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ノリロー氏との対談 その3

喜利 その後はどうなさいました。


ノリ おふくろと直と三人で、福山に行った。おふくろの実家だね。しばらくそこにいたんだけど、まあ引揚者だし周りは焼け野原だし折り合いがつかなかったんだろうね。それで親父の実家である埼玉の坂戸って所へ引っ越した。当時、坂戸って所は大変な田舎でね、十二歳くらいまでランプで生活をしていたよ。


喜利 電気がなかったんですか?!


ノリ なかったねえ。それで親父は坂戸の役所に再就職して、引揚者住宅に入居して初めて電気のある文化的な生活が出来たものだよ。


喜利 ははあ。それでお兄さんは帰国後にどちらの学校へ?


ノリ 直さんも俺も川越高校さ。兄貴の時代はまだ川越中学だったかな。卒業前後で川越高校になった気がする。この学校も大変な所でねえ、なんせ昔の川越城の跡にあるんだから。しかも、当時住んでいた家から坂戸駅まで四十分、川越駅から高校まで四十分近くかかったんだから、よく歩いたものだよ。それでこの高校には西川って英語の先生がいて、兄貴と俺の両方の授業を受け持ったんだ、俺はよお出来が悪いから、いつも西川先生に怒られるんだよ。

「おい、石川、お前は鼓と違って出来が悪いぞ」って。まあ、こちらはやる気が無いんだから当然なんだけどね(笑)


喜利 (笑) それで卒業後に今の外大に行かれたと。


ノリ そだね。東京外国語大学、当時は東京外事専門学校っていった。そこに行ったよ。金がなくてねえ、直さんは奨学金でやっと進学したんだよ。下宿する金もないから、坂戸から通っていたんだ。当時は東上線が一時間に一本しかなくてね、兄貴もおふくろも早起きして通ったもんだよ。その苦労たるや高校の比ではなかったよね。当時の東上線なんざ、ディーゼルだし遅いし、客は多いし、時間はかかるしね。そんな中でよくあそこまでやったものだ。だから直さんは本当に苦労したんだね。兄弟の中でも。


喜利 一番苦労なされたと。


ノリ うちの兄貴が一番苦労したね。でも、長男と三男と比べるとよくできた男でずば抜けていたね。卒業する時も二番とかそんな優秀な成績だったんだよ。


喜利 その後は大阪に行かれたとか。


ノリ いや。岡山へ行ったんでしょ。倉敷紡績に就職してね。卒業後すぐに荷物をまとめて、さ。


喜利 どうして倉敷紡績に?


ノリ そりゃ稼ぐ為だろうねえ。当時倉敷紡績っていえば名門だったしね。それに親父は役人とはいえ薄給だし、俺も高校とかで金が必要だったから、そういう事情もあったんだろう。兄はね、本当にいい人で俺が芸人になった後も仕送りをしてくれたんだ。今でも感謝しているよ。


(※倉敷紡績は大阪に本社があるため、そこがゴチャゴチャになっている可能性もある。要検証)


喜利 一部資料では直さんは岡山出身だと書いておりますが。


ノリ そりゃ兄貴の勘違いだろう。或いは本籍の問題じゃないの? 間違いなく朝鮮の生まれだよ。上の兄貴だって朝鮮生まれなんだから。


喜利 本籍の問題とは?


ノリ うん。鼓って家は元々ね、侍の家なのよ。岡山はそのルーツというのかなあ、かつてそこに居たというべきかな。例の寅次郎さんがね、よく巻物を出しちゃ「ウチは宇多天皇の流れをくむ家柄なんだぞ!」なんていっていたけどね。佐々木源氏っていうのがあるけど、その流れらしいんだね。だから、兄貴の家の家紋は丸に吉っていう珍しい紋章なんだよな。今でも兄貴はその家系図の巻物を持っているんじゃないのかな? ちなみに、俺が継いだ石川の家も、元は石川徳十っていう偉いお侍の家だったらしい。俺の「徳夫」って名前はこの先祖を元につけられた、と聞いたね。石川の家は福山だ。


喜利 じゃあお母さんはお侍さんの家柄で。


ノリ そうね。すごい大人しい人だったよ。俺らが送金してもそれを使わずに貯めてさ、「徳夫、これ持っていきなさい」って、そっとくれるような人だった。

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