拝啓、私を裏切った貴方へ
楽しんで頂ければ幸いです。
私を裏切った貴方へ。
もう、決して君に読まれることのない手紙を書くことを、どうか許して欲しい。
いいや、許されることはない、か。
もし、一度でも君が許してくれるなら。
どうか。
どうか、君の声を聞かせてくれないだろうか?
たった一度でいいから、最初で最後でいいから、一度だけ。
一度だけ、君の声で私の名を呼んでくれないだろうか?
それから。
全てが君の選択だったなんて思えない。
君が、僕が傷つくのを案じてくれたのは嬉しいが、やはり、僕は傷つくべきだと思う。
傷ついて、自覚すべきだと思う。
何を、とは書かないけれど。
それから。
君があの木のことを覚えていたなんて、驚いた。
てっきり、もう、忘れているのかと。
あの木の下で君に誓った言葉を覚えている?
「ーーー、ーーー。」
なんて。
子供らしい約束に、君は笑って。
「ーーー。」
って返してくれた。
すまない。
すまなかった。
そして、また、君のお願いを叶えられそうにないことにも。
何度謝っても足りない。
何度謝っても。
何度君との約束を果たせなくても。
ーーーきっと。
きっと、君は何度も笑って許してくれるのだろう?
それから。
君のお願いは叶えられそうもないけれど。
代わりに。
あの木の下で君の名前を呼ぶから。
あの木の下で君の姿を描くから。
あの木の下で君との思い出を語るから。
ーーーどうか。
君も、僕との思い出を語りに来てくれないだろうか?
僕の名前を呼んでくれないだろうか?
僕の姿を浮かべて、そして。
僕の前に現れてくれないだろうか?
最後に。
もし、君が一度でもこの手紙を読んでくれたなら。
僕の名前を呼んで。
もう、忘れてしまっているかもしれないけれど。
もし、覚えていたら。
覚えていたらでいいから、僕の名前を呼んでくれないだろうか?
貴方に裏切られた者より。