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病室のすみで  作者: 高美
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手紙

 7月21日 正人の16歳の誕生日。

俺は、正人のお葬式に来ていた。


 正人の誕生日の日には『ルドベキア』の花を渡す予定を前から計画していたが、その予定は叶わず俺は今、菊の花を手に持っている。


 別れは突然だった。突然すぎて心と頭が追いついていない。

眠っている正人の顔に手を当て、優しく撫でる。


「...かたい」


なぜ、正人に線香をあげているんだろう。

なぜ、棺桶に入った姿を見なきゃいけないんだろう。


「ご愁傷様です...」


 初めてみた正人の母に、俺は深々と頭を下げた。すると、知ってるはずのない俺の名前を呼ばれた。


「あなた...誠くん?」


「え? そうですけど...なぜ俺の名前を?」


「そう...あなたが正人の大事な人なのね。これ、正人が書いた誠君への手紙よ」


 この手紙、一度だけ見たことがある。


「...見てもいいですか?」


 ゆっくりと丁寧に便箋をあけ、手紙を広げると初めて見た正人の手書きが書かれていた。


ーーーーーー

 誠へ


 人生初めての手紙を書きます。

誠と初めて会った時は、声がうるさくて大迷惑なやつだと思っていました。

 誠のお爺さんと一緒で、プライバシーのカケラもないし、しつこいし、なんでこんな奴が飽きずにおれのお見舞いに来るんだってうんざりしていた。

 誠に出会う前のおれは、どうせ死ぬんだからって、何をしてもそうやって自分で自分を諦めさせていた。だから、病室から出ずに只々窓の外を眺めていたんだ。その窓の外も、俺の目には色なんてものはなかった。

 でも、誠と一緒にいるうちに段々と生きる面白さを見つけ出せた。空も青くて、夕日はオレンジ色で、雨の日は灰色で、日常の全部の色が綺麗に思えたよ。誠と海に行きたい。泳いでみたい。花火をしたい。やりたいことが沢山出来た。

 ほんと、神様は意地悪だな。もうすぐ死ぬおれに生きる意味を見つけ出すなんてさ。

 でも恨んではないよ。おれが病気じゃなきゃ誠に出会えなかったんだからな。

 誠、好きだよ。これからもずっと大好きだ。出会ってくれてありがとう。

 正人


ーーーーーー


「ーーふっ...うっ...っ...」


 拭いても拭いても涙が溢れて止まらない。

そんな俺を見て、正人の母も釣られて涙を流した。


「貴方の事が好きだったのね。いつの日か、正人の表情は明るくなって笑顔を沢山見せてくれたの。誠君のおかげだったのね。正人と出会ってくれて本当にありがとう」


正人と似た目で微笑まれて、なんだか気持ちが温かくなった。


「俺も、正人と出逢えて良かったです。出会った時から俺は、正人の事が好きでした。

いや、今でも好きな気持ちは変わりません」


「そう...正人も幸せね 好きな人と両思いだったなんて」


「この手紙...持っててもいいですか?」


「ええ。貴方のよ 持っていてちょうだい」


俺は、大事に大事にこの手紙を持ち続けた。

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