運命の人
軍艦で連れて行かれた先は、また、どこかの島です。完全に、世俗から隔離された、軍関係の島でしょう。私とポー、ライルは軍の者たちに四方を固められ、島に降り立ち、作りが頑強な建物に連れて行かれました。
「しばらくは、こちらでお休みください」
それぞれの部屋を案内されましたが、私はライルから離れません。
「あなたの部屋は、こちらに」
「いいではないですか。私とライルは、夫婦になるのですよ」
「ベッドも一人用ですし」
「かまいません。どうせ、今日も一晩、じっくりとしますから」
また、誰かに盗られてしまわないように、私のものだとライルの内と外に、しっかりとつけてやらないといけない。
案内役の男は、なんともいえない顔をする。公国側も、何を考えているのやら、見目がいい男を案内役にしてきました。きっと、私は男に狂っている、なんて思われているのでしょうね。
バカにして。私の素顔を晒したら、この案内役の男のほうが、私に取り込まれてしまうだろうに。しないけど。
「あ、ポー、話があります。こちらで、内緒話をしましょう」
もう、堂々と密談します、と言ってやる。それを側で聞かされる案内役の男は表情を強張らせる。この男、訓練が足りないですね。こういう時は、無表情を貫き通すものですよ。
ポーは呆れながらも、私に従って、ライル用に準備された部屋に入りました。
中は、私が公国の審査を受けている時に過ごした部屋と、そう変わらない感じです。どこも、同じようにしているのは、それが効率いいからでしょうね。
「ロバートがすみません。公国側の監視が多いところで、失態をしてしまって」
早速、ポーは謝罪してきます。公国側も一枚岩ではありません。今回、私を受け入れた勢力は、明らかに私に敵意を持っています。ポーとは状況が違っているのです。
きっと、お迎えに来た軍艦だって、私に敵意を持っている者たちでいっぱいでしょう。
「状況がポーとは違ったので、仕方がありません。私が公国行を決めた時、ポーは公国に、私の情報をそれなりに渡したでしょう。その情報に、過敏に反応した勢力がいただけです。今回は、仕方のないことです」
「ですが、エリカ様を殺害しようなんて。帝国だけでなく、王国まで敵に回す行為です」
「戦争、したいのでしょうね」
私、帝国でも王国でも、そんなにいい扱いはされていません。だけど、私の死は、口実に使えます。これ幸い、と戦争したい派が動き出すでしょう。
ですが、腑に落ちない部分もあります。
「ライルは、どういった理由で、あの場に居たのですか?」
実は、そこのところを私は知らない。ライル自身からは悪意を感じてない。もし、同じ悪意を持っていたのなら、私とのお付き合いに、かなりの葛藤を抱くはずだ。
ライルを見れば、そんな葛藤なんて欠片ほども見られません。むしろ、生まれ故郷である島に居た時のほうが、葛藤で一杯でしたね。
「俺は、ただ、あの場に行けと言われただけだ。そういう奴らはいっぱいだ。到着したら、出迎える準備をして、何故か、案内役に選ばれた」
「とても答えにくいことを質問します。答えたくないのでしたら、答えなくていいです。何故、聖女マキは、あなたを夫に望んだのですか?」
見た目とか、そういうものだろう。単純に、そう思った。だから、答えには期待していなかった。
ライルは少し考えこんでいた。わからないでいいのです。ほら、人の好意って、理由がわからないものがほとんどですから。
しばらく悩んで、でも、何か答えを見つけたようです。少し、迷うように瞳を揺らしました。
「俺は、運命だ、と言われた」
「一目惚れとか、ライルの男らしさがいいとか、そういうのではないのですか?」
「一目惚れはないだろう。夫に、と望まれる前までは、普通に幼馴染みだ。あんな島で暮らしてるんだ。ガキの頃から、普通に遊んで、良い所も悪い所も、お互い、知り尽くしてた」
「実は、密かに思われていたのではないですか? ライルは、とても魅力的な男性ですものね」
「そういうのじゃないな。ともかく、運命の相手だから、と言って、迫られたんだ。あの島の巫女様は、よく、そういうことがあるとは、聞いてたけど」
「巫女は、運命の相手を知る方法を持っているということですか?」
「俺たち島民は入れない洞窟がある。そこで、見たんだろう」
「っ!?」
その話に、答えを思い浮かべたのは、私だけではない。王族ポーもだ。
これは、大変なこととなりました。私が思っているよりも、ライルは、重要人物です。
ちょっと周囲を妖精を使って探ればわかります。ライルのように、体に居場所を知らせる何かを埋め込まれている人たちはわずかです。ほとんどは、そんなことされていません。
私と王族ポーの様子が剣呑となったのを肌で感じたライルは、不安そうに私を見てきます。
「こんな話、ここでこっそりしても、上層部には筒抜けだぞ。盗聴器が仕掛けられているに決まっている」
「知っています。わざとです」
ライルの不安は別にあった。だけど、私とポーにとっては、大した事ではない。
「聞かれたって、彼らに対処する手段はありません。私とポーが本気になれば、ここから逃げるのは簡単です」
「お手柔らかにお願いします」
「ポーの味方勢力の頑張り次第です」
現在、敵地のど真ん中にいるようなものです。力の強い妖精憑きは、消し炭が鉄則です。そうすれば、敵はいつか居なくなります。
守るべきはライルのみです。ポーと、妖精の子孫ロバートは、自力でどうにかするでしょう。だから、私はライルにべったりとくっつきます。こうしていれば、ライルだけは攻撃から除外出来ます。
「昔の恨みを私の身で晴らそうとするなんて、心が狭いですね」
「帝国への恨みですか?」
「私が帝国の元女帝と知って、出てきたのでしょう」
王国相手では、敵意らしき敵意はなかった。それなのに、ポーがいなくなった途端、敵意ばかりが私を包囲したのだ。
「恨みはいっぱいでしょう。公国の領土の一部を奪ったのもあります。帝国のせいで、王国侵略を失敗した恨みもあるでしょうね」
「? それは、僕が防ぎましたよ。むしろ、僕が恨まれる立場です」
「もっと大昔ですよ。あなたの曾祖父の頃の話です」
「ちょっと、国境線をずらしただけじゃないですか」
「そのせいで、運命の相手が見える聖域を王国に渡すこととなったのですよ」
「っ!?」
王国は、過去、一度、国境線を後退させたことがありました。そのため、運命の相手が見える聖域を公国に奪われてしまったのです。
「王国も、一度、やらかしてしまい、貴重な書物を失ってしまいました。そこに、帝国との国交断絶です。帝国の助力がないままに、王国は公国と戦い、大敗したのです」
「歴史で習いました」
言われて、ポーは思い出す。ただの歴史の話であるが、その裏には、公国側の企みが隠されていたのだ。
遠い昔、帝国と王国の血をひく聖女エリカがいた。聖女エリカは、王国を救うために、聖域の穢れをその身に受け、亡くなってしまった。
聖女エリカが死んだことで、彼女の伯母である帝国の女帝は激怒した。そこから、帝国は王国との国交断絶したのです。
「口伝で伝えらていたことだったのでしょう。王国も帝国も、その聖域の重要性を知りませんでした。公国側はというと、神と妖精、聖域の信仰を捨てましたが、その教えを資料として残していたのでしょう。公国は、戦略として、聖域を奪ったのです」
「歴史では、大敗した、となっています。だったら、そのまま、公国は王国を侵略すればいいのに。国境を変えるだけで休戦するなんて」
「帝国側の国境線での戦争では、公国側が大敗したからですよ」
王国と帝国は国交断絶していました。だから、王国は、同時期に帝国が戦争をしているなんて、知りませんでした。
公国は、王国と帝国、両方を同時に攻めて、共闘出来ないようにしたのです。そうすれば、勝てると思ったのでしょう。ほら、王国と帝国は、やらかしてしまい、国力が落ちていましたから。
「公国の予想外は、帝国の筆頭魔法使いです。随分と長いこと、戦争をしてなかったため、魔法使いの恐ろしさを忘れてしまったのです。当時は、百年に一人誕生するかどうかの才能ある妖精憑きが筆頭魔法使いでした。千年に一人必ず誕生する化け物妖精憑きは亡くなった後でしたので、公国は勝てると思ったのでしょう。ですが、実際に戦争を仕掛けてみれば、公国側の兵士は骨すら残らない大敗でした。帝国と公国の休戦協定で、帝国は王国から手を退くように要求しました。公国側は、仕方なく、王国から聖域を一つ奪うことで、痛み分けにしたのです」
そんな裏話、王国の王族であるポーは知らない。聞いて、驚いています。
国交断絶していましたから、帝国からわざわざ王国に報告するわけがありません。戦争自体、公に語られませんから、情報が市井に流れません。結果、口にものぼらないので、この事実は古臭い書物の中に埋もれることとなったのです。
まるで、王国は帝国に庇護されているような話である。そう、王族ポーは思ったでしょう。
「ポー、帝国に恩を感じる必要なんてありません。帝国は帝国なりに、王国を生き残らせているだけなのですから」
「聞いたことがあります。公国からの侵略を防ぐために、王国を盾にしている、と」
「実際、そうです。王国が侵略されてしまいますと、次は帝国が攻め込まれてしまいます。王国は、時間稼ぎのための帝国の盾として見られています。だから、無償で魔法使いを王国に貸しているのです」
「わかってはいましたが、実際に言われてしまうと、なんだか、悔しいですね」
帝国の非情さに、王国は守られているという事実は、王族として悔しいのでしょう。王族と皇族は対等に見える。だけど、実際は、皇族が王族を利用しているのです。王国は、誰が頂点となっていいはずです。それをあえて、王族を置いて、それを帝国は支持することで、王族の立場を強くしているのです。逆にいえば、帝国が支持しなかったら、王族は排除されてしまうでしょう。王国の王族たちは、帝国に生かされているようなものです。
「公国としては、国境線を変えたことで、王国を攻略する次の段階となったはずでした。ところが、あなたの曾祖父の代で、帝国の賢者ハガルが入れ知恵して、国境線を元に戻してしまいました。こうして、聖域はまた、王国に戻ったわけです」
「あんな使い方も失われた聖域を王国側に戻されたくらいで、帝国を恨まなくても」
「恨むでしょう。王国を攻略できれば、次は帝国です。帝国に攻め込み、奪われた領土を取り戻すこと夢見たのです。そのために、聖域を奪わなければなりませんでした。公国側は、その手段を手に入れようとした」
私はライルを見ます。彼は、公国側が手に入れた、王国と帝国を侵略するための手段です。
そういう人たちを集めたのでしょう。公国は科学を信奉していますが、神と妖精、聖域の信仰は情報として蓄積しています。公国は、昔から、王国帝国よりも、冷静に物事を見定めています。
「きっと、公国は諦めていません。王国と上手にお付き合いするのも、油断させる手段でしょう」
「そんなっ!?」
「好意的な勢力もあります。全てがそういうわけではありませんよ。帝国でも、戦争をしたい派、戦争を嫌う派と分かれています。科学によって、王国帝国よりも良い生活を送っているというのに、過去の遺恨は忘れられないのですよ。だから、戦争がなくならないのです」
帝国は公国との戦争を永遠になくさせた、と宣言した。だけど、まだ、王国側からの侵略を警戒しています。帝国は、戦争がなくなることはない、とわかっているのです。
「エリカ様、やはり、王国に帰りましょう!! 今なら、簡単に」
「こんな場所に我々を連れて来たのは、自信があるからですよ。昔、公国は、魔法使い殺しの兵士を作りました。つまり、そういうことです」
ポーが何かやっています。ですが、全てが防がれています。それを私の目の前で行われているのです。ポーは見る見る、真っ青になっていきます。ポーにとって、これは、久しぶりの大敗ですね。
「エリカ様、わかっていて、ここに来たのですか!?」
「ポーの顔を立てただけです。もう、どこに行っても、年長者である私を敬わないなんて」
私はライルの胸に顔を埋めます。ライルには、私とポーの現状はわかりません。何せ、目に見えない攻防戦ですから。
ポーは最強最悪の妖精憑きと呼ばれていますが、魔法使いとしての才能は大したことがありません。ポーは物量で押し通すだけです。だから、魔法使いの才能の前では、ポーは簡単に負けてしまいます。
今、ポーはどこかにいる、魔法使いの才能が化け物の相手に、ポーが持つ妖精をごっそりと奪われてしまったのです。全てではありません。ほら、ポーが持つ妖精はともかく多いので、奪うにしても、限界がありますから。
「くっそぉー」
負けたことが悔しいポー。何度か深呼吸して、また、奪い返そうとしています。
「ポー、諦めなさい。ここでは、私たちは部外者です。地の利がありません」
「エリカ様も手伝ってください!!」
「年寄ですから、眠いんです。ほら、ポー、出て行ってください。私はライルと一緒にお休みします」
「そんなぁ!!」
私は魔法でぽんとポーを部屋から追い出した。通路で何か叫んでいるけど、聞こえなくしてやる。
「大丈夫なのか?」
話を聞いているだけだと、ライルは危ないように感じたのだろう。私のことを心配する。
「ライルだけは、私が守り通してみせます」
「いや、俺が君を守る。今度こそ、守ってみせる」
過去、恋人をむざむざと殺されたことを思い出してしまったのだろう。ライルは私を強く抱きしめてくれた。
「今度こそ、死ぬ時は一緒です」
ここで殺されても、私はかまわない。今度こそ、一人残されない死を期待した。
私は、必ず、話し合いから始めることにしています。私の力を前面に出してしまったら、ただの暴君となってしまいますから。
そう、ロベルトから教わりました。
だから、今も、いい感じの所で邪魔されても、私は不機嫌になるだけで、怒ったりしません。
ライルと熱く体で語り合っている所に、複数の女性が入り込んできました。ライルは私を抱きしめるも、素っ裸ですから、どうにか体を隠そうと、シーツを引き寄せて、私ごと隠してくれました。
「こんなトコで始めるなんて、なんて、恥ずかしい女ですか」
「夫婦が営んでいる部屋に許可なく入ってくるお前たちは無粋ですね。そんなことをするから、独り身なのですよ」
「体使って篭絡しただけだろう!!」
「そういう手段であれば、わたくしだって出来ますよ」
見た目は綺麗だけど、こう、種族が違いますね。いえ、人なのですが、髪の色、瞳の色、肌の色、顔立ちが皆、バラバラです。だけど、話す言葉は同じです。
つまり、彼女たちは、公国が作った何かですね。私と通じる言語を行使するのですから、そういう存在なのでしょう。
隣りの部屋で大騒ぎなのですから、王族ポーだってやってきます。だけど、狭い部屋に複数の女性が乗り込んできたのです。ポーはそこを押し入るような礼儀知らずなことは出来ません。
「エリカ様、ご無事ですか!?」
「無事です。責任者を呼んできてください」
「わかりました!!」
ポーったら、王族なのに、私の手足のごとく使われていますね。それを疑問すら持たないなんて。
そういうものを見て聞いて、押し寄せた女性たちは、私を蔑むように見下ろしてきます。
「他にも、顎で使う男がいるなんて」
「節操がない女だな」
「悔しかったら、そういう男をいっぱい引き連れて来てください。私は王国にも、帝国にも、顎で使える男がいっぱいいますよ。元女帝ですから、帝国の貴族たちだって、顎で使えます」
「権力で脅すなんて」
「それもまた、一つの手段です。男一人を囲うためならば、何だってします。無節操がどうしたのですか。欲しいものを手に入れるために、綺麗事を謳っているから、横からかっさらわれてしまうのですよ」
これでもか、とライルに密接してやる。女性たちは、途端、嫉妬を向けてくる。
そんな女性たちに、ライルはわけがわからない顔をしている。
「お前たちは、別の部隊だろう。どうして、ここにいるんだ?」
「あんたが結婚したと聞いたから!!」
「そうです。抜け駆けされないように、牽制しあっていたというのに」
「そこの、ど田舎からきた女と結婚するなんて、そんな話聞いて、黙っていられるわけがないでしょう!!」
「??」
あんなに熱く語られても、ライルはこれっぽっちもわかっていません。
あれですね。ライルのことは好きな人たちは、互いに、牽制しあっているだけで、ライルに何もしなかったのでしょう。どうせ、挨拶したり、ちょっと世間話して、満足していたのでしょうね。
「公国は、本当に科学信仰なのですね。科学を使って、ここまで作り上げるとは」
目の前で怒り狂う女性たちには、何か憑いています。ただ、統一感がありません。
以前、ポーの妻スズと面談したことがあります。スズは、式神という妖精を一体憑けていました。スズと同じ一族は、血統でその力を引き継いでいるという話です。
こういう話を聞くと、王族と皇族を連想してしまいます。ですが、王族と皇族は、支配者なだけで、何かすごい力があるわけではありません。
ですが、公国の一族は、見えない力を含めての支配者なのでしょう。また、役割も、一族によって違います。スズの一族は、聖域を管理するのが役割でした。聖域をきちんと管理しないと、土地に災いが起こってしまいます。それをスズの一族が行っていると聞いています。
ライルの故郷では、聖女マキは、あの島で暮らすための契約の柱でしょう。一族の中で、ただ一人が選ばれ、その契約を引き継いでいく。ただ、選ばれるには、それなりの才能がなければなりません。マキは、島を守る何かを行使する才能がありました。それが、選ばれるための条件なのでしょう。
そういう、様々な一族を公国の軍部は引き入れ、組み合わせて、作られたのが、目の前にいる彼女たちです。目の前にいるのは女性ばかりですが、きっと、男性もいます。
だけど、こんな一族を作り出せても、どうしても出来なかったのは、運命の人です。運命の人は、神によって人に授けられるものです。その人は、一族の中に誕生するとは限りません。ただの人から誕生することだってあります。
実際、王国でもそうでした。ポーの祖父の運命の人は、商人の娘から王都の聖女エリカ様となった人です。
公国の科学の信奉者です。だからといって、神と妖精、聖域の信仰を忘れたわけではありません。大事な資料として残し、分析し、どうにか、王国と帝国を侵略する方法を見出したのでしょう。
聖域の支配を公国に書き換えてしまえばいいのです。そのためには、神が定めた運命の相手と力を持つ者の間に、子を作らなければなりません。その子こそ、聖域の支配を書き換える運命の人なのです。
こんな大騒ぎをしていれば、彼女たちの飼い主がやってきました。
「あなたたち、また、勝手なことをして」
「ママ!!」
「だって!!」
「ほら、部屋を出て行きなさい」
あんなに頑なだった彼女たちですが、飼い主には大人しく従い、部屋から出て行きました。
そして、ポーは女性たちの飼い主を部屋に連れてきました。
「大変、失礼しました」
私とライルが素っ裸であることに、最初は驚いていましたが、すぐに、人のいい笑顔を浮かべて、深く頭を下げました。
「謝罪は受け入れます」
「そうですか。では、我々はあなたに謝罪を要求します」
「ライルのことでしたら、謝罪しませんよ。もっと、駆け引きを学ばせるべきでしたね」
飼い主は、途端、笑顔を消して、私を睨んだ。




