第五話:入試結果
結論から言うと、
普通に受かった。
それはもう簡単に受かったよ。
算術などの試験も高校入試の方が難しいようなレベルだったし体力試験も二年間の鍛錬が実を結んだようで高い評価をいただきました。
そして僕の元に結果が届いたとき僕はいろいろと不安だった。もしかしたらあれくらいミスなしで解ける問題だったかもしれない。その僕の不安は、
シャルル
筆記試験
点数87点/100点
順位11/324
体力試験
点数79点/100点
順位45/324
総合
平均点数83点/100点
順位22/324
予想以上の高得点でした。平均が80以上とか。確か前世では基本的に60~70だったな。かなりうろ覚えだけど。
そして僕は本来なら一組に入る筈だった。だけど僕は二組となった。その理由を成績を伝えに来た教師から聞いた。何でも貴族のボンボンたちが親に頼んで校長や一部の影響力のある教師に賄賂を贈り一組に入れさせたらしい。それに加えて一部の貴族が試験を落としたらしく農民の癖に高得点を取った僕が気に食わないようでそのうえで一組に入ろうものなら逆恨みをする貴族たちから何をされるか分からない。最悪の場合両親に迷惑をかけてしまう可能性があった。故に僕は二組になる事に異論はないしそもそも三か月後には貴族の者達も一組から降ろされるだろうからな。
そんなわけで入学が決まった僕は王立士官学校の寮に入るための準備に追われた。王立士官学校は全寮制で貴族だろうと平民だろうと寮に住むことになっている。一応貴族と平民は別の寮に別れているが特に問題はないだろう。話によると校内で勝手な暴力や戦闘は厳禁となっており破れば退学になるそうだ。とは言え平民と言う事から絡まれる可能性は考えておかないとな。
村でのあいさつはそれなりに時間がかかった。僕が住んでいる村ってそれなりに広いんだよね。大体二百人近くは住んでいる。その中でも親しい家に挨拶に行く事になった。
「シャルルちゃん王立士官学校受かったんだって?頑張ってね」
「はい」
「王立士官学校って貴族も入学してくるんだろ?なめられないようにこれを持っていけ」
「い、いえ。一応自分の分はあるので…」
「しゃるるちいちゃん!がんばってね!」
「う、うん」
正直言って疲れる。この村から入学者が出るのは初めてらしく普段付き合いのない人まで家に来て挨拶してくるからとても疲れる。中にはなめられないようにって剣を持たせようとして来るけど一応自分のはもっているから必要ないんだよね。
そんなこんなで挨拶を終え、準備を整えるころには王立士官学校に向かう日となっていた。二頭引きの馬車に乗り見送りに来てくれた両親や村の人に挨拶をしていく。
「シャルル、辛いかもしれないけど頑張るのよ」
「分かっています」
「私はシャルルが無事に卒業して立派になってくれるのを願っています」
「僕も、母さんを楽させるくらい偉い軍人になってきます」
「シャルルっ…!」
僕の言葉に母は我慢できないとばかりに抱きしめる。父?うん、農作業がんばってね。
母は暫くの間僕を抱きしめていたけれどこれ以上ここにいては王立士官学校の入学式に間に合わなくなってしまう。僕はそっと母に呟く。
「母さん、そろそろ行かないと…」
「…」
母は涙でぐちゃぐちゃになった顔で笑顔を作って見送ってくれる。そんな母に僕は思わず苦笑してしまう。別に今生の別れという訳ではない。確かにここと王都まではそれなりに距離があるけど他からすればまだ近い方だ。休日なんかは無理でも長期休暇には帰って来れる。そん位の距離だ。まあ、今まで一緒に暮らしてきたから不安は一応感じている。だけど、それでうだうだしている訳にはいかない。僕は立派な将軍となって両親を楽させたいんだから。




