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午前三時過ぎ、俺は日本人形に戻ったレイアと帰宅した。カンカンカンカン、錆びた外階段を上がると今まさに部屋を出てくる蓮司と咲希に会った。
「どうした? もう帰るの?」
「いやいや、どうしたはこっちのセリフだって!! マジか、お前。なに抱えた人形に笑顔で話しかけてんだよ!」
「ん? え、あっ!」
「いくら人間の女に相手にされないからって、人形を対象にするって……。お前。それは、いくらなんでも終わってるだろう」
あぁ…そっか。蓮司には、そう見えてるワケね。
「……海人君。なにか困ったことがあったら、このバカじゃなくて私を頼って? いつでも相談に乗るから。精神疾患は専門外だけど……協力するから…」
咲希さんにもひどく同情されてしまった。
「はぃ……。ありがとうございます。あの! 咲希さんも無理しないでくださいね。忙しいだろうけど、体とか大事だし」
「うん。……ありがと。海人君」
咲希さんは、今日の午前中に解剖実習があるらしく、急いで帰らなければいけないとのことだった。俺や蓮司とは違い、医大生の咲希さんにはほとんど空き時間はない。バイトやサークル活動すら出来ない。そんな忙しい身でもこうして俺のことを心配して、たまに遊んでくれる。
ほんと、女神のような出来たお人だ。
部屋に入るとまだ甘ったるい酒の匂いがしたが、部屋は片付けてあり、前よりもむしろキレイになっていた。
咲希さんが片付けてくれたのだろう。
「ありがたやぁ……ありがたやぁ……」
手を合わせた。横から冷ややかな視線を感じる。
「ほんと良い彼女さんですね! 浮気くん」
日本人形が腕組みしながら胡座をかいていた。
「いや! 咲希さんは彼女じゃないし」
「可愛い子じゃん。頭も良いし」
「だから!」
「私なんかより…ずっと……ずっと……」
地震のように部屋全体がガタガタ揺れ始めた。電気がチラチラ点滅し、黒いモヤモヤした霧のような物体が、人形から漏れ出てきた。
「お、俺にはレイアがいるからっ!!」
突然、ピタッと怪奇現象が止んだ。
「女神のようなあの女より、悪魔九割の私が良いと?」
「うん……」
「ふ~ん……。まぁいいや。今日は、一緒に寝よ? 少し寒いし」
俺は、人形を抱き抱えた状態で布団の中へ。もし蓮司にこの姿を見られたら、またドン引き間違いないだろう。
「明日、エッチの続きしようね。他の女が近づかないようにマーキングしないといけないし」
「えっ!?」
興奮してなかなか眠れなかった。




