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公国の妖精憑き  作者: 春香秋灯
最凶の妖精憑き
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去勢をしよう

 今日の僕は真夜中から超絶不機嫌だ。もう、笑顔もない。僕の笑顔がないから、スズが怯えている。けど、仕方がない。なんと、スズはオス猫と子作り経験済みだというのだ。

 離宮に連れていけるのは、女は処女だけ。僕が万が一にも子作りをしたかわかるように、常にそういう検査をされる。母上の時に、やらかされたので、僕にはものすごく警戒しているのだ。

 だけど、公国のメス猫は、公国の質の悪いオス猫と子作りしちゃった後だった。子ども出来ないようにしている、と言っても、そういう問題じゃない。男女差別だ、といわれたって、僕は子ども作っちゃいけないのだから、仕方がないんだよ!

 というわけで、アランの道具を使って、なんと、てれびでんわ、というもので、公国と話し合うこととなった。

 え、昨日の公国の上の人たちはどうしたって? スズにそんな無体なことするような奴らには人権は認められないので、全員、拘束となった。文句言うけど、捕虜だからね。

 てれびでんわを繋いでもらうと、相手は一人のおじさんだった。そういう代表者みたい。話、通じるといいなー。

「捕虜の扱いについては、一人を除いて、返還となります」

『一人を除いて? 全部じゃないのか!?』

「公国のあくま憑き? の女の子は、こちらで保護です。絶対に返しません!」

『それは認められないな。全員返してもらう』

 相手が子どもだと思って、上から来たおじさん。うまく誘導出来ると思っているようだ。

「返しませんよ。昨日、あくま憑きの女の子から話を聞きました。部隊長が毎日のように夜の奉仕をさせたそうですね。しかも、それが普通だと言って。ほかにも、同じ部隊の男どもが無理矢理、行為を強要しています」

『証拠はあるのか?』

 あ、こいつ、僕を舐めてるな。僕は最強の妖精憑きと神様が定めた人を親に持つ最悪の妖精憑きだ。

「………神様裁判をしましょう。証拠はありませんが、神様は平等です。僕は願えば、あくま憑きの女の子に手を出したやつら全ては去勢だ」

 神様に定めた親から生まれた妖精憑きは、神様から力を貸してもらえる。それは、神様が公平に裁くこととなるので、人の力ではどうしようもない。すでに、裁判は始まっている。僕が言えば、それで開始だ。

『それは、人権問題となるんだが』

「やってなかったら、大丈夫ですよ。普通に動きます。神様が決めてくれますから。あと、これ、そちらの公国に居る男どもにも作用しますから。あなたは、やってませんよね? だったら、大丈夫ですよ」

『!?』

 おじさんが真っ青になる。あれ、やってるのかな? 神様は間違えないよ。

『ま、待ってくれ! こちらも調査しよう』

「すみません、僕たち野蛮な国は、話し合いが出来ないんですよ。残念ですね」

『いや、我々はそんなこと』

「全て、聞き取り調査済みですよ。野蛮な国なので、戦争したくたいんです。野蛮な国なので、強姦されてる女の子を返しません。野蛮な国」

『謝罪する! 時間を、時間をくれ!!』

「神様裁判は一度動き出したら終わりです。残念ですね。次の会議の時間までには、試してみてください」

 僕は話し合いの席を立った。向こうはまだてれびでんわで叫んでいるけど、知らない。ほら、野蛮な国だから、席立っちゃうんだよ。






 イヤイヤながら、調べてもらったら、スズはやっぱり経験済みだった。どうやって離宮に入れよう。僕はとってもスズを気に入っている。

 スズはベッドで座ってぼーとしているので、僕はスズに膝枕してもらって横になる。スズ、そういうことは普通なのか、僕の頭を優しくなでてくれた。これも、公国のオス猫に教えられたのか。公国のオス猫全て、去勢してやる!

「ポー、まだ怒ってるの? もう、奉仕しないから」

「でも、口づけはしよう。舌はいらないから、口づけ」

「はい」

 素直に軽く口づけしてくれる。これは、大事。

「これでいいの?」

「こうしないと、スズの居場所わからなくなっちゃうから。一日一回しなくてもいいんだけど、ほら、万が一のことがあるから、これは、毎日しよう」

「奉仕じゃないの?」

「首輪だよ、首輪」

 僕はスズの首についている首輪を指さす。スズは肌が白いから、赤い首輪は似合うね。

 奉仕じゃないのが、何故か不満なスズ。奉仕、そんなにしたいんだ。

「どうして奉仕がしたいの?」

「それをしないと、役立たずって言われたから。だから、奉仕しないと不安になる」

「なるほど。捨てられちゃうと思うんだ」

「上手い相手だと、気持ちいいよ」

「………僕には一生無縁だな」

 僕はごろんとスズに背中を向けてふて寝する。子作りできない僕には、スズに気持ちいいことは出来ない。いつか、逃げ出しちゃうかも。

「ご、ごめん! もう、言わないから!!」

「スズに怒ってるんじゃないの。公国のオス猫どもに怒ってるの。僕の可愛い猫にふしだらなことして、許さん! て。おかしいよね。王国のことを野蛮とか言ってて、公国では、スズを夜の奉仕相手にしてるの。スズ、何歳?」

「十六歳」

「いつからそんなことさせられているの?」

「十四歳から」

「最低だ、スズに手を出した公国のオス猫ども。去勢してやる」

 僕はギリギリと親指の爪を噛んだ。神様裁判は、一度、始めてしまったら、そこで終了である。どうせ、皆、去勢だ。






 次のてれびでんわの相手は、優しそうな女性だった。おばあちゃんに近いかな? おばあちゃんにしては、素敵な気品がある。

『お相手は、私になってしまいましたが、良いですか?』

「あのおじさんは、どうしましたか? 去勢になっちゃいましたか?」

『………』

「わかりました。その話はここで終わりましょう。大変、下品なことを言って、ごめんなさい」

『いいのですよ。あのおじさんも、本当に酷いことを言っていたことは、私も聞きました。こちらこそ、ごめんなさい』

「それで、捕虜の返還ですが、あくま憑きの女の子を除く全てでよいですよね? あの子は、そちらに返せません。話を聞きましたが、あの子は、男性に対する奉仕を常習化されています。そういう所には、いくら野蛮な国と言われる王国でも、知った以上、返すわけにはいきません」

『そう言ってくださって、ありがとうございます。彼女のことは、よろしくお願いします』

「あとは、停戦というよりも、今後、戦争をしない、という完全停戦協定をとりたいのですが、どうでしょうか?」

『それは、私の一存では決められないことです。一度、きちんと話し合いのテーブルを準備しましょう』

「そのテーブルには、僕一人で行くこととなりますが、大丈夫ですか?」

『そこは、大人でないと』

「殺されるかもしれない所に、重要な人間は送れません。僕は、死んでも大丈夫なので、僕が行きます。それに、この有害化学物質だらけの場所を乗り越えられるのは、僕だけです。お願いですから、生きて帰してくださいね」

『あなたは、可哀想な子ですね。あの、悪魔憑きの女の子と同じ扱いですか?』

「いいえ、王族ですから、王国のために生きるのが普通なだけです。可哀想ではありません。僕は、王国民が支払った税で生かされています。王族は生きるも死ぬも、王国のためですよ」

『………』

「そちらに行きましたら、人間同士、安全な場所を準備してください。簡単な建物がいいですね。日時は次の話し合いで決めましょう」

 王族のことが理解出来なくて、彼女は黙り込んだ。さっきのおじさんとは違って、話が通じて、助かる。







 まだ、安静が必要なザクト叔父上の部屋にいれてもらい、だいたいのことは話した。

「これから、どうするつもりだ?」

「公国は資源が欲しいという。資源さっさと出して、縁をきればいいと思うよ」

「簡単にいうけど、王国だって、必要なものがあるんだぞ」

「まずは、相手が欲しがっている資源をリスト化してもらおう。そこから、こちらが絶対に出せないものを除く。面倒だけど、仕方がない。僕は公国の禁書をいっぱい読んでるから、どうにか出来るよ。あ、採掘で人体に有害だとわかるやつは、絶対に拒否するから大丈夫。神様裁判にかけてやるよ」

「神様裁判、最強だね」

 ザクト叔父上は、だいぶ、楽になったようだ。公国側が提供してくれたお薬が効いたらしい。王国は神様頼みだから、そういうのは、効くのも効かないのも、神様次第である。

「問題はスズだよ。スズ、離宮にいれるには、どうすればいいのか。まさか、子作り経験済みだったなんて」

「返したら?」

「いやだ、絶対にいやだ。スズね、可愛いの。僕のこと、可哀想、なんていうんだよ。可愛いよね」

「実際、ポーは可哀想だろう」

 ザクト叔父上もそういう。僕は可哀想な子だと。

「だいたい、アナスタシアは酷いよ。最強の妖精憑きを生み出しておいて、世話もしない。叔父上は、ポーを教育はするけど、離宮に幽閉だし。傍から見れば、本当に可哀想だよ」

「お母様の愛情は、まあ、アランに一方通行なので、仕方ありません。僕は所詮、アランを喜ばせるための子どもですから。でも、それが気にならないのが僕です。僕はお祖父様に似て、足りないんですよ。だから、気にしないでください。

 それよりも、スズです。どうすればいいと思いますか?」

「叔父上が決めたことだから、諦めたほうがいいよ。アナスタシアの件は、相当、怒ったからね」

「子作りできなければいいんですよ」

 僕は、名案を思い付いた。

「僕も去勢しちゃえばいいんですよ!」

「だめぇえええええーーーーーーーー!!!!」

 また、ザクト叔父上が血を吐いた。あれぇ?







 定時となったので、また、てれびでんわの前に座る僕。相手は先ほどの女性だ。よかった、また変わったら、話が最初からだった。

『こちらでは、日時と場所は決めました。一応、安全なところまで、こちらがお迎えにあがります。ベースキャンプには、私もいますから、そこで話し合いましょう』

「お願いがあるのですが、いいですか?」

『それは、交渉ですか?』

「いえ、あくま憑きの女の子のことです。彼女の生まれを調べたいので、協力してください。出来ましたら、彼女をきちんと保護出来るところに返してあげたい」

『それは、我々が』

「あなたがたは、彼女に憑いているものと話せますか? 僕は話せますが、言葉が通じません。公国には、たくさんの言語があります。そこを調べれば、彼女がどこの人かわかると思います」

 彼女はとても驚いている。僕だって、まともなことは言う。スズが一番幸せである所にいくほうがいいとは、考えてはいる。それは、僕の傍だけではない。

 本当は、離したくはないが、処女ではないので、万が一のための解決方法の一つとして、お願いした。

『何故、そこまでするのですか? 彼女は、敵でしょう』

 敵だけど、スズは敵の中でも迫害されているので、そういうのではない。でも、それを言うと話が進まないので、建前を話す。

「敵になったのは、公国が戦争をふっかけて、侵略しようとしているからです。王国は、公国と戦争もしませんし、領土拡大も望んでいません。いいですか、敵だと思っているのは、公国側ですよ。間違えないでくださいね」

『申し訳ございません。我々が、悪いのです』

「いいです。お祖父様は言っていました。戦争をしたい奴は安全な所で旗ふっているだけだって。大変ですね」

 彼女はまた驚いた。僕は普通に思ったことを言っただけだけど、そんな驚くことなんだ。

『あなたは、優しいのね』

「いえ、暇なんです。お祖父様は言いました。僕を暇にすると、悪いことをするって。だから、スズの生まれを調べるのも、暇つぶしです。暇になると、僕は王国を間違って壊してしまう。その暇つぶしに、ご協力ください」

『そういうふうにいうのでしたら、協力しましょう。何が必要ですか?』

「教科書的な? 僕が言葉を勉強して、スズに憑いてるあくまと話します。言語がわかれば、公国のどこかは、わかるでしょう。出来ましたら、対面での話し合いの時にでもいただけると助かります」

『それまでには準備しましょう。その時に、悪魔憑きの女の子も連れてきてもらえませんか? 聞き取り調査をしたいのです』

「僕同伴であればいいですよ。彼女も、残念ながら、王国では必要ない人間ですから、どうぞどうぞ、と出されます」

『………』

 本当のことなのに、彼女は悲し気に顔をゆがめた。







 去勢がどこまで進んだのか、王国側の兵士たちに調べさせてみれば、捕虜全員だった。

「これ、治るんだろうな!!」

「神様がやったことなので、僕には無理です」

 笑顔で拒否した。出来たとしても、治してやらない。

「人権侵害なんて言ってるけど、お前たちが僕のメス猫にやったことのほうが、人権侵害だからな。わかっていると思うが、王族の持ち物に手を出した奴らは、処刑だ」

 僕は笑顔を消した。子どもだからと、いつまでも笑っていると思うなよ、公国のオス猫どもが。去勢くらいで済んで、罰が軽すぎるんだよ。

「それぞれ、どういうことをやったか、調書とっといて。あ、密偵さんの調書もそろった? 密偵さんは丁重に公国に返還するからね。大事にしてあげてね」

 王族は、ただ指示するだけだから、すぐに暇になる。暇つぶしに、スズに相手してもらおう。

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