■■選択の時■■
「理人ってさ、私のこと、ちゃんと好きじゃないでしょ」
「なにそれ、いつも言っているじゃん、好きだって」
付き合っていた彼女から、突然そんな風に言われて、ショックを受けた。
「理人がたくさん女の子と付き合ってるのは、分かってるからいいんだけど、たぶん、その誰とも、ちゃんと好きじゃないでしょ」
「そんな事ないよ!ちゃんと俺なりに、優しくしてるし……」
「違うのよ。理人は人を本気で好きになったことがないのよ。私はいつも、寂しそうな目をしている理人を変えてあげられると思って一緒にいたけど。ごめん。やっぱり、私には無理……」
そう言って、その子は去っていった。
別れを告げられるのは初めてじゃない。
俺はいつも、相手からフラれる事が多かった。
その子の言った言葉が、やけに頭に残ったし、何より怖かったのは、俺は、フラれたというのに、ちっとも悲しくなかった。
そして、その子の名前すら思い出せない。
俺は、最低なやつだった。
変わりたいと思った。
授業が終わり、俺は、兄のいる騎士団の建物へ向かっていた。
いつもと同じ道のはずなのに、いつの間にか、行き止まりになってしまい、そこには古びた教会のようなものがあった。
扉を開けて、中に吸い込まれるように入っていくと、そこには、祭壇があり、長いローブを纏った人が立っていた。後ろ姿なので、男が女かも分からない。
バタンと音を立てて、扉は勝手に閉まってしまった。
「あの…、あれ?勝手に入ってしまってすみません」
恐る恐る声をかけると、、ローブの人は、かすかに揺れた。
「久々の客人だ、ん?予定の娘と違うぞ……」
「知らん、何か別世界からの干渉があって、エラーが出たようだ」
声の主は、ロボットみたいな声で、人間のように思えない。立っているのは一人だが、二人で会話しているように聞こえる。
「いずれにせよ、ここにたどり着いたということは、娘、お前が選択者となる」
(何ここ?……え?選択?)
「変わった魂を持っているな、二つの命が混じりあっている」
「ここは、学園の真実の愛を司る場所、迷える魂がここを訪れる時、この扉は開かれる」
(なんだ、これ……ゲームの展開みたいだな)
「そなた、真実の愛を求めているな、ここからはそなたの選択によって、道は別れるであろう。道の先は必ずしも幸福ではない。そなたの努力や選択によって、幸せが訪れるであろう」
「え?なんの話?」
「…………ええい、物わかりの悪い娘だ!誰とくっつくか決めろ!!」
「はあ??」
「学園で出会っただろう、ルシアン王子とそのお友達だ!その中から誰がいいか、選べ!そうすれば、その方向に風はふくようになる」
「ばっ……ばかな事言うなよ!!俺がなんで男に!ぜってー無理だし!ふざけんな!」
「フン、生意気な事を言いおって。女性ともまともに関係を持てなかったくせに」
「くっ……それは……!」
「諦めろ、お前はもう転生したんだ。レイチェルとして幸せを掴むように努力するんだ」
「………納得出来ない。他のやつにしてくれ、俺は、帰る!」
「それは、無理だ。選択せねば、その扉は決して開かない。この時空の狭間で永遠に暮らしたいか?」
「なんだよそれ!脅しかよ!」
「いずれにせよ、貴族の令嬢であるレイチェルとして生きれば、いつか必ずくる問題だ、どうせなら、誰かに決められるのではなく、自分の意思で決めてみようと思わんか?」
「……………」
「どれももちろん良いのだが。お前なら、きっと真実の愛を見つける事ができるかもしれない」
「中に一つだけある、特別なものだ」
「はぁ……、よくわかんねーけど、もういいよ」
すると突然、目の前が光だして、五枚のカードが現れた、それぞれ名前が書いてあった。
「なにこれ、この中から、取ればいいの?はぁ…これ、絶対アンジェラがやるはずだったやつ……」
「ええい、男なら覚悟を決めろ!さっさと引くんだ!」
「うるせーな、女で諦めろとか、男で覚悟決めろとか」
俺は、カードの名前をじっくり見て考えた。
ルシアン・グレンデイル、王子かぁ、何かいまいちよく分からない人だよな。でも、あの、ビリっとくる感じが、何かありそう。
ミシェル・シェルヴァン、いやーちょっと、無理でしょ。変態はちょっと……、これはないな。
ロベール・シェルヴァン、この中だと、妥当だな。世話好きだし、苦労しなさそう。しかし、コミュニケーションが取れるかは謎。
ジェレミー・ブリアック、気が合いそうだし、友人としては仲良くなれそうなんだけど、……恋人かぁ……、全然想像がつかない。
オーブリー・ベルトラン、あんまり絡んでないから、印象ないんだけど……。まともな部類ではあると思う。
「やっぱり、無理だ!こんな大して付き合いもないやつらじゃ、全然分からねーよ!」
「心の声を聞け!さぁ、早く選ぶんだ!」
俺は目を閉じて深呼吸した。
(あーーもーーー!やるしかない)
そうして、俺は、そのカードを選んだ。
たくさんの光に包まれて、新しい道が開かれた。
□To be continued□
ここから、お話が分岐します。
作者が考える、多分レイチェルが選ぶであろう順番で進めていきます。




