永遠に
最終話まで、お読み頂きありがとうございます!
こちら、70年後の松本誠のお話です。
〜70年後〜
学生の頃、通い慣れていた病室のすみで私は五年間
時を過ごしていた。
「村田さん...行きたいところがあるんだが」
「え? どこですか?」
「この近くの海だ」
隣で点滴を変えている看護師に目を向け、窓の外からぼんやりと見える海を指さした。
「ダメです! 体に障ります!」
「最後のお願いだ...」
物悲しげに微笑む俺に困った顔をし、渋々承諾してくれた。
「....分かりました。先生に聞いてみますけど、あまり期待しないでくださいよ」
「ありがとう」
窓の外を見ながら待っていると、車椅子を押しながら医師と一緒に戻ってきた。
「松本さん...20分だけ外出許可取れました」
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海沿いの道路に車を止め、俺は看護師に車椅子を押されながら海を見る。
医師は、近くの車で待機していた。
「松本さん。なんで海なんですか?」
「昔約束したんだよ」
「待ち合わせでもしてるんですか?」
久しぶりの海の匂いを胸いっぱいに嗅いでいると、浅瀬の方で足をつけて無邪気に遊んでいる人影が見えた。その人は、笑顔で俺に手を振っていた。
「綺麗だな〜」
嬉しそうに遊ぶ君は、やっぱり綺麗だった。
「え? ええ、綺麗ですね。海」
「やっと君に海を見せられた。遅くなってごめんよ」
君は首を横に振り微笑む。
なんだか今日の君はよく笑っている。
「松本さん...誰と勘違いしているんです?」
ポケットから手紙を取り出すと、俺の手紙を君が受け取るかのように強い風が吹き、海の方へと飛ばされる。それを見届けた俺は、手の力が尽きてしまった。
「あっ手紙が... 松本さん? 松本さん! 先生! 急いで来てください! 松本さんが」
「村田くん! 松本さんの家族に電話してくれ!」
「たしか松本さんは独り身です」
「ああ、そうだったか...」
「先生...見てください。松本さんの顔」
「ん? ああ、海が好きだったんだな」
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正人へ
いつまでも君を愛してる。
誠
最後の看護師さんとお医者さんの会話は、主人公が亡くなり、もうこの状況を説明する人はいないというのをイメージしているので、二人の会話だけにしてみました!
最後までお読み頂きありがとうございます!
感謝、感謝、感謝。