ガールズトーク
ポーが難しい話をする、ということで、私は引きはがされた。最初は、怖かったけど、周りは全て女性隊員だったので、安心した。男がいない。
急遽、用意されたプレハブの一室は、女性隊員だけが入ることが出来た。テレビやらソファやらと華やかだ。ポーは優しく接してくれるが、公国の便利なものが部屋になかったので、とても暇だった。
「オレンジジュースにしましょう。確か、未成年よね」
「はい、十六歳です」
「………軍法会議が楽しみね」
集まった女性隊員全員の顔が笑顔だけど、目が笑っていない。
私は座り心地がとてもいい椅子に座らされた。背もたれもあって、すごい。感動している私の前に、アリスさんと同じ歳頃の人が座る。
「私はリリアンです。よろしく、スズ」
「よろしくお願いします」
まずは握手から始まった。美味しいオレンジジュースを飲みながら、ポーに質問されたことと同じ質問がされる。
経験したことをそのまま答えるだけだ。ポーと違うのは、写真をたくさん見せられたことだ。私が奉仕した相手の写真だ。全部、覚えていないので、わからない人のほうが多かった。
上官や、かなり身分の上の人たちなのだろう。写真にうつる服装の勲章がいっぱいの人はよく相手をさせられた。
「大変だったわね」
「毎日、されていたから、大変じゃない。上手な人もいる」
「………」
空気がとっても怖いものになる。ポーも怖くなった。言わないようにしよう。
ポーのところでも食べさせてもらったお菓子がお皿一杯にあった。珍しいので、それを机に並べた。
「食べていいのよ?」
「ポーに持っていくの。ポー、お菓子いつも食べないで、全部、私にくれるの」
「あら、あんなに幼いのに、優しいのね」
ポーの話をすると、女性隊員は穏やかになった。
「ポーに奉仕しようとしたら、物凄く叱られた。もうしちゃダメだって」
「紳士ね。さすが、王族」
「毎日、口づけはしてる」
「それでそれで」
ものすごく、皆、食いついてくる。全員が椅子を持ってきて、私の周りに集まった。
「なんか、口づけで、私の居場所がわかるんだって。だから、毎日、朝、するの」
「どれどれ」
気になるのか、私の唇に触ったり、ティッシュで拭いたした。
「何かあるのかも。検査してみよう。それで、ポーくんは普段、どうなの?」
「寝る時は一緒なの。私のことを猫扱いしてるけど、本読む時は膝枕させるの」
「やだ、スズちゃんにべったりなんだ。独占欲だね、それ」
「ロバートにはスズのこと、猫だって言ってた。恋人は作らないんだって」
「そういう趣味なのかもよ」
「王族だから、特殊なのかも」
「????」
何やら、おかしな方向に話が向かっている。かまわず、私はポーの話をする。
「ポーは子作りしちゃいけないって、いつも言ってる。ずっと一人なんだって」
「ポーくん、何歳?」
「十歳って言ってた」
「まだ子作りは早いよ。でも、王族だから、知識あるよね、彼」
「首輪つけたりして、独占欲の塊だよ。愛されてるね、スズちゃん」
「本当に? 私、ポーに愛されてる?」
そうだといいな、と思う。ポーは私に酷いことはしない。食べ物だって、いつも美味しいものを準備してくれる。
「ポーね、お風呂ないから、川で水浴びしているのに、私には、たくさんのお湯をくれるの。女の子に川で水浴びなんかさせられないって」
「紳士だ紳士」
「こっちの軍隊の男ども、ポーくんを見習いなさい!」
「捕虜になってから、部屋から出してもらえないの。部屋に入るのは、ポーとロバートだけ。ロバートは私のこと、スズ様、と呼んで、何もお願いしなくても、欲しいと思うものを全部、持ってきてくれる」
「ロバートって、誰?」
「ポーの側近? て言ってた。執事服着てる。今日も一緒に来た」
「いたいた! 執事のかっこいい人!!」
ロバートのことは、女性隊員の中でも人気が高かった。いろいろと質問されたけど、ロバートのことはよくわからないので、申し訳ない。
「ポーくん、口では王族だ、子作りしない、って言ってるけど、スズちゃんのことは大事にしているよね。絶対にスズちゃんのこと愛してるって。ほら、お菓子いっぱい持っていってあげなよ」
「いいの? こんなにいっぱい、いいの?」
「これね、私たちが持ち寄っただけで、軍のじゃないの。ほら、子どもが遠慮しない」
可愛い袋にお皿一杯のお菓子がいれられた。
「私、お菓子をこんなふうに貰うの初めて! いつも、口移しだった!!」
「あいつら、去勢されて当然だよね」
「これから、どうするか、ポーくんと話そう。きっと、彼は斜め上の解決策を提示してくれるよ」
あとは女性隊員同士の世間話と、私がポーにこんなことしたら、という提案で話が終わった。
せっかく貰ったお菓子をポーに食べさせようとしたけど、ポーは完全に拒否を見せた。食べ物に対して、拒否感がすごい。
『王族だから、毒殺とかあるのかも。スズちゃんが食べてみせるといいよ』
そんなことを女性隊員に言われたので、食べて、舌の上で転がした。
そうして、思い出す。こうやって、男どもから口うつしでお菓子を貰っていた。同じようなことをポーの前でしようとしている。
「じゃあ、そっちの新しいのを貰うよ」
ものすごくドキドキとして、待っていると、ポーは誰も手につけていないお菓子のほうを手にした。
とても、残念だった。
ポーは王族だから、人を使うことが当然だった。だから、ポーに言われた通りに、ロバートとアリスさんがいる所に向かった。だけど、どこにいるのかわからないので、やはり、手短に人に聞くしかない。
私はロバートと女性専用のプレハブに向かった。ロバートにとっては、敵陣のど真ん中だけど、彼は平然としている。同じ公国民の私は、裏切り者みたいに兵士たちに見られた。怖い。
針の筵の中を歩いていると、やはり、向かってきた。
「この、裏切り者の、悪魔憑きが!!」
私に向かってくる兵士。顔はわからないが、ものすごく怒っている。殴られると、私がかたまっていると、悲鳴があがる。
恐る恐る目を開けると、兵士は片腕を失い、うずくまって、悲鳴をあげていた。
「スズ様、ああ、汚れてしまいましたね。いったん、戻って、ポー様に綺麗にしてもらいましょう」
全く、動じることがないロバートの手には、兵士の切られた腕があった。腕を地面にたたきつけ、ロバートは踏みつける。
「ポー様の物に手を出すとは。王国では、処刑ですよ」
周りで傍観するしかなかった兵士たちは、もう、私に目を向けることはなかった。