第十二話:口論
どうも~。お久しぶりです。約一年半ぶりに最新話の投稿です。この期間中にいろいろと文章変わったので気を付けてください。
「…誰だ?」
自然と口にした声を聞かれていたのか?女傑、ジャンヌ・ド・パルティエーヴはしっかりと僕の方を見て声をかけてくる。パルティエーヴさんの言葉に驚いたように一組のボンボン貴族がこちらを一斉に見てくる。
流石にこうなっては逃げられそうにないし後から問題になっても困るから僕は潔く彼らの前に姿をさらした。ボンボン貴族は僕を見て驚いたようだけど直ぐに肩のラインの色を見て下種な笑みを浮かべた。おそらく僕は一組より(今のところは)低い二組の生徒と知って安堵したんだろう。
一方のパルティエーヴさんは僕の方を油断なく見てくる。足先から頭の天辺までくまなく見まわして僕がどんな行動をとっても咄嗟に動けるように少し構えている。その行動だけでコネで一組にいるのではなく実力で一組にいる事が伺えるよ。
それだけに何故パルティエーヴさんがこんなくだらない事を止めない…いや、加担しているのか分からなかった。これが前世の記憶のせいかどうかは分からないけど止めないと。
「…二組のシャルル。そちらは一組のパルティエーヴさんと…一組の方々ですか?」
「な!?貴様この俺に向かってなんだその口のきき方は!?無礼であろう!」
僕が確認の為にパルティエーヴさんに聞いた言葉に端にいた人が声を荒げた。位置的にパルティエーヴさんの近くにいたからそちらに声をかけたと勘違いしたんだろう。
「誰も君に声をかけてないし君の事なんて知らないよ」
「き、貴様ぁっ!!」
「落ち着け」
顔を真っ赤に染めて怒りを露にする男に冷水を掛けるがごとく冷たい声が響いた。決して声量自体は大きくない。だけどその声には周りを一気に冷静にさせる確かな圧が存在していた。真っ赤に染まっていた男はみるみる内に冷静を取り戻したようだが顔は先ほどとは違い真っ青になっていた。周りを見回せば他の一組の生徒も顔を真っ青にしていた。それだけパルティエーヴさんが権力を持っている若しくは個人の実力が高いのだろう。もしかしたら両方という可能性もある。
「…二組のシャルル、と言ったか。知っているぞ。農民の出でありながら入試では一組に入れる成績をたたき出し入学後も優秀な成績を残し実質的に二組の代表と言えるほど二組の生徒に信頼されている。そんな貴様が一体何の用だ?」
パルティエーヴさんはかなりの圧を込めて質問してくる。体を押しつぶされそうなほどの圧に僕は若干怯みながらも真っすぐに目を見つめて話す。
「僕もパルティエーヴさんの事は知っているよ。入学試験で満点をたたき出した女傑……。そんな人がまさかこんなくだらないことをしているなんてね」
「……下らない、だと?」
「そうでしょ?自分より下の人間をいじめ、貶し暴力を振るう。まるで知能の低い阿呆のやる事みたいじゃないか」
「はっ!平民の割には言うではないか。……だが、知能の低い阿呆は言い過ぎだ。私は自らの地位に相応しい行動を取っているに過ぎない」
「弱い者いじめが自分の地位に相応しい行いなの?ならパルティエーヴさんの地位は随分と低いんだね」
「弱者の支配こそが勝者の特権だ。弱き者には何も残らない、何も得られない。この世は勝者によって支配されている」
「だから苛め抜くと?僕はそうは思わない。弱者だろうと地位の低い人だろうと一緒に成長しよりよき明日へ向かっていく事こそが、上に立つ者の役目なんじゃないの?」
「そんなものは幻想でしかない。きれいごとでだけではこの世は回らない」
……彼女とは仲良くできそうにはないな。全く思想が違うんだもん。むしろ彼女に敵視されそうだ。実際僕を見る目は段々と険しくなってきているし僕にかかる圧も大きくなってきている……。と言うか周りで静観している貴族たちも怒っている。多分彼女がky化を出せば飛び掛かってきそうだ。これ以上の問答は避けたいかな。
「ならさ、決着を付けないかい?丁度半月後に組対抗の模擬試合が行われる」
「……良いだろう。そこで私たちに勝てばこの者に謝ってやるし貴様の考えも尊重しよう。ただし、言いだしっぺの貴様が負けた場合貴様には退学しこの王都から……いや、この国から立ち去ってもらおう」
国外追放か。随分と重いな。僕は犯罪者か何かですか?いや、貴族に楯突いた時点で犯罪者なんだろうけどさ。
どちらにしろこれを受けない理由はない。五組の子を助けられるし一組に僕らの実力を見せつける事が出来る。
「良いよ。半月後を楽しみにしているよ」
「……ふん、精々残り少ない学園生活を楽しむと良い」
こうして僕たち二組とジャンヌ率いる一組との模擬試合が決定したのだった。