ねえや
お父様が奴隷を買ってきました。
あたしにお兄様はいるけど、お姉様はいない。お姉様がいたらと思うことも多々ありました。
外聞もあるので、ねえやと呼んでいます。
あたしは奴隷っていうのはナンセンスだというのはよくよく知っていました。
だって、あたしはもう小学生になって二年経つのです。それくらいのことは知っています。だから、あたしのおうちには奴隷がいることを内緒です。
探してみれば奴隷っていうのは外国ならまだお見掛けすることもあるみたいです。すまーとほんで調べました。学校では漢字も習い始めたので検索もできるようになりました。
ふぃるたりんぐ機能とかで、見れないサイトがありましたので、お母さまのすまーとほんを使いこなしました。怒られたらどうしようかとも思いましたが、それはその時です。ときには思い切った決断が必要であるとお父様は言っていました。だから大丈夫です。もしもの時は潔く怒られます。
怒られるときはねえやも一緒に怒られてくれる。ねえやはそういう人です。
ねえやはおうちのこと全般をしてくれます。あたしが起きるよりも早い時間に起きます。皆の朝ごはんを用意し、皆の着替えを用意し、朝食を取ったあたし達の食器を下げて洗い物をしながらあたしのわがままを聞いてくれる。「ねえや!? あたしのピンクの靴下はないのですか?」あたしのマイブームです。
あたしはどうしてもあのフリル付きのピンクの靴下を履きたかったのです。しかしながら、その靴下は昨日も履いていました。よく考えたら用意するのはお洗濯の都合上、難しいのです。しかしながら、ねえやはあたしのわがままをうまいこといなしてくれます。
「……お嬢様、先日も同じ靴下をお召しになっています」
「ん? なにか問題あるの?」
「毎日同じ服と恰好をしていたらお嬢様をご覧になっている男の子から幻滅されますよ」
「……あたしの靴下までチェックされるのかしら」
「それはもう」
クラスの男の子を落胆させるのはあたしも気が引けるところでしたので、その日は薄青の靴下にしました。フリルは外せません。
あたしの登校時。ねえやとの車中内でのやり取りです。
「ねえやは何で奴隷なんかしてるの?」
「……自分で考えて生きるのが面倒くさくなりました」
「お仕事探すのってつらい?」
「自分で決めて、自分で仕事をするっていうのが私には無理だったのです。旦那様に拾われて幸運でした。このお仕事が終われば結婚相手も斡旋してくれるとのことでしたので楽しみです」
ねえやはぼちぼち嫁に行く。仕事を与えられるねえやは幸せなのかもしれない。