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恋人裁判  作者: スルメ大納言
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第一に、彼女が要請される。

 クラス会が開かれた。僕の恋人についてだ。タガナワというらしい。というも僕は彼女を知らない。それとは別の、名前の怪しい女子生徒がなじる。

 「アガナワくんとタガナワさんは学園一のカップルです。ところがこの頃、アガナワくんはタガナワさんを忘れてしまったとは事実であります。」

 あるいは僕自身、文句を言われている装いではないので、その限りで、この場は別に糾弾というでもないらしい。

 「彼女が僕の恋人であるのは事実らしい。よって僕は彼女を気に掛けねばならないが、どうだろう。その仕方が分からない。」

 「お前は酷い。とは言わないが、だからこうして集まったんだろう。」

 任意の顔見知りが、といっても、隣の席のそいつが口を挟む。

 「ああそうなのか。そうだな。じゃあ始めようか。まず彼女の顔は?」

 これを言ってしまって一瞬、勝手に驚いたが特に何も無かった。何も無かったとは何も応えが無かったから。あるいは一度に全部を聞いてしまったかも知れない。

 名前の怪しい女子生徒が識別可能な声で教えてくれる。

 「それはあなたの知っているとおり。」

 それとは別の、隣の席のそいつが口を挟む。

 「顔から聞くのは褒められないと、そういう流行りだから覚えておけばいいさ。」

 ここで一度立ち上がって、あるいは腰を浮かして再び落として、

 「じゃあ、体から始めよう。」

「ああ、まだ何も言わないで。そうだな。これは人間であるのだろう?」

 「ええ。」

 「やっぱり。」

 しかし残念そうなムードは無くて、これは専ら僕の下顎が、と言っても嘘なので、何でもない。

 「じゃあこの中の誰かがなってくれるというのは?」

 ここにおいて一切が顔をしかめる。

 「そんなことはないし、そも、どうなるかでなくて、ただ今どうあるかについてだよ。」

 そんなことは聞いていないし、だからといって聞かされたとも聞いていないので、何も言うことは無い。

 「じゃあそうだな。君達に聞いても駄目だ。とはその様であるから、僕がそれを言っているかどうかだけ確かめていこう。」

 ここにおいて一切が起立する。

 「僕にとっての他人であるよね。」

 名前の怪しい女子生徒が「はい。」と言った。

 「僕にとっての恋人であるよね。」

 隣の席のそいつが「ああ。」と言った。

 「ここにおいての実体ではなくともいいんだよね。」

 それとは別の、隣の席のそいつが「違う。」と言った。

 「君は勘違いをしている。やっぱり君には任せない。それは今現に、俺達に見えていなくてはならない。」

 「しかし僕に見えていなくてもいい。」

 「それは君の話。今は、」

 今は、タガナワがそこにあるから、少なくとも気の利いた会話文を。

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