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公国の妖精憑き  作者: 春香秋灯
最凶の妖精憑き
17/56

とりあえず、一段落

 行く時は、乗り物いっぱいで、お腹いっぱいになるくらい吐いたというのに、帰りは聖域通してだから、一瞬である。

「また、遊んでください」

「来るな!!」

 御門のおじいちゃんが、むちゃくちゃイヤがった。せっかく、簡単に行き来が出来る道が見つかったので、ぜひぜひ、また来たい、というか、来る。

「彩音さん、他の陰陽師、紹介してくださいね」

「乗り物酔い、大丈夫? 吐いたら弁償してもらうから」

「え、ここから歩いて行けないんですか?」

 日本の歩き方を開いて、だいたいの位置を指さしで教えてもらう。うん、魔法使えない。日本って、地図ではちっちゃいけど、広いんだね。

「なんだ、坊主、車酔いするのか。情けないな」

 すっかり大翔さんは、僕のことに馴れた、というか、感覚が麻痺して、バシバシと背中を気安く叩くくらいには、仲良くなれた。武器さえ取り上げちゃいえば、話し合いで解決出来るよ。

「もうちょっと遊んでいたいけど、仕事があるからなー。虐待だよ虐待」

「その能力では、仕方がないわね」

「右に同じ」

 御門家の皆さんは、僕のこと、同情してくれない。アリスさん! 慰めて!!

「ポー、帰ろう」

 スズはともかく帰りたがる。スズのルーツがいっぱい溢れているのに、何もせずに帰るのは勿体ないと思うのは、僕だけか。

 帰りたがっているのは、スズだけではない。カイトも愛しの奥様に会いたいので、帰りたがっている。剣をガチャガチャといじって、イライラしている。大好きだもんね、聖女様のこと。

「はいはい、帰ります。それじゃあ、また決ますね」

「帰れ帰れ!!」

「ええ、冷たいなー、御門のおじいちゃん」

 邪険に扱われるのも馴れた。僕は笑って、王国に帰った。





 王国に戻れば、いつもの一貴族である。戻ったので、北の砦にあるてれびでんわで、帰郷を知らせた。本当に、魔法で帰っちゃったから、アリスさんたちは驚いていた。

 日本の滞在期間が短ったのもあるけど、乗り物が克服出来ていないので、他の陰陽師とお話できなかったのは残念でならない。ついでに、日本の聖域をいくつか見つけたかった。

 この旅は、妖精のあり方のよい勉強になった。日本は、契約を元にして、妖精を縛り付けたり、使役したりしている。たぶん、他の地域も、そういうものがあるのだろう。

 王国や帝国は、妖精憑きが生まれ持った妖精を使役して、魔法を行使しているだけだ。だから、選ばれた者しか魔法は使えない。

 陰陽師もそうなのかもしれないが、体系化されている。契約術式が一族ごとに確立されているので、ちょっと才能があれば、妖精を使役出来るようになるのだろう。そこには、神の祝福とか、そういうものは関係ない。

 御門にある古書を一通り読んでみたけど、王国や帝国とはまるで違う世界だった。日本とかには必要なのだけど、こっちにはいらないな。また、毒のような知識をいれちゃったよ。もう、毒におかされまくりだ。

 一度は公国に行ったので、カイトやハインズはどうなるのかな? と心配はしたけど、相変わらずだ。二人は、王国の中に強い執着があるので、公国の科学には魅力を感じなかったのだろう。お土産も買わなかったなー。ぶれない二人だ。





 一日の終わりは、スズの添い寝である。スズは、公国の服をいくつか持ち帰って、夜着として使った。今日も、露出度が高い服を着ている。

「ポー、今日の服、どう?」

「似合う似合う。おやすみ」

「もう、ちゃんと見て!」

「見れないって」

 こんなに密着していて、見れるわけがないでしょ。僕はスズの柔らかい胸に顔を埋める。また、胸が大きくなったような気がする。いつまで大きくなるんだろう。

 僕の添い寝はまだまだ続いている。もう、添い寝なんて僕は必要ない。これは、スズのためだ。

 スズは、公国時代、夜の奉仕を常習化されていた。そんな彼女を一人にすれば、そういう悪習から抜け出せなくなる。だから、僕はスズを普通に戻すために、添い寝を続けた。

 一年経てば大丈夫かと思ったけど、彼女のベクトルが僕への好意に向いてしまって、離すのが難しくなった。

 スズはわかっていない。スズは僕に好意を向けているけど、それは、最悪な環境から救ったからにすぎない。それは、たまたま僕だっただけだ。他の人でも、助けてくれたのなら、その人に好意を抱いただろう。

 困ったな。このメス猫は、いつかは誰かに引き渡さなければならない。そう思って、躾けてきたのに、猫だから、なかなか思うようにいかない。犬として飼えばよかった。

 手癖の悪いメス猫は、僕の体をまさぐる。

「ポー、気持ちいい?」

「そういうのは、無理だから」

 カイトに、こういう時のコツを教えてもらったので、どんなに触っても、僕は反応しない。

「ほら、寝て。僕は眠い」

「はい」

 僕が力をこめて身を寄せれば、スズも諦めて、眠った。





 今日も、僕は、眠れそうにない。

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