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去年、父親を強制的に引退させてから一年。今日は、僕の誕生日。世界中からお気に入りの殺し屋ちゃん達が集まり、誕生日を祝った。
古城を貸し切り、盛大なパーティーが開かれる。小蝿(敵)の侵入を防ぐため、この場所は四方を崖に囲まれている。
「う~ん……どこかなぁ…」
僕はずっと、双眼鏡で親友の姿を探していた。このパーティー会場のどこかにいるはずなんだよなぁ。
「ねぇ~ねぇ~、○○さん。さっきから何を探してるの?」
この会場にいることだけは確かなんだけど。
まさか、もう帰ったりしてないよね?
「あのっ! わざわざ社長のお願いだから忙しいのに来たのに。さっきから無視ってなによ。はぁ~~」
「……………黒ちゃん」
僕は双眼鏡から目を離さず、待機していた執事長を呼んだ。
「はい。旦那様」
「この子さぁ、ちょっとうるさいよ?」
「大変失礼しました」
指を鳴らした黒崎。すぐに女の子は、部屋の中に入ってきた屈強な執事見習いに担がれ、ギャーギャー文句を言いながらいなくなった。
「彼女、誰のプレゼント?」
「確か…………ナンバー13。六羽様が経営されている芸能プロダクションのアイドルちゃんです。今、売り出し中だとか」
「ふ~ん……。そうなんだ。彼女……腕に小さな注射跡あったよ。真新しいやつが」
「……………」
「ヤク中の女の子に僕の世話をさせるなんて、すっーーーごく不愉快だなぁ。バカにされた気分だよ。だから、六羽はナンバー剥奪。会員から外す。いいよね?」
「ーー承知いたしました。すぐに対処します」
「う~……………………あぁっ!!」
パーティー会場にいる親友の姿を発見した。お寿司の皿を両手に持って、盗み食いするかのように会場の隅でこそこそ食べていた。
「たっちゃん。いたぁ。やっぱり来てくれた! 嬉しいな」
「…………旦那様のご友人の方ですか? でしたら、今からでもVIPルームにお通ししますが」
「いいの、いいの、彼はあそこで。豪華な部屋は、無駄に彼を緊張させちゃうし。それにランキング外の彼を城に招いたら他の者に示しがつかないからね」
「そうですか……分かりました」
「それよりも。黒ちゃん、黒ちゃん。こっちに来て。面白いものを見せてあげるよ」
僕は、持っていた双眼鏡を黒崎に手渡した。
「彼の姿が見えるでしょ? う~ん……ここからの距離は、三百メートルってところかな」
「はい。彼は今、血走った目で蟹を頬張っています」
もちろん、こっちが見ていることなど彼は知る由もない。
僕はーーー。
『助けて、たっちゃん』
そう、ボソッと呟いた。
「っ!?」
双眼鏡を手にしていた黒崎が、信じられないと言うようなギョッとした表情で僕を見ていた。
「ね? 面白いでしょ~」
「いったい………あの…彼は、何者ですか? 久しく忘れていたこの感覚………まだ鳥肌が止まりません……」
「彼は、僕の恩人。彼ってさぁ、とっーーーーても面白いから、昔から大好きなんだよね~」
黒崎から双眼鏡を受け取った僕は、たっちゃんに手を振った。
こちらをジーーっと見つめる彼に。




