バラとかバラとか
外では、ちょっとトラブルがあって、スズとロバートは戻ってきたけど、もう一度、外に出た時は、問題はなかったようで、僕が欲しいものを持って帰ってくれた。
「本じゃないんだ」
「印刷機で印刷したものだって」
「?? 文化水準が違いすぎて、わからないけど、そういうものなんだね。アリスさんには、後で、お礼言わないと」
紙の束を何かで綴じたものを持って帰ってきた。仕事がはやいのは、文化の違いだね。助かる。
僕は勉強しないといけないので、それに目を通しながら、スズとお話する。
「ねえねえ、スズ、お菓子をくれた女の人たち、何か言ってた?」
お菓子は一個だけ食べたが、美味しかった。けど、一個でいいや。
「そういえば、ポーに男たちの罰を考えてほしい、みたいなことを言ってた」
「ああ、あれ。もう考えてある。後で話に行けばいいのかな?」
「でも、ここ動かないんだよね」
確かに言った。けど、暇なんだよね。
ペラペラと勉強するけど、僕はともかく吸収がはやい。このニホンゴも、日常会話程度は習得できるだろう。
最初は初級で、次は中級、そして上級である。僕が使う言語の組み合わせが違うので、そこはまあ、初心者らしくする。残るは、単語をニホンゴに変換しなきゃ。辞書あるかな?
スズとロバートのお使いで、苦情も出た。僕たちは悪くないのに、怪我人が出た、とか言ってきたので、状況を聞くと、言いがかりだ。
「だいたい、スズは僕の所有物ですよ。そちらが手をあげていい相手ではないでしょう。なんですか、野蛮な王国の物は壊していいのですか? そうだったら、徹底的に争いましょう」
おもちゃが来た、と僕は喜んだのだけど、アリスさんが仲裁に入ってしまったので、おもちゃは去っていった。暇はよくない。
スズはロバートの所業が怖いようで、距離を置いた。僕のほうが、本当は怖いんだよ、スズ。ロバートなんて、可愛いのに。
口には出さず、この状況をそのまま放置して、僕は勉強を終了する。
「それじゃあ、その女性隊員? の皆さんがいるところにお邪魔しましょう。ロバート、何か持っていくものはありますか? 手ぶらはさすがに」
「王国の焼き菓子ならありますよ」
「あまり、美味しくないですけど、それにしましょう」
一応、僕は王族である。礼儀を重んじないといけない。
というわけで、僕は女性隊員がいるぷれはぶ? に行くこととなった。
ノックすれば、何やら、中でバタバタして、待たされたけど、中にいれてくれた。
「すみません、お約束もなく、お邪魔してしまって。いただいたお菓子のお礼に来ました。王国の焼き菓子ですが、良かったら、食べてください。味は、それなりです」
「わざわざ、ご丁寧に、ありがとうございます。こちら、座ってください」
綺麗な女性がいっぱいだ。離宮に戻ってきたように錯覚する。
座り心地がよい椅子に座らせてもらい、飲み物も貰ったが、そちらは手をつけない。ハニートラップかもしれない。
「スズから聞いたのですが、罪を犯した男どもの罰則に悩んでいるとか」
「そうなんですよ。ポーくんなら、どうしますか?」
「僕のお祖父様のお気に入りに、女侯爵アナという女性がいます。彼女は、バラ派やらユリ派やらを貴族の女性の間で広めていきました」
「ほうほう、そちらにも、そういうものがあるのですか」
「僕は、どちらも興味がありませんが、アナはバラのほうが好きだそうですよ」
「なーるほどー。そういう感じですか」
「せっかくなので、すごい人を準備してください。お祖父様も言ってましたが、こういうトコにはいるそうですね」
「いますいます! 私、友達!!」
「前線じゃなかったら、すごい人を紹介したんですけどね。お祖父様の部下で、すごい人がいるんですよ。男も女もいけるって人」
「そんなにすごいの!?」
「コントロールが出来るそうです。本人は、物凄く嫌がったのですが、仕事だからと、ずいぶんと落としたそうですよ、男をバラのほうに」
アナの兄カイトが、かなり上手らしい。本人は女性大好きなんだけど、いろいろと後ろ暗い過去があって、そのせいで、男の相手が出来ると聞いた。領地にいるけど、お祖父様に頼めば、イヤイヤながら、来てくれそうだ。
僕はちょっと考えて、ロバートを呼ぶ。
「ロバート、ロバート、お祖父様と連絡とれますか?」
「ポー様のお望みなら、とれますよ」
「カイトの力をかりたい、と連絡してください。お祖父様の頼みは絶対ですから、来てくれますよ」
「え、いいの?」
「敵国だけど」
「拷問大得意なので、やってくれますよ。まだ、何かあるかもしれないので、体で聞いてもらいましょう」
僕のお願いに、お祖父様は二つ返事で応じてくれたようだ。てれびでんわで連絡をとって、お祖父様の部下カイトが加わった。
僕の前に跪くカイト。愛しい聖女を手に入れるために、お祖父様の部下となり、騎士をやめても、お祖父様の恩でどこまでもやってくる男だ。
「殿下、ただいま参りました」
「カイト、急に呼び出して、すみません」
「王国の影の剣である以上、王国のためならば、敵地にも向かいます」
お祖父様に対する忠誠は半端ないな。申し訳ない頼み事なのに。
僕は、簡単に現状を説明して、改めて、カイトを見た。カイト、顔を上げない。
「カイトは上手いとアナが言ってました」
「そっちですか」
「ダメですか?」
「キリト様はご存じで」
「ご存じです」
「………」
王族を前にしているので、姿勢が崩れず、苦悩しているようだ。やっぱ、ダメかな?
「………相手は男、ですよね?」
「そうです。カイトはすごいと聞きました。カイト、お願いします」
「………」
「拷問ですよ、拷問」
「そ、そうですね、拷問ですね。わかりました」
カイトの中では、様々な葛藤があったが、折り合いがついたようで、色よい返事をいただけた。
そして、公国側の女性隊員に連れられ、罪人となった兵士たちがいるぷれはぶ? に連れていかれた。
「彼、すごいね! もう、すごいしかない!!」
「どんどんと、落ちてく落ちてく!!」
「すごかったわー」
女性隊員の一部がとても賑やかになった。どこでも、バラ派やユリ派はいるという。公国にも、いるんだね。
「お役に立ててよかったです。カイト、ありがとうございます。せっかくですから、公国の物で欲しいものがありますか? そこに、カタログがありますので、選んでください」
「いえ、当然のことをしたまでです!」
「そう言わず、選んでください。奥方は、何が好きですか?」
「こういう仕事でお礼はいりません!!」
そんな遠慮しなくてもいいのに。僕は拷問のすえの調書をパラパラと流し読みする。これでわかるの? とみんな言うけど、熟読しているよ。
一通り見て、カイトにいう。
「僕も一度、経験してみたいけど、カイト、お願いしていい?」
「謹んでお断りします!!」