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公国の妖精憑き  作者: 春香秋灯
王国からの賓客
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聖域の姿

 洞窟の奥に行けば、複数の軍人とアンナがいます。アンナは、私がやってきたことで、憎々し気に睨んできました。私、何もしていないのに、どうして、こう、恨まれているのでしょうか。

「よくも、ここを支配してくれましたね!!」

「え?」

 現場を見たポーは首を傾げます。ポーは公国側の聖域をいくつか見た経験があります。目の前にある聖域を見て、妖精を使って調べて、としていますが、公国側が怒る要素が思い当たりません。

 こういうものを見たのは、ライルも初めてなのでしょう。聖域をただ、眺めています。

「綺麗だ」

 聖域を初めて見て、ライルは感動します。そして、私に笑顔を向けます。

「これを支配するなんて、神がかりだな」

「戻せ!!」

 アンナは顔を怒りに歪めて叫び、つかみかかってきます。もちろん、ポーとライルが私を守ってくれます。

「何を言っているのですか!? エリカ様は、この聖域の支配権を書き換えていません!!」

 妖精憑きであれば、この聖域の支配権は公国側であるとわかります。

 そうです。私は聖域を妖精で包囲しましたが、支配権の書き換えは行っていません。

「出来るとは言いましたが、書き換えたとは言っていませんよ。早とちりしすぎです」

「だったら、どうして、ここは、こんな風なんだ!? ここはもともと、邪悪に満ちていたというのに」

 私とポーの常識と公国側の常識に矛盾があります。

 目の前の聖域は清浄な輝きに満たされた、静謐な場所です。誰もが綺麗だと感じます。それは、私とポーには普通なのです。

 しかし、公国側は逆なのです。ここは、穢れて、汚物のような場所なのでしょう。

「あまりに酷いので、穢れを全て、私が引き受けたからです。帝国王国では、常識ですよ」

 公国側は、聖域を穢したまま、放置したのです。それは長い年月、そのままだったのでしょう。だから、公国側にとって、聖域とは穢れに満ちた邪悪なのです。

 私は、妖精を通して、この聖域の穢れを全て引き受けたのです。そして、聖域は元の姿に戻りました。

「私はただ、妖精と聖域に請われ、穢れを引き受けたにすぎません。それが、妖精憑きの本来の役割です。そこに、国境はありません」

「エリカ様」

 私の行為にポーは感極まったのか、地面に膝をついた。

 私にとっては、普通で当然の行為です。ですが、王族ポーであっても、これは、尊いことだと感じ入ります。

「ポー、立ってください。大袈裟ですよ」

「はい」

 ポーはすぐに立ってくれましたが、私のこと、尊敬とか、色々なものを混ぜて見てきます。恥ずかしいですね。

 目に見える、王国帝国の経験を持つポーは、私が言ったことを信じますし、感動します。ですが、公国側の皆さんは見えませんし、経験がありませんし、知りません。だから、私がいう事を信じてもいません。

「さっさと、元に戻せ!!」

「無茶言わないでください。一度、抜き出したのです。妖精も聖域も拒否します。やっと、息が出来ると、こんなに喜んでいるのに、気の毒でしょう」

「頭のおかしなことを言うな!?」

「エリカ様に向かって、なんて無礼なことを」

「もう、ポーは黙っていなさい。私はアンナと話し合いをしています」

 ポーは驚きました。このまま、私という理由をつけて、公国側は諍いを仕掛けて、それを私が撃退する、と思っているのでしょうね。

「ポー、公国には、ライルの家族がいます。ライルの故郷は一族です。私のせいで、あの島が蹂躙されることを私は望みません」

「そんなっ」

 ライルはまさか、生まれ故郷のことを考えて、私が大人しくするとは思ってもいませんでした。ライルの中では、もう、生まれ故郷は捨て去ったものです。

「あの島は、厄介なのですよ。人が手を出していい場所ではありません。それは、ライルの一族を含めてです」

 ライルの生まれ故郷である島は妖精が支配する禁則地です。あの場所は契約によってライルの一族に縛られていますが、長い年月、その支配を受けたため、ライルの一族も禁則地の一部となっています。

 残念ながら、私には、ライルの家族にも、ライルの一族にも、思い入れも何もありません。ただ、いたな、で終わります。私の感覚は妖精寄りなので、残酷なのですよ。

 私はライルに抱きしめられながら、それに甘えて、アンナに笑顔を向けます。

「王国、帝国では、聖域はこういうものです。ポーは公国側の聖域もそれなりに見たことがあります。これが普通ですし、本来は、こういうものなのです」

「貴様には、妖精がいないと」

「ポーでさえ、視認出来ないほど、私は高い格の持ち主です。私が生まれ持つ妖精も、かなり高い格なのですよ。格の高い妖精は、格の低い妖精憑きでは視認できません。それは、妖精の目も同じです。魔法使いとしての才能と格は別です。実際は、とんでもなく格の高い妖精が島を包囲しています」

「それを証明出来るのか!?」

「出来ますが、しません。私の父でさえ、生涯、私の格の高い妖精を視認出来ませんでした。そんなもの、表に出すものではありません」

 この世には、表に出していいものと悪いものがある。私の格の高い妖精は、表に出していいものではありません。見える者だけが畏怖すればいいのです。

「そんなもの、生きていくのに、必要ないでしょう」

 子や孫までいるほど生きてきたのです。私は、それがどうでもいいことだと、知っています。

「力で押さえつけることは簡単です。ですが、それでは、平等となりません。同じ土俵に立つことが大事です。だから、私はまず、話し合いから始めます。ですが、この話し合いを始めることが、とても難しいのです。力のない者が口だけで訴えても、誰も聞く耳を持ちません。だから、力を見せつけて、話し合いの場に立たせるのです。もう、十分、私は化け物じみた力を見せたでしょう。話し合いましょう」

 アンナが自信を持ってけしかけた、妖精の目を持つ者たちは使い物にならなくなった、と報告を受けているでしょう。さらに、聖域が支配権を書き換えられてはいない、とはいえ、姿を変えてしまっているのです。

 全ての方向から、私に武器を向けられています。だけど、大事な取引相手であるポーが側を離れないため、攻撃だって出来ません。万が一、ポーを死なせてしまったら、公国側は王国と永遠に決別しなければなりません。

 そういうものを考え、葛藤して、アンナは武器を下ろさせました。






 私はライルと腕を組んで、聖域をちょっと散策しました。その間に、聖域で話し合いの場を作られています。

 島にいる者たちは全て、帝国に遺恨があるようです。誰も彼も、私に敵意を向けてきます。そんな、私が生まれるよりも大昔のことで、私を恨まれても、迷惑でしかないのに。

「あの島にも、こんな場所があるんだな」

「見たことがありませんか?」

「いくつか、巫女でないと入れない場所がある。入ろうとしたことはあるが、すぐにバレて、こっぴどく叱られた」

「あら、悪戯っこだったのですね」

「度胸試しだよ。子どもだったら、皆、同じことをする。通過儀礼だな」

「見て、どうですか?」

「現実味がないな」

 聖域は神が人に授けた装置です。暑くも寒くもなく、正しく管理すれば、このように、清浄な光りを放ち、人々に感動を与えます。

「君は、いつも、見ていたんだね」

「生涯からいえば、ほんの一時ですよ。私の長い人生の一部です。いい思い出ではありませんし」

 聖域に関わっても、碌な事がなかった。

 王国で聖女エリカ様として立たされた時は、父の妖精に言われるままに、王国にある穢れ全てを浄化していたのだ。王国は、私の練習台にされていた。そして、運命の時がやってきて、帝国で本番である。まだ、力の使い方が下手な私は、帝国中の穢れを受けて、死ぬところだったのだ。あんな苦しい目にあって、死にかけたのである。生涯、聖域に愛なんて持たない。あるのは、義務感です。

 だから、目の前にある聖域に、感動なんて持たない。いつもの風景です。

「準備が整いました」

 見た目のいい軍人が、私に声をかけてきます。その顔に自信があるのでしょう。微笑みかけてきます。それを見て、ライルが私をとられまいと、私を抱きしめてくれます。

「わかりました、と伝えてください」

「連れて来るように、命令を受けています」

「では、伝言をお願いします。妙な薬の入っていない飲み物と食べ物を要求します」

「そんなこと」

「私とポーには効きませんが、ライルには効きます。それ以前に、妖精の復讐を受けたいですか?」

 ライルには、私の妖精が守りに憑いています。私とポーは復讐をさせませんが、ライルに憑いた妖精は、復讐します。

 軍人は、ぎっとライルを睨みます。ライルも挑むように睨み返します。しばらく、無言でやり取りして、軍人のほうが下がりました。

「お知り合いですか?」

「何かと、俺につっかかってくるんだ」

「そういう人、必ず一人はいますよね」

 あの軍人も、ライルと同じ。軍部が集めた、運命でしょう。見た目のいい男をけしかえて、私を誘惑しようとしたのでしょうね。性懲りもない。

「私にはライルがいるというのに、わかっていませんね」

「仕方ない。俺は、君ほど、魅力がない」

「綺麗事をただ、吐き出しているだけです。本性は、最低最悪です」

 ただ、順序を守っているにすぎない。その順序を力づくで、相手に強要しているのだ。

 何を言ったって、ライルは否定してきます。だから、私はライルの腕の中、甘えるだけです。私には、これで十分なのです。ただ、こうやって、抱きしめてもらえるだけでいい。

「側から、離れないでください」

「努力する」

「そうですね。人の営みは、衣食住ですものね」

 力の強い妖精憑きには不必要だ。だけど、ただの人であるライルには、衣食住は必要だ。

 もうそろそろいいだろう、という頃合いとなったので、私はライルと戻れば、監視していた王族ポーが席についていた。私がやってくると、席を立ち、椅子をひいてくれる。

「ありがとうございます」

 私は当然のようにポーの行為を受け入れ、席につきました。

 私の向かいには、軍人アンナが座ります。ですが、アンナの後ろには、妖精の目を装着している軍人たちが立っています。対する私は、ポーとライルのみです。敵地なのですから、仕方がありませんね。

 まずは、数で公国側は威圧してきます。これは、ただ、威勢のいい集団への対応ですね。倍以上の数を見せて、威圧することで、穏便に帰ってもらうのです。

 アンナは文字がいっぱい書かれた紙きれを私の前に置いた。

「まずは、契約だ。この島の所有は我々であることを誓ってもらう」

「私は公国の領地では、客人でしかありません。妖精や聖域に請われてしまったら、妖精憑きとしては、やるしかありません」

「所有権をはっきりしたいだけだ」

「こんな紙切れに、どんな効力がありますか? 本来、こういうことは、神を介した契約をするものです。そうして、強制力を持たせます。これでは、いくら私がサインしたって、帝国も王国も認めませんよ」

「こちら側では、これが常識だ!!」

「それでは、対等の場に立っていません。こんな紙きれで、また、妙な言いがかりをされては困ります。まずは、信頼関係を築くべきです。そのために話し合いましょう」

「これが我々の手っ取り早いやり方だ!!」

「契約をする時は、きちんと説明をすることとなっています。たちの悪い者たちは、説明もせずに、一方的に契約を突きつけるものです。時には、説明を省きます。だから、いつも、妖精男爵は騙されます。そういうものを私はたくさん、妖精男爵の元で見ています。残念ながら、今のあなた方と契約関係になるほどの信頼関係を築けていません。拒否します」

「貴様っ」

「どうして、皆さんは、私に対してだけ、恨みを見せるのですか? 私自身は、公国とは関わりを持っていません。帝国の女帝をしていたのだって、十年もありませんよ。皇族ですが、生涯のほとんどを王国の田舎で過ごしています。私の経歴を知っているでしょう。孤児となり、王国の聖女となり、帝国の皇族となりましたが、帝国には捨てられ、結局、王国の田舎で平民として暮らしていました。私は、王国で平民として過ごした期間がほとんどです。それをわかっていますか?」

「そ、それは」

 本当に、簡単な経歴だけを見ていただけでしょう。よくある話です。余計な情報を載せなかったのです。その人となりを削ぎ落し、簡単な経歴をアンナは見ただけです。

 彼らの恨みは帝国です。王国の王族であるポーにはこれっぽっちも恨みを抱いていませんから、それは明白です。

「あなたがたが帝国を恨む理由は、帝国側が支配した公国領でしょう。あなたがたは、親からそう、教育をされていますね」

「故郷を失ったのは、帝国のせいだと聞いてる。実際、我々には、故郷なんてない。どこに行っても、部外者だ。何かあると、追い出されてしまう」

 これで、はっきりしました。彼らは、帝国側が支配した公国領にいた元住人たちの子孫です。

 そうではないか、と予想はしていましたが、まさか、当たるとは。随分と大昔のことです。帝国だって、元公国領の存在を忘れてしまっています。知っているのは、元公国領を慰問する筆頭魔法使いくらいです。魔法使いでさえ、忘れてしまっているでしょう。

 そんな大昔の恨みに、ポーは呆れてしまいます。

「戦争は全て、公国側が仕掛けてきます。王国も帝国も、戦争を仕掛けません。ただ、防衛していたにすぎません。帝国側の公国領を取られたのは、逆恨みでしょう。戦争なんですから、領地を取られても、諦めるものです」

「それは、故郷を失ったことがないから、言えることだ!! 我々の先祖は故郷を失い、今も苦しんでいる」

「だからって、帝国を恨むのは筋違いです。戦争とは、そういうものです」

「ポー、黙っていなさい。あなたがいう事は、勝者の論理です」

 私はポーを黙らせます。強者で、勝者だから、言えることだ。弱者で、敗者はそれを受け入れられない。

 私には、何かされているだろうお茶を飲みます。まっずー。

「根無し草の気持ちは理解出来ます。私には、故郷らしい故郷はありません。帝国だって、故郷ではありません。孤児でしたから、王国の中にも故郷なんてありません。そんな私を妖精男爵が暖かく迎え入れてくれたのは、幸運です。その幸運は、全ての人に訪れるわけではありませんよ。誰もが、妖精男爵に出会えるわけではありません」

「わかるというのなら」

「だからといって、企みに関わるのは拒否します。私はただ、公国には客人として来ただけです。そういうことは、あなた方だけでやってください。私を巻き込むのは迷惑です」

「憐れと思わないのか!?」

「先祖がやらかしたことですよ。まあ、帝国を恨むのは筋違い、とは言い切れません。帝国の企みに、公国側が乗ってしまっただけですからね。あなたがたの先祖は、帝国にいいように利用されたにすぎませんから」

「それは、どういうことだ!?」

「帝国は、戦争はしたくない、と言っていますが、戦争を利用して、帝国の強さと、皇族の絶対を示したのです。時には、戦争を起こさせたのですよ。帝国と公国は定期的に話し合いをします。その話し合いをわざと決裂させれば、戦争です」

「っ!?」

 口では綺麗ごとを言っている帝国。その真意は、腹黒い。皇帝教育を受ければ、その腹黒さを知ることとなる。

 王国は本当に、戦争なんでやりたくないのだ。だけど、帝国の保護を受けて、勝ち続けている。そうして、帝国に影から支配されている。戦争が勃発すると、帝国は魔法使いを派遣して、王国を勝利に導き、そうやって、恩を押し付けているのだ。

「今、あなたがたがこんなことしたって、いいように、帝国に利用されるだけです。帝国は、公国全土から見れば、小国でしょう。ですが、昔からずっと、同じことを繰り返しています。公国が科学によって発達したって、根本は変わらないのですよ。科学では、魔法には勝てません」

「そんなことはない。今の科学を持ってすれば、領地を取り戻すのだって」

「妖精の力によって、封鎖された土地ですよ。海に囲まれたそこに、海を通して侵入も出来ないでしょう。妖精が永遠に封鎖したのです。次に王国を伝って、侵入を謀るでしょう。ですが、王国から帝国に来ても、そこから公国への侵入の手段はありません。元公国領は完全に封鎖されて、帝国人も侵入出来ません。何より、帝国人は皆、元公国領なんて興味もありません。帝国は広すぎます。帝国人全てが暮らすには、十分な広さです。だから、案内役すらいない」

「だから、我々は、妖精の力を使って」

「どれほどの犠牲を払いましたか? それは、帝国が作り出した道具です。あなたがたは、それを使いこなしているように見せていますが、それには多くの犠牲を払った上だと、私は知っています」

「それもこれも、我々が故郷を取り戻すために、必要な犠牲だ」

「全ての子孫が、新しい故郷を得られなかったわけではないでしょう」

「っ!?」

 実際、新しい故郷を得て、決別した子孫だっていたのでしょう。裏切りといっていい事だ。だから、途端、アンナは怒りに顔を怖くする。

 それは、同じ故郷を失った者たち全てだ。新しい故郷を得た子孫たちは、きっと、無事ではないでしょう。憎しみは、仲間の幸福を裏切りとして見ています。よくある話です。

 ライルには、なんとなく、この故郷を失った者たちの考えがわかります。つい数日前、故郷に戻って、裏切者として見捨てられたのですから。私がいなかったら、ライルは四肢を失って、聖女マキの玩具となっていました。

「帝国の支配者である皇族だって、間違います。間違った教育を受けて、間違った支配をします。そういうことを長い歴史の中、何度も繰り返します。それもまた、大事な変化です。変化が何もないと、人は飽きます。ちょっとした乱れは、人に気づかせます。平穏こそ大事だ、と。そうやって、今の帝国があるのです。あなた方は、それの逆です。世の平穏を羨み、帝国を恨む教育を受け、平穏を否定しています。それでは、いつまでたっても、新しい時代は訪れません」

「故郷さえ取り戻せば」

「私も、帝国に行けば、きっと、暖かく家族が迎えてくれると夢見ていました。ですが、私の家族も、皇族たちも、私の育ちの悪さを蔑みました。だから、私は帝国を捨ててやりました。捨てられたけど、私から捨ててやったんだ、と強がったのです。本音は、双子の姉妹のことを羨ましいと今も思っています」

 生涯、この気持ちに、区切りはつきません。私は帝国に利用されてばかりです。私を暖かく迎え入れてくれたのは、末の息子アランの友人である筆頭魔法使いリッセルです。リッセルだけは、ずっと、私を暖かく迎え入れ、今も、私が帝国王国に戻るのを待っています。

 ですが、人は欲張りです。たった一人を得たとしても、もっと欲しいと思います。諦めましたが、羨望は残ります。

「あなた方に、私と同じものを受け入れろ、というのは理不尽でしょう。ですが、押し付けは良くありません。歩み寄りの前に、同じ経験をする者たちを祝福することを始めるべきです。それには、遅い早いはありません。今から、始めればいいことです」

「故郷さえ取り戻せば」

「黙っていればいいではないですか。今、暮らしている土地こそ、故郷だという顔をしていればいいのに。あなたがたは、周囲と関わる努力をしていますか?」

「したさ!! けど」

「心の奥底は違うでしょう。そういう教育を受けているのです。どうしても、出てしまいます。そして、許す心を持たない。悪循環の繰り返しです。あなたがたは、帝国とは逆の悪い流れとなっています。帝国を恨んでも、もう、どうしようもないのです。いつかは、諦めたのではなく、私のように、必要ないものだ、と強がるべきなのですよ」

「そんなこと言われても」

「だから、機会をあげます。あなたがたの先祖が奪われたという故郷、見せてあげます」

「まさか、エリカ様、それはいけない!?」

 残念ながら、ポーでは私を止められません。

「ご存知ですか? 世界中の聖域は、繋がっているのですよ。力の強い妖精憑きであれば、敵国にだって、聖域を通して飛べます」

 私が妖精憑きの力を聖域に行使した。

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