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ノリロー氏との対談 完

喜利 なるほど……。因みに戦後、が一番上のお兄さんはどうなさっていたのですか。


ノリ まあこれが与太郎でね(笑) 復員後に農協に入ったんだけど問題を起こしてね。家族に不義理をして、家出したんだな。この不義理のせいで親父もおふくろも苦労をしたんだ。もっとも、兄貴は男っぷりは良かったし、髪なんざオカッパル(歌手の岡晴夫)を真似てリーゼントにしちゃって、ズボンを履いてね、今で言えば流行の最先端を行くようなやつで、それこそ村一番のなんとかさ(笑) モテないはずがないし、遊んでばかりいたさね。でも、まあ、その後は改心したのか、従兄弟とよ、旗の台で印刷屋を経営して、こちらは結構うまく行った。この従兄弟もまた変わり者で、特攻隊上がりの奴だった。思えば戦争で生き延びた連中の寄せ集めさね。時代が時代なら非国民だよ(笑) 俺もね、上京して虎ノ門舞踊学校に通っていた時分、ここでバイトをしていたんだよ。交番の上にあった狭い部屋でさ、兄貴と従兄弟と三人で雑魚寝をしていた記憶があるよ。その兄は、死んで、もう十三年近く経つけどね……。


喜利 ……となると、若き日の家計やら何やらは直さんが肩代わりなすっていたということでしょうか。


ノリ そうだね。そうなるよねえ。一番上の兄は親に借金するわ不義理するわでしょ、俺はまだ幼かったし、稼ぐ手段もない。そうなると家の負担の肩代わりをしていたのは直さんだ。思い返すと、真ん中の直さんは本当に苦労をしたんだね。ずっと親と俺に仕送りを続けていたしね。その仕送りは師匠の悦朗親父が預かっていて、その中から色々配分されていた。前座の時分は電車賃百五十円しか出してもらえなかった事がある(笑)


喜利 お兄さんが独立なされた際、何か思いましたか?


ノリ そうね、なんか思うかって別にそこまで不思議ではなかったし、格段の驚きはなかったけどねえ。まあ兄の事だから、夢を捨てる事は出来なかったんだろう。俺だって親父のススメを蹴って芸人になったんだから(笑) 大学教授になったのは、倉敷紡績勤めを五、六年してから(※『幻想文学』(五九号 二〇〇〇年十一月号)のインタビューに「学校を出てから七年くらい会社勤めをしていましたが、今で言う落ちこぼれで、早くやめたくて仕方なかった」とある)じゃなかった? 最初は龍谷大学に助手として入ったんだね。そこから先生の生活をはじめるようになったわけで。


喜利 龍谷大学ですか。


ノリ うん。その頃になると、俺も漫才をやっていたし(一九五八年コンビ結成)、上の兄貴も印刷屋をやり始めていたからね。まあ、その後も入金を続けていたけどね。龍谷大学に就職して、倉敷から京都へ移った。確か東大寺の前に住んでいたんだよ。俺もそこそこ売れ始めて大阪公演に来た時、兄貴の家に寝泊りしたことがあるよ。


喜利 そして、その後はみんなそれぞれの道を。


ノリ そだね。兄貴は本当に教授になったし、俺は漫才になってしまったし(笑)それも兄貴が翻訳で俺が語学漫才なんて、これもまた変な話だよな。黒田節を英語でやるなんてネタをやっていたんだからよお(笑)


喜利 その後、鼓直氏は龍谷大学講師(一九六〇年)、神戸市立外国語大学助教授(一九六五年)、神奈川大学外国語学部助教授(一九六八年)、法政大学教養学部教授(一九七四年)、を経て、ラテンアメリカ文学ブームを引き起こす第一人者となるわけですね。詳しい経歴、どうもありがとうございました。

終わりです。まだまだいろいろなことを聞いているので、近くまとめて一冊の本にしようか考えています。

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