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土曜日。
気持ちのよい青空が広がっていた。カーテンの隙間から外の景色をチラ見した後、腕を伸ばして枕元に置いていたスマホを確認。未読のLINEメッセージが二十件もあった。その全てが蓮司からのメッセージで。
こうしている間にもまた新規メッセージが来た。
「あ…やっべ…」
「どうしたの?」
人形姿のレイアが俺の頭にチョンと乗り、寝癖をいじっている。くすぐったい。
「あの実はさ」
その内容の全てが女子大との合コン関連だった。最近バタバタしていて、合コンのことが頭からすっかり抜け落ちていた。前だったら、合コン日を忘れるなんてありえなかった。
「今日、合コンだったんだ……。蓮司に断るのを忘れてた」
「え、断るの? 蓮司君も困ると思うよ? 急なキャンセルは相手側にもご迷惑だし」
やけに丁寧な物言いだな。
「いやいや、だって今のオレには彼女。レイアがいるし」
断る文章を打ち始めた俺の手を止めたレイアは、
「行ってきなよ。たまには気分転換も大事だよ〜」
天使のような笑顔でニコニコしていた。あの嫉妬時の怪奇現象も発生していない。レイアは、合コンとかこういう浮ついた行為が一番嫌いだと思ったんだけどな……。
「分かった。……ごめんね。なるべく早く帰るから」
「うん! 帰ってきたら、一緒にホラー映画見ようよ。ポテチとかナゲットとかお酒用意して待ってるから」
「了解しましたっ!」
人形レイアを赤ん坊のように高い高いした。
レイアは、ほんとの赤ん坊のようにキャッ! キャッ!と喜んでいた。
出かける準備を終え、玄関前で彼女に手を振った。そしたら、レイアに背後から抱きしめられた。いつもより少し強めのギュッ。
「無理すんな。…やっぱり行くのよそうか?」
「ううん! 大丈夫。ごめんね、湿っぽくて」
「俺はさ、もうレイアに取り憑かれてるから。だから他の女のとこには行かないから大丈夫だよ」
「悪霊みたいに言わないで! 失礼だよ、最近のキミは。年上に対する敬意ってもんが欠如してるし、それに」
ぺちゃくちゃ喋っているレイアに二回キスをした後、蓮司が待つ居酒屋に向かった。
店前で俺に手を振る蓮司。
「遅ぇ! やっと来たな、クソ童貞」
だから、もう童貞じゃね――んだよ。
「女の子も揃ってるの?」
「今日さ、超幸運! いや、マジで!! 女がさ、仲間を連れてきたから女4になった。男は俺たち2だけ。こりゃ勝ち確定だな。なんPいけるかな……。お前は、最初は見てろ。とにかく見て覚えろ。ベッド横で俺のプロ技を」
「……そういう下卑た最低思考だから彼女が出来ないんだよ」
蓮司は口を閉じて普通にしてたら、割とモテると思う。細マッチョだし。自分で自分を減点しまくってる事実を分かっていない。
「うるせっ! 偉そうに。クソバカ童貞がよ。でも情けで、女の口だけは使わせてやる」
「もういいって。早く行こうよ……」
店内に入り、案内された席に座る。
目の前には、4人の女性。蓮司ではないが、みんなレベルの高い美人さんだった。
「じゃあ、まずは自己紹介から始めるね。俺は、南 海人。宜しくっ!!」
「お前は、速川 蓮司だろ」
コイツ…死ぬほどつまんねぇな……。さすがにヤバくないか? 走って2秒でエンストしたぞ。
「フフ」
三人が失笑している中、目の前のこの女だけは優しく俺達に微笑んでくれていた。
「じゃあ、乾杯しようか。みんな、グラス持って持って〜。あ、これ。ストローじゃなくて、野菜スティックだったわ〜」
チラチラ見るな、俺を。そんな泥舟に誰が乗るか。
「乾杯―――!!」
「は〜い」
ただ、なんだろう。
「海人君だっけ? よろしくね」
「あ……はい」
どうしても彼女の笑い方に違和感があり、可愛くデフォルメされた脳内のレイアが両手で大きくバツ印をアピールしていた。




