20
僕のお気に入りは、彼女だけじゃない。だから手放し、引退も許した。
十五年前。
初めて父に牙を剥いた。
今までずっーーーと、ずっーーーーと僕を暴力で支配してきた父。歯向かう牙はすべて折ったとでも思っていたのだろう。
まさか、こんな幼い我が子に首を噛まれるなんてね~。
まぁ、でもね~。それって油断し過ぎだよね?
夜よりも暗い世界に君臨し、世界中の殺し屋を手の平で転がしてきた父。
そんな父が、僕よりも幼い彼に命乞いをしている。
「たっ、頼む! 助けてくれ」
「………」
「金だろ? いくらだ? そこにいる息子の二倍出すっ!!」
「…………二倍?」
「あ、いやっ! 分かった!! 三倍、いや四倍出す。だから助けてくれ」
「う~ん。ゼロを何倍してもゼロのままだからなぁ」
「お前、なに言っ」
父を警護していた殺し屋ちゃん(死体)の背中に座り、しばらく彼のお遊戯を見ていた。
彼の体を覆う黒いモノ。
いつ見ても気持ち悪い。
………………。
………ふぁ~……。
欠伸をしたら、終わっていた世代交代。胸に穴を空け、動かなくなった父に一度だけお辞儀をし、僕は屋敷に火を放った。
「終わったから帰って良い?」
「うん。たっちゃん、今日はありがとう。最高の誕生日になったよ」
「もしかして………明日からキミが、僕のボス?」
「そうだよ~」
「うぇっ。マジか」
「そんな悲しいこと言わないでよ~」
絶対に引退はさせない。
だって彼は、僕の一番のお気に入りだからね。




