きたいなら行ってもいいよ。俺はバイトで行けないけど夏音まで俺に合わせて我慢する事は無いからな?」
「え~と、うん。じゃあ、行ってみようかな?」
「ああ、楽しんで来いよ」
こんな俺たちのやり取りを聞いていたクラスメイトの一人が
「あれ? キミ達ってもしかして付き合ってるの?」
と聞いてきた。
俺たちはその答えをあらかじめ用意している。だから
「そうだよ」
と、正直に認めると、クラスメイトたちが沸いた。
「おおお~~! サスガは高校生だ。中学時代とは何かが違うぜ」
「俺も彼女欲しい~」
俺たちはどうやらクラスメイトたちの恋愛脳に燃料を投下してしまったらしい。
「俺も行く!」
「オレも~」
「私もー」
「わたしも~」
結局、クラスメイトの大半が参加することになった。
「じゃあな、夏音、楽しかったら夜にどんな感じだったか教えてくれよな」
「うんっ」
今日の下校は一人で帰ってそのまま『山忠犬王』のバイトに精を出した。
☆★☆ 夜の通話 ☆★☆
中学時代の仲良したちは俺だけが1組で、他の4人は2組になった。
女子3人組も夏音だけが1組で、他の2人は2組だった。
少し淋しい。
夜、夏音から通話で連絡が来た。
「お、こんばんは。どうだった?親睦会は」
「こんばんは~。楽しかったって言うより大人数過ぎて疲れたよ~」
「ははは、お疲れ様」
「あとね、冬二くんといつから付き合ってるの?だとか、どこまで進んでるの?だとか、うるさく聞かれてもう参りましたー」
「うわっ……俺、今日バイトで良かったわ~。そう言うの超苦手」
「ひどっ、私だって超苦手ですぅー」
「ごめんな~俺今日バイトで~」
「むうーーーーー感情がこもってない!」
「まあね、あ、日曜日どうする? デート、したいんだけど?」
「う~ん……どうしようね~?」
「俺さ、実はさ……」
「なになに?」
「私服、ダサいのしか持ってないんだよね? だからさ」
「おっ?おっおっ?いいの?私の好みを押し付けちゃったりなんかしても?」
「う、うん。よかったら夏音の好みでコーディネートしてくんね?」
「よっしゃー! 私にお任せなさいっ。あ、一応予算だけ教えて?」
「う~ん……3万円!どうだっ?」
「よしっ、日曜日のプランは全部私が考えるから、冬二くんは何にも考えないでいてね」
「あ、ああ! わかった。任せる」
「よしよし、任されたっ」
その後もしばらくとりとめのない会話をした俺たちは、金曜の夜と言う事もあって深夜1時頃まで会話を続けた。
☆★☆ 涙 ☆★☆
寝る前にトイレに行って、部屋に戻りベッドに入ったら、なぜか冬子ちゃんが俺のベッドで寝ていた。
「あれ?冬子ちゃんいつの間に?」
まだ明かりは消していなかったから冬子ちゃんの肩をゆすって起こそうと思ったが……
瞑った瞳から涙が流れているのを見て、起こすのはやめた。
なにか怖い夢でも見たんだろうか……?
心配になった俺は、そっと冬子ちゃんに寄り添う。
そして、約一週間ぶりに冬子ちゃんと一緒のベッドで眠った。
眠りにつくまでは、意識がある限りはと、冬子ちゃんの頭をなでなでしてあげた。
怖いの恐いの飛んでいけ~
そんな願いを込めて……




