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3分読み切り短編集

もしも願いが叶うなら?

作者: 庵アルス

「あ、流れ星」

 君とふたりで歩く、コンビニ帰りの夜の道。

 夜空を見上げて、君がはしゃいだ声を上げた。

「え、どこ?」

 鈍臭い僕は遅れて空を見上げ、けれど不動の星しか見つけられない。

「もう流れちゃったよ」

 君が苦笑する。

「そっか、残念」

 そう返した言葉の吐息が、白く空にかすんで消えた。上げた首とマフラーの隙間から冷たい夜気がすべり込んできて、思わず身震いする。ホットドリンクのペットボトルをぎゅっと握りしめた。

「お願いごとできた?」

 君の横顔に視線を戻して訊ねる。君はもう一度苦笑した。

「早すぎて無理だよ。流れた! ⋯⋯と思ったら消えちゃうんだもん」

「一瞬だもんね」

「そうそう! なにお願いしよう、って思ってる間に消えてるもん」

「その上、三回も念じるなんて無理だよね」

「そんな瞬発力あるんだったら自力でどうにかできるよね」

「そりゃそうだ」

 そんな芸当やってのけるだなんて、普段からよほど執念深く願っていることでもないと無理だ。

 そしてそんな人間は、それに向かって少なからず努力しているものだ。流れ星に願わずとも、叶う確率が高いに決まっている。

 ふたりでけらけら笑いあった。そう考えると夢がないね、と君は少し残念そうだった。

「ねぇ、もしも願いが叶うなら、なにをお願いする?」

 君はコンポタージュの缶を頬に当てて暖を取りながら、悪戯っぽく問いかける。

「⋯⋯君は?」

 さっき君が言ったように、急に言われても願いごとが思いつかなくて、逃げる。

 質問を返されて、君はうんうんと唸りながら、

「えー、うーんとね、あ、宝くじが当たりますようにってお願いする!」

 輝くように笑った。それこそ、星にも負けない眩しさで。

「あぁ、いいね」

「あとね、世界旅行! 九龍で美味しいもの食べたいし、ヴェネツィアでゴンドラ乗りたいし、イエローナイフでオーロラ見たい!」

「素敵だね」

「あとね、テーマパークで連泊して、アトラクション制覇!」

「楽しそうだね」

「クルーザーにも乗ってみたいなぁ!」

「酔いそうだけど」

「酔い止め飲むから大丈夫!」

 ピースサインをする君。そんな君の素敵な願いを、僕はどれも応援したくなった。

「僕のお願い、今決まった」

 なぁに、と君はにこにこと首を傾げる。僕は、すっかりぬるくなったペットボトルを握りしめる。

「君の願いが、全部叶いますようにって願うよ」

 流れ星じゃないけれど、叶えられるものは手伝うと決めた。


2020/11/04

「流れ星を見たい!」が願い事なら、三回唱えなくても叶いますね!

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