帝王たちは極悪な奴らだった
【帝王たちは極悪な奴らだった】
『奴らはどんな塩梅だ』
これは帝王の声だな。
『少年・少女の三人はあっというまに手の内に入りました』
こちらはハゲ白顎髭魔道士だな。
『おそらくですが、勇者・聖女・剣聖が発現しているものと思われます』
『うむ。頭脳、身体、性格、容姿、総合的にトップクラスの人材を召喚できたんだな?』
『はい。それは間違いありません。しかも、次元わたりの影響でこの世界でも類を見ないような優秀な人材に底上げされているようです』
『おおそうか。残りの一人は?地味な見た目であったが』
『芳しくありません。当初こそ、魅了にかかって鼻の下を伸ばしておりましたが、なぜか途中で魅了から覚めたようです』
『奴につけたサキュバスの魅了は最高レベルだと言っておったな。それでもかからんのか?』
『未熟者で大変申し訳ございません。魅了を連発しておりますが、ことごとく弾かれるどころか、奴には苦痛となるようです』
『むむ。どういうことだ?』
『サキュバスが言うには、相当高い精神耐性が発現しているようだと』
『あのサキュバスの魅了レベルはいくつだ?』
『レベル8だと聞いております』
『レベル8だと。通常だと最高レベルになるな。これ以上のレベルとなると空想とか伝説レベルになる。それを弾けるとなると、やつの精神耐性はレベル10とかということか』
『神級レベルということになりますが、レベル10であってもおかしくはありません』
『精神耐性の高い職業が奴に発現したのか?』
『いや、精神耐性はむしろそれぞれの人生経験が影響するものとされております。奴はあちらの世界で相当過酷な毎日を過ごしておったのかもしれません』
『だとしても、神級レベルにいきなり到達するとは……いずれにせよ、レベル8の魅了レベルを弾く奴だ。洗脳は不可能だな』
『いかが致しましょうか』
『うむ。洗脳できないまま有力な職業が発現したら、目も当てられん。下手すると、魔王よりもやっかいな存在になる』
『処分いたしますか』
『明日の夕食にもう一度チャレンジして、それでも駄目なら仕方ないな。早めに決断するに限る』
『位置特定の腕輪に仕込んである毒。存在が消滅する毒です。遅効性の毒で解毒方法がございません。深夜、眠りについたらそのままこの世から消え去る、ということになります』
『うむ。我が国の誇る伝統薬だの』
……おまえら、何を話しているんだ?
僕、大ピンチじゃないか。
今夜中に城を脱出せねば。
だが、僕はこの世界のことをほとんど何も知らない。
昼間で受けた講義の知識しかない。
とにかく、この城の倉庫とか図書室とかを見つけるぞ。
それにしても、こいつら。
僕たちを勝手に召喚して、自分勝手に物事をすすめ、
言うこと聞かなかったら、僕を処分するだと?
絶対に許せん。
今にみてろよ。って何にもできんのだが。
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