エピソードⅠ 俺、魔法少女にスカウトされる。その5
西暦201×年の調査によると、人口は約三万人、町の名物は青唐辛子の漬物、それに姫神塚古墳饅頭。
そして○○県S市のベッドタウンとして1990年代後半から2000年代前半に急激な発展を遂げたのが、俺――池田健太の住む月女町である。
ああ、急激な発展を遂げたとはいえ、未だに下手に足を踏み入れると迷子になってしまう規模の森が存在する自然、豊かな場所だったりするワケよ。
そんなワケで年に何度も聞くんだよ。
山菜取りなどに出張った挙句、迷子になってしまうお年寄りを捜索するための創作隊が出動したってニュースなんかを――。
ちなみに、この俺もガキの頃に……うう、思い出しただけで鳥肌が立つぜ。
とまあ、そんな話はともかく。
「おおお、男の姿に戻っている!」
「魔力切れというヤツですよ、主」
「ちなみにッスけど、アモンさんが左手の人差し指につけている指輪が空気中に漂う魔力を吸収するので、数分もしないうちに再び変身できるようになるッス」
「へ、変身って、また女の姿になるってこと?」
「何を言ってんだ。当たり前だろう?」
「む、むう……」
「さてさて、天駆ける螺旋の女神とかいう武器は、予想以上の破壊を行ってしまったっぽいわよ」
「あ、ああ、それはわかる。今いる空き地の隣にある三階建てのアパートは半壊だし、裏手にあった神崎さんちは跡形もなく吹っ飛んでしまったようだ」
うう、申し訳がない気分に苛まれる光景だぜ。
なんだかんだと、俺のせいで死傷者が出てもおかしくない規模だしなぁ……。
俺の専用武器であるドリルこと天駆ける螺旋の女神が暴発したことで生じたクレーターは……。
「安心して、アモン。お隣のアパートは住んでる住人が少なかったから被害も死傷者が出ず最小で済んだわ。オマケに、ここの裏手にある神崎さんは、たまたま出掛けていたんで助かったみたい。だけど、自宅をローンで買ったらしくて、それがまだ十年くらいローンが残っていたみたいだから、当然とばかりに悲鳴を張りあげていたわよ、神崎さん」
「う、うわあ、喋る烏!」
「あたしは沙羅。現実世界と兎天原を往来するはぐれ使い魔ってところかしら? おっと、それはともかく、アモンさんだよね? アンタを探している魔法少女と出会ったわ」
「な、何ィィ! ま、まさか!」
一羽の烏が俺の頭の上に舞い降りてくる。
むう、はぐれ使い魔の沙羅って名乗ったぞ……こ、こいつ、喋れるのか!
とまあ、そんな喋る烏こと沙羅曰く、お隣の三階建てアパートの住人達及び神崎さんは無事のようだ。
とはいえ、未だにローンが残っている自宅を跡形もなく破壊してしまったので、神崎さんに対し、悲惨なことをしてしまったかなぁ……とまあ、そんな罪悪感が湧いてくるぜ。
と、それはともかく、俺を探している魔法少女がいるって沙羅が言うけど、まさか……あのオセでは⁉
「そ、その魔法少女の名前は? オセじゃない……よな?」
「オセ? ああ、そいつなら仲間の烏から聞いた話だと、全身大火傷という大怪我を追って再起不能の筈よ」
「そ、そうなのか……じゃ、じゃあ、別の魔法少女が俺を探しているってワケね」
「ええ、確かアンドロマリウスって魔法少女だったかなぁ?」
「ふむ、序列七十二位の魔法少女か――お、ウワサをすれば影、件のアンドロマリウスかもしれない奴がやって来たぞ」
「むう、巨乳眼鏡! アイツが魔法少女アンドロマリウスか!」
ウ、ウホッ! イイ巨乳……じゃなかった!
沙羅が言っていた魔法少女――アンドロマリウスが、俺達が今いる空き地へとやって来るのだった。