第九話:入学初日・後編
「はい、これが会員カードね。無くさないように気を付けてね」
「はい、ありがとうございました」
紙に記載し終えて司書のミレイユさんから渡されたのは手に収まるサイズの銅板であった。銅板にはいろいろな事が刻まれており上の方にはでかでかと【王立士官学校図書会員カード】と書かれていた。これで図書館から持ち出す際はこれを見せれば期限内の間持ち出すことが出来る。とは言ってもそうそう見たい本が見つかるとも思えないけど。
アンナさんも会員カードを受け取り大事そうに握り締めている。まあ、無くしたら大変だしね。最悪本人を名乗って本を外部に持ち出そうとする者もいるかもしれないからね。
「早速いろいろ見て回ろうと思うんだけどアンナさんはどうする?」
ロビーを抜けて本棚の方へ向かう途中僕はアンナさんに尋ねた。いくら何でもここからも一緒にいる訳にはいかないからね。僕は特に決めてないけどアンナさんは読みたい本が決まっているかもしれないしね。
「私は、魔術の本をいろいろ見ていこうと、思ってる」
「そっか、ならここでお別れかな。僕は図書館全体を見て回ろうと思っているから」
「…分かった」
アンナさんはそう言うと軽く頭を下げて魔術の本が置かれているスペースに向かって行った。僕はアンナさんを見送って反対方向に向かって行く。
玄関付近にあった地図によると種類ごとに分かれて本が置かれているらしい。一回は勉学に関係する本。二階には勉学には関係ないけど様々な哲学書の類が。最上階である三階に娯楽に分類される本が置かれているみたい。取り合えず三階から降りている感じで見ていくかな。
未来の様にエレベーターがあるわけじゃないから上の階に行くには基本階段を使う。上の方に一気に本を持っていくために昇降機の類はあるみたいだけど基本的に司書さん達しか使えないようになっていた。
少し緩やかな階段を一気に登って三階までたどり着いた。三階は最上階と言う事もあるのか下の階より少し狭い。それとも単純に置いてある本が少ないだけなのかは分からないけどね。早速近くの本棚から軽くタイトルを見ていくけどあまり面白そうな本は置いてないね。時代的な事も理由の一つに上がるのかもしれないけどついつい本の内容のクオリティが低いと思わざるをおえないね。
三階の散策を直ぐに終わらせて僕は二階に降りた。三階と比べると一回り程広く様々な本が置いてあった。流石に三階の様に質が悪いわけではなくいくつか興味をそそられる題名の本もあった。まあ、ちょろっと読んでみて直ぐに本を閉じたけど。
結局、二階を調べて借りようと思った本は二冊しかなかった。『初級魔術応用術』と『古代南方大陸の英雄のすゝめ』と言う本だ。特に英雄のすゝめの方は将軍を目指す僕にとってとても参考になったよ。まあ、これを再現するなら練度の高い兵と指示を忠実にこなすことが出来る下士官が必要になって来るけど。今の僕がやろうとしたら策は失敗してそのまま敗北するだろうな。
次は一階だけど予想以上に二階を散策していたみたいで図書館の閉館時間が迫っていた。仕方ないから僕は一階の散策を明日にでも変更してこの二冊を借りるためにカウンターに向かった。
「あら?シャルル君は二冊借りるんですね」
カウンターには僕の会員カードを作成してくれたミレイユさんがいて僕に気が付いて笑顔で対応してくれた。僕は借りるために二冊の本と会員カードを渡しながら答えた。
「ええ、どれも興味をそそられたんですが今日はこの二冊にしました」
「ふふ、最近は入学初日から本を仮に来る人なんていなかったから」
「そうなんですか」
一瞬ミレイユさんがどのくらいここに務めているのか気になったけど僕以外にも借りる人がいたみたいで僕は考えた質問を胸の奥にしまって借りた本を受け取り入り口でアンナさんを待つことにした。
その後カウンターに自分の身長より高く積み上げた本を持っていくアンナさんを見かけたときはミレイユさんと一緒に留めたけど本当に危機一髪だったよ。




